TCFD・TNFD提言に沿った情報開示
TCFDおよびTNFDと当社の考え方
当社は、長期ビジョンの主要戦略を実行するため、気候変動対策を含むサステナビリティ重要課題を特定し、社内浸透を進めることを明確に定めています。2019年には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)*提言に賛同し、2024年には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に賛同しました。株主・投資家などのステークホルダーと当社の気候変動取組みについてのエンゲージメントを強化するため、TCFDおよびTNFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」の4つの項目に基づいて、当社の気候関連と自然関連への取り組みを開示します。
- *気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2023年10月に解散し、その機能はIFRS財団に引き継がれています。


ガバナンス
取締役会の役割・監視体制
当社は、気候変動をはじめとする環境に関するリスクや事業機会、目標や具体的な取り組み施策については、代表取締役社長(CEO)が統括、最高サステナビリティ責任者(CSuO)が推進責任を担い、サステナビリティ推進会議や経営会議で協議・決定するとともに、進捗管理・モニタリングを定期的に実施し、必要に応じて対応策・是正策を検討します。取締役会は、サステナビリティ推進会議や経営会議で協議・決定された内容の報告を定期的に受け、企業価値の最大化の観点から議論・監督を行っています。
また、長期視点での経営を強く促し、当社の持続的な成長を促すため、2022年から長期ビジョンにおける取り組み・気候変動を含むサステナビリティ課題への対応などについて、社内取締役と執行役員の業績評価指標に含めています。また、2024年3月に取締役会の気候変動対応や生物多様性保全に関する役割を明確にするため、コーポレート・ガバナンス基本方針を改定しました。なお、カーボンニュートラルへの対応については、全てのCXOと事業部門が参画する全社横断型のカーボンニュートラルプロジェクトにおいて、取り組みを進めています。

サステナビリティ関連取り組みの推進体制
戦略
短期・中期・長期の気候関連リスク・機会および対応
①気候変動関連
当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、気候変動を「事業機会」と「リスク」の両面で捉え、企業としての社会的責任の実践とさらなる競争優位性の構築を図り、「脱炭素に向けた製品・サービスの提供」「パートナーとの共創」「エネルギー効率の改善」「再生可能エネルギーの使用拡大」などによるバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。排出量削減に向けては、パリ協定に同意し、SBT(Science Based Targets)認定取得に向け、2025年6月にコミットメントを表明しました。そのような中で、気候変動が当社の事業に及ぼす影響(事業機会・リスク)について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」の二つのシナリオでリスクと機会を分析し、当社の対応の必要性を改めて確認しています。事業における影響評価については、2023年は半導体・電子材料セグメントで実施し、2024年はモビリティセグメント、イノベーション材料セグメントなどで順次実施しており、2025年には全事業において完了する予定です。影響評価が終わったセグメントから開示しています。
全社への影響がある移行リスクとしては、炭素価格などのエネルギー諸税上昇による操業コストの増加が考えられます。当社は基準年である2013年実績463万t-CO2から30%削減し、2030年は排出量約324万t-CO2を目指しています。売上成長に伴う2030年度のScope1・2の排出量を約500万t-CO2と見込んだ場合、IEAの2℃シナリオ(SDS)*の予想などを参考に炭素価格を10,000円/t-CO2とし、目標未達部分のオフセットとしての排出量取引が発生すると想定すると、30%削減できなかった場合は約180億円/年の操業コスト影響が発生し、削減できた場合は操業コスト抑制につながります。その他にも社会とさまざまな接点を持つ当社は今後もシナリオ分析を活用し、社会の多くの場面でカーボンニュートラル社会の実現に貢献するとともにリスクへの対応を行い、持続可能な成長を行っていきます。
- *2℃シナリオ(SDS):持続可能な開発シナリオ
シナリオ分析の前提
②自然関連
当社は、ネイチャーポジティブの実現に向けて、事業を通じた気候変動への対応や循環経済の実現を進めながら、自然への依存・影響を鑑み、影響低減、管理・保全活動に取り組んでいます。その中で、直接操業とバリューチェーンにおける、自然への依存・影響及び自然関連のリスクと機会を、TNFDが推奨するLEAPアプローチに沿って分析し、当社の対応の必要性を改めて確認しています。2024年は、当社の主要事業および主要サプライヤーについての評価を開始しました。

