レゾナックナウ

事業を成長させるのは人。社会を変える「共創型人材」の育成に注力します【CHRO 今井のり】

Leader's Letters

2024年02月19日

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レゾナックの人的資本経営

当社のポートフォリオ上の戦略は、グローバルで競争・共創できる機能性化学メーカーとなることです。機能性化学メーカーの価値は、単に化学製品を販売するのではなく、お客さまや社会が求める「機能」(例えば、極薄フィルムでも高い接着性を保つなど)を付与して提供することです。「機能」を生み出すためには、幅広い技術基盤が必要ですが、旧昭和電工、旧日立化成が一緒になることで、有機、無機問わず幅広い技術プラットフォームを構築することができました。このプラットフォームを起点とし、お客さまをはじめとするさまざまなステークホルダーの皆さまとのすり合わせ・共創を通して、従来とは違う発想で技術を組み合わせ、新たな「機能」を提供していく、それを実現するのが「共創型人材※1」です。当社の人材戦略は「共創型人材」の創出であり、経営・事業戦略と人材戦略を合致させることが、レゾナックの人的資本経営です。

  • ※1 共創型人材:「レゾナックのパーパスとバリューを体現する人材」であり、「社会課題の解決を目指し、会社や部門を超えて共感・共鳴で自律的につながり、共創を通じて創造的に変革と課題解決をリードできる人材」

人材戦略での重要課題と取り組み

この共創型人材による機能性化学メーカーとしての事業成長を目指し、人材戦略に関する重要課題として4つの「人材マテリアリティ」を特定しました。各マテリアリティには2030年を見据えたKGI / KPI を設定しています。2023年から2年間は「共創型人材創出への始動」としてスタートダッシュを切り、2025年までに「グループにおける共創文化の深化と定着化」を図ります。2030年のゴールとして、「グローバルで戦える共創型化学会社への飛躍」を掲げ、グローバルで統一した人的資本経営の確立を目指します。

現在は、次の三つを重点施策として取り組んでいます。

一つ目は風土・カルチャーづくりです。全てのグループ従業員が、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を排除し、心理的安全性を保てる土壌を作ることが、まずは一人一人の力を発揮するための重要な土台となります。その上で、パーパス・バリューを判断軸に、自律的に横でつながり、志と情熱でプロジェクトを動かしていく「共創型人材」の活躍を促進する文化を創っていきます。例えば、グローバルアワードの「AHA!」は、共創を生み出すための代表的な取り組みの一つです。バリューの発揮は人事評価にも組み込んでいますが、それとは別の切り口で、バリューを実践している人を奨励、称賛したい。そして、各々の取り組みをグローバル全従業員に共有することで、枠を超えた共創につなげると共に、お互いに切磋琢磨する文化を創りたいと考え、旧昭和電工、旧日立化成両社で行われてきたグローバルアワードを引き継ぎ、改めて始動しました。

二つ目は成長機会の提供です。レゾナックは、業界もステージも異なる多様な事業を取りそろえた「経営の道場」だと思っています。戦略的ローテーションを通じてフェーズの異なる事業を経験することで、視野や対応力が格段に上がります。私は「キャリアで迷ったら、難しい方を選んで」と言っています。経験値を増やしてくれるからです。VUCAの時代、成長とは、知識やスキルを学ぶというよりも、まずやって見て、そこから得た経験からどんな気づきを得られるか、そしてそれを次の行動にどうつなげていくかだと考えています。だからこそ、「キャリアのオーナーは従業員の一人一人」という考えのもと、自律的なキャリアの構築に寄与する社内公募制度も整備しています。

三つ目が、経験から得られる成長を、論理的に支援する教育の提供です。リーダーとして部下の育成のために必要なスキルを学ぶ「共創型リーダーシップトレーニング」や、ヒエラルキーの指示命令系統を離れ、部門を超えて共創をリードするために必要な手法を学ぶ「共創型コラボレーション力強化研修」など、当社の人材戦略に合わせた独自研修を用意しています。また、一人一人の個性と強みにフォーカスした育成を意識しており、FFS理論※2やコンピテンシーアセスメント研修なども取り入れています。

