レゾナックナウ

CSuO×現場担当者クロストーク 統合リスクマネジメントを目指す挑戦 【統合報告書】

2024年07月31日

リスクマネジメントとは、企業がビジネスを進めていく中で、リスクを組織的に管理し、損失などの回避、または軽減を図る取り組みです。流動的な「不確実性の時代」に、企業が持続的に成長をするためには、このリスクマネジメントの重要性が高まっています。
今回、レゾナックの「全社重要リスク」をはじめて特定するにあたって、どのように進めてきたか、CSuO松古が各部署の担当者と振り返りました。

組織を越えた連携で見えてきた“全社重要リスクテーマ”

松古:この度レゾナックでは、リスクマネジメント委員会(議長:CEO)での検討を経て、経営幹部による「全社重要リスクテーマ」の特定と優先順位付けを行いました。Sランクリスクが3つ、Aランクリスクが5つです。現在地とここに至る道筋、そして当初持っていた課題感について教えてください。

リスクマネジメントチャート

リスクマネジメントチャート

リスクマネジメント部 筒崎 智孝(以下、筒崎):今回、「全社重要リスク」を8つ特定することができました。2社の統合を契機に新リスクマネジメント体制を立ち上げることになって以来、思い描いていたことが絵になり、動き出したといえます。リスクへの感度は事業部によってバラつきがあります。そこに経営的な目線を取り入れてリスクを判断し、戦略に反映するための枠組みができ、リスクと当社のマネジメントサイクルに組み入れられるようになりました。

経営企画部 佐藤 健介(以下、佐藤):リスクのような見えないものを見えるようにすることは、とても難しいことです。対象とするリスクは、事業部の各担当者にインプットしてもらうものがベースになります。事業運営や災害などに起因する、いわゆるオペレーションリスクやハザードリスクは身近であり特定しやすいのですが、外部環境に起因するリスクは普段あまり意識できておらず、例えばPFAS(有機フッ素化合物) 規制*やディカップリングの影響は時事として知っていても、なぜかリスク項目としては抽出されていませんでした。

これは、事業部が日々の顧客対応に追われているため、トレンドに基づく中長期的リスクを可視化する視点が持ちにくいことが一因かもしれません。さらに、まだ顕在化していないこともリスクとして報告しづらいものです。それをコーポレートが共感・応援して、みんなが自分ごと化できるようにしていきたいと考えました。リスクマネジメント委員会の事務局の議論は、イメージを共有するために、絵を描くことからスタートしました。それがバブルチャートで、視覚的にあらわすことで自分ごと化してもらうという狙いがありました。

リスクマネジメント部 新木 将浩(以下、新木):今回、ボトムアップとトップダウン(経営と現場それぞれの関心)の目線合わせがようやくできました。外部環境リスク分析を進めるうえで難しかったことは、大きく2つ。1つ目は、初めての試みで、最初は手探り状態だったこと。2つ目は変化する外部環境リスクをどう定義すればいいのかが難しかったことです。そのため、バブルチャートから議論がスタートできたのはよかったです。

これまでのリスク棚卸においても外部環境を含めようとしていましたが、現場からの報告だとリスクとして件数が少なかったり、具体性に欠けていたりしました。そこで、事務局で想定されるリスクのリストをあらかじめ準備することで、抜け漏れを防ぎ、それに基づいた報告を求めることで具体性を高めることができました。検討すべきリスクは幅広いですが、ヒアリング対象を絞り、現場の生の声を聴くべくコミュニケーションをベースに取り組みを進められたことは大変良かったと思っています。

サステナビリティ部 上山 留美(以下、上山):気候変動は、自然災害という観点ではオペレーションリスクですが、気候変動という事象が事業に及ぼす影響はまさに外部環境リスクです。こちらは金融庁からのTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース )開示要請への対応が必要だったので、先行して事業部と検討を進めました。その結果、今後のリスク分析に活かすべくリスクマネジメントチームと検討を重ね、重要な外部環境リスクとして位置づけることができました。

筒崎:最終的に8つにまとまった重要リスクは、経営企画部やサステナビリティ部と早期に共創できたからこそ、全社目線のリスク特定につながったと思っています。今後は、このリスクを深堀りし、事業や製品の観点からの影響分析や施策立案など、経営アジェンダに反映していきたいと考えています。

チャレンジを後押しする風土の醸成を

松古:では、次なる課題は何でしょうか?まずはグローバル体制で統合リスクマネジメントを進めていくこと、で、その意味ではまだ道半ばです。その他には何があるでしょうか?

化学品管理部 熊木 尚(以下、熊木):PFAS規制対応についても、化学品管理の枠を超えて、全社共通の経営課題としてさらに足並みをそろえていく必要があります。例えば、PFASの代替品は簡単にはできないし、できても現状と同等またはそれ以上の品質が求められ、技術的に非常にも困難です。開発者がモチベーションを持ち、くじけずチャレンジし続けることを応援する風土をもっと醸成していきたいです。

佐藤:規制動向や潮流は、一企業がコントロールできるものではありませんが、早めに規制情報やトレンドをキャッチできるようアンテナを高く掲げていきます。また、事業部や各拠点が持っている社内情報の可視化と社内共有の仕組みも作りたいと考えています。

事業の土台にあるリスクヘッジ

松古:最後に、リスクマネジメントの取り組みを、どのように「稼ぐ力」に変えていきますか?

新木:リスクマネジメントについては、稼ぐ力というよりも、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)という捉え方をしています。十分な対応ができていない会社はマーケットへの参加資格はない。そういった意味で社員の意識改革が一番大事だと考えており、社員への教育・啓蒙を継続していきます。

品質保証統括部 青木 知明(以下、青木):昨今の規制には、ゲームチェンジの可能性が非常に高いものが増えています。いかに早く多くの情報と向き合い、リスクを的確に分析してチャンスに変えていく稼ぐ力を意識することも大切だと考えています。

熊木:「うちの工場はこれをやるんだ」と事業所内で完結するのではなく、新しい技術や製造・設備のノウハウなどを受け入れていく、事業所間で融通していくことが、全体最適となり、稼ぐ力につながっていく、と痛感しています。現場を含めてこのようなマインドセットの変化が必要です。

上山:気候変動等の環境取り組みを推進している立場からは、環境の側面で事業機会を捉え稼ぐ力にしたい、企業価値の向上に繋げたい、との思いがあります。そのために、主に2つの取り組みを推進します。1つは、TCFDシナリオ分析のように、関係する事業部のメンバーに寄り添って環境を通じた機会とリスクを分析し、事業戦略の立案を支援するような新しい取り組みです。もう1つが、環境へ貢献している製品情報の整理と社内外への発信を通じたさらなる共創機会の探索です。

筒崎:リスクは必ず存在するとの前提で、リスクを把握し、しっかりとリスクヘッジしていることでお客様を含め社外の方々に納得いただき安心感を提供できる。これが、製品の購入や契約を継続してもらう土台となります。これはまさに、稼ぐ力そのものだと考えています。

松古:攻めと守り、どちらも重要。攻守の相乗効果を中長期目線で考え続け、リスクマネジメントやサステナビリティで稼げるレゾナック、価値を棄損させないレゾナックを、皆で協力しながら目指していきましょう。

PFASは、世界的に規制が強化されている化学物質の一つ。日本でも各省庁により規制が進められており、現時点では水質管理と輸入と製造に関する規制が定められています。

リスクマネジメントの取り組みについては、2024年度の統合報告書で紹介しています。

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