LEAPアプローチに沿った評価プロセス
■自然との接点の発見(Locate)
Locateフェーズでは、当社の製造拠点および主要サプライヤー拠点の位置情報を把握して、その周辺にある自然の状態などを評価しました。国内外にある計59の製造拠点と計40の主要サプライヤー拠点を評価対象としました。評価作業は、拠点周辺のバイオームを特定した後に、TNFDが定義している5つの基準(保全重要度、生態系の完全性、生態系の完全性の急激な劣化、物理的な水リスク、生態系サービスの重要度)に沿って、外部ツールなどで得られるデータを用いて、拠点ごとに実施しました。
- ※5つの基準に沿った評価は、以下のデータおよびツールを用いて実施しました。
- ・保全重要度…保全重要度が高い地域(保護地域、Key Biodiversity Area、Critical Habitat Screening layer、WWF Global 200)との近接状況を確認して評価。
- ・生態系の完全性/生態系の完全性の急激な劣化…GLOBIO MSA、Natural History Museumが提供する、Biodiversity Intactness Indexを確認して評価。
- ・水関連の物理リスク…AQUEDUCTを用いて、ベースライン水ストレス、洪水リスク(河川・沿岸)を確認して評価。
- ・生態系サービスの重要度…Global Forest Watchを用いて、先住住民・地域コミュニティ(IPLCs:Indigenous People and Local Communities)が管理する地域との近接状況を確認して評価。
評価結果の傾向を見ると、当社の製造拠点のなかで保全重要度や生態系の完全性が高い拠点がいくつか見られました。国内1カ所にてKey Biodiversity Area(KBA) と重複、保護地域と近接しており、生態系の完全性も高いと評価されました。また、東南アジアではKBA と重複している拠点が1カ所あり、今後優先して自然への影響の管理を進める必要があることを認識しました。また、水リスクは東南アジアの製造拠点で高い傾向があり、水使用量の削減や水害対策などの対応を優先して進める必要があることを認識しました。その他の基準については、特に高い拠点は見られませんでした。
サプライヤー拠点の評価結果においても、保全重要度や生態系の完全性が高い拠点が散見され、東南アジアを中心に水リスクが高いことが分かりました。サプライチェーンを通じたリスクにも注意し、必要に応じてエンゲージメントなどを通じてサプライチェーン全体でのリスク低減や保全に向けた活動を実施していく必要があることが分かりました。
製造拠点を対象とした優先地域の評価結果の概要
■依存とインパクトの診断(Evaluate)
Evaluateフェーズでは、当社の主要事業における重要な自然への依存と影響を特定し、その大きさを評価しました。TNFDが推奨するツールであるENCOREや社内情報などを参考に評価を実施し、ヒートマップで結果を整理しました。直接操業では、製造工程に伴う大気汚染物質や温室効果ガスの排出、水・土壌への有害物資の排出、騒音、光害などの攪乱に関する影響が大きいことが分かりました。また、水資源の供給や水質浄化などの水に関する依存が大きいことが分かりました。
上流では、有機材料や金属材料などの調達において土地利用や水利用、汚染や攪乱など、多くの項目で自然への依存・影響が大きいことを再確認しました。当社では、サステナブル調達基準、およびその理解を促すためのサステナブル調達ガイドラインを作成していますが、引き続きサプライチェーン全体における自然への依存・影響の把握・対処を進めていきます。

サプライチェーン全体における自然への依存・影響
■リスクと機会の評価(Assess)
Assessフェーズでは、LocateフェーズとEvaluateフェーズの評価結果を踏まえて、当社事業における自然関連のリスク・機会を特定して整理しました。
③気候関連および自然関連のリスク・機会と主な対応
- ※1気候変動及び自然に関する機会とリスクの財務的影響については算定を順次進めているため、段階的に開示していきます。このため同じリスク・機会でも前年度開示した影響度と異なる場合があります。
- 大:気候変動に対する規制・政策等により今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が100億円以上と試算されます。
- 中:気候変動に対する動きが既にあり、今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円以上100億円未満と試算されます。
- 小:気候変動に対する動きがあり、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円未満と試算されます。
- 〇:気候変動及び自然への影響があると評価しています。
- ―:気候変動及び自然への影響がないと評価しています。
- ※2物理リスクについて本年は国内・海外グループ会社21拠点の分析をハザードマップ・Aqueduqtを活用して追加(合計57拠点)で実施しました。100年に一度の災害が発生した場合には昨年の分析結果と合わせて20拠点がリスクにさらされることになりましたが、再現期間を加味した年間影響額は1.5/2℃・4℃どちらのシナリオでも小さいことから影響度は「小」としています。また、主要サプライヤーの40拠点の分析を行い、事業への影響は小さいことを確認しました。
リスク管理
リスクを評価・識別・管理するプロセス
当社は、各事業の気候変動や自然へのリスク評価を順次実施し、気候変動影響による「移行リスク」「物理リスク」、自然関連の依存・影響・リスク評価を実施し、当社にとって重要なリスクを特定して対応策を立案しています。リスクの特定、対応策の立案にあたっての重要事項は取締役会へ報告しています。今後もリスク評価を継続し、リスク・対応策を更新していくとともに対応策の進捗状況のモニタリングを実施していきます。
全社リスクマネジメントへの統合状況
リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、グループ共通のフレームワークで統合リスクマネジメントの取り組みを行っています。気候変動・自然関連のリスクを含め当社の経営に影響を及ぼす可能性があるリスク情報は、全社的に展開するリスク棚卸を通じて、リスクマネジメントシステムに一元的に登録されます。重要度や優先度の非常に高いリスク(重要リスク)については、専門委員会(リスクマネジメント委員会)で審議します。重要事項は経営会議で審議・決定の上、取締役会に報告されます。
指標と目標
長期ビジョンで掲げる「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」を目指して、「2050年カーボンニュートラル」にチャレンジしています。また、そのマイルストーンとして「Scope1・2:2030年GHG排出量30%削減(2013年比)」を目標としています。2024年は、本社にて使用電力の100%を太陽光発電由来の電力に変更したほか、レゾナックグループ全体で196.7千MWhの再生可能エネルギー由来の電力を購入しました。GHG排出量については、太陽光発電など非化石エネルギーへの転換などにより、2013年比で8.3%削減しました。今後は、目標達成に向けた取り組みの加速、情報開示をさらに進めていきます。Scope3についても、算定が完了したカテゴリーから順次ウェブサイトで開示しています。今後も算定の精度向上を図るとともに削減に取り組んでいきます。
非財務KPIの目標と実績
レゾナックは、サステナビリティを全社戦略の根幹と位置づけ、3つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を定義しています。環境においては「責任ある事業運営による信頼の醸成」に紐づく非財務KPI・施策を定め、重点的に取り組むことで長期ビジョンの達成を目指します。
- *統合に伴い、排出量実績の見直しを実施しています。また、Scope3については上流側の算定・開示から実施し、目標設定を検討しています。
自然関連における指標と目標
当社は、環境パフォーマンスをモニタリングし、目標を設定しています。現時点で開示できていないTNFDグローバル中核開示目標については、今後開示に向けて準備を進めます。
自然関連のモニタリング指標と目標