こうした人事施策を役員含め上位の経営職層から始めて徐々に拡げ、全従業員に展開していきます。なお、パーパス・バリューの従業員への浸透については、施策の成果が着実に表れ始めているものの、完全に定着するには恐らく10年はかかると思っており、腰を据えた対応が必要です。変革は従業員全員参加で進めていくことが重要です。足元の理解度調査では、グローバルでパーパスとバリューの認知度はほぼ100%であるものの、理解度では80%、共感度については60%、既に実行に移している人はまだ30%に留まります。一人一人、違ったやり方、スピードでよいので、「実行に移す人」の割合をいかに増やしていくかが重要です。

  • ※2 FFS(Five Factors & Stress)理論は、こちら をご覧ください。

CHROとしての使命

当社の発展の鍵は、従業員一人一人の個性と強みにフォーカスし、秘められたポテンシャルを解き放った上で、強みを発揮し合えるチームをつくることです。チームで成功した時の楽しさ、興奮は誰もが知っているはずです。人の幸せには、自分よりも大きな存在へ自分が貢献できているという思いが重要だと考えています。会社は、それができる最適なコミュニティです。「個とチームと企業文化」の三つを強くする仕組みを構築し、多様性を集合知へ昇華できる、一人一人が成長実感と、貢献感からくる幸せを実感する環境を構築することが、CHROとしての使命であると考えています。

レゾナックの強みの源泉は、多様な事業に紐づく幅広い技術プラットフォームを保有していることです。しかし、各事業部が別々に縦割りで動くようになってしまう瞬間に、その技術プラットフォームも分断され、強みは消えてしまいます。逆にこれをつなげる方向に動けば、無限の可能性が広がっていきます。特に私たちは最終製品を作っているわけではないので、どの業界にも「機能」を提供し、新たな成長事業を生み出せる可能性がいくらでもあるのです。この技術プラットフォームをつなげられるのは人であり、相互に高め合いながら強みを発揮し合えるチームなのです。

私は旧昭和電工と旧日立化成が統合を決定したときから、旧日立化成の統合責任者として統合準備をリードしてきました。実は、旧日立化成がパートナー選びをするときに最初に「昭和電工がいいです!」と言ったのが私でした。両社は相互に補完できるところが多く、大きな可能性を感じていました。私たちが目指す「機能性化学」は、世界でプレゼンスを発揮できる素晴らしい日本発の産業になり得ると確信しています。CHROとしてレゾナックを成長軌道に乗せ、企業価値を継続的に高めていきたいと思っています。

私がそれをリードできると思う理由は二つです。

一つ目は、従業員一人一人の個性に徹底的に向き合いたい、そしてそのポテンシャルを開放したい!という強い思いを持っていることです。役職や性別、所属などに関係なく、その人自身と向き合いたいという強いこだわりは、人事戦略をリードする強い原動力となっています。CEOと一緒に各拠点を回っていますが、従業員と直接対話し現場の空気を肌で感じながら、今必要な施策は何だろうと考えています。モヤモヤ会議もその中で考えた施策の一つです。

二つ目は、さまざまなバックグラウンドを持つ、心強いチームメンバーの存在です。私一人の力は限られていますので、自分のやりたいことは常にメンバーに提案し、さまざまな部門を巻き込んで共創するようにしています。

旧日立化成に入社してから、DuPontとの合弁会社の立ち上げ・出向、広報・IR、米国での営業、事業企画など、2~3年ごとに異動して違う職場を経験してきました。どこでも初心者の私が何とかやってこられたのは、一人一人の個性に向き合いながらチームを作っていく力を徐々に身につけたから。私はチームができたときの無限の可能性を信じています。

当社は、今まさに変革の時であり、世界トップクラスの機能性化学メーカーへと導くのは「共創型人材」です。「共創型人材」の創出を定着化させ、VUCAの時代に、持続的な成長を実現していきます。どうぞご期待ください。

 

最高人事責任者(CHRO) 今井 のり

本記事は2023年7月発行の統合報告書「Resonac Report 2023」に掲載された「Leader's Letters」の転載です。
私たちが社会を変えていくためにどこを目指す姿としているのか、どんな課題があるのか、その先にどんな変革を起こそうとしているのか。レゾナックの経営陣の熱い想いをメッセージでお伝えしています。

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