レゾナックナウ

こっそり狙っていた新人賞。それを超える結果となった「共創」の改革力とは

日経統合報告書アワード2022グランプリ受賞の裏側②

2023年05月12日

第2回日経統合報告書アワード」でグランプリを受賞した「昭和電工統合報告書SHOWA DENKO Report2022」。担当者にはどんな思いがあったのでしょうか。第2回は制作の裏側にあったエピソードを語ってもらいました。

「正直、どうなることかと(笑)」

旧日立化成時代からCSR部門で統合報告書制作に携わってきた秋葉美穂さん(サステナビリティ部企画・開示グループ グループマネージャー)の現在の上長が入社してきたのは、2021年10月でした。今回の統合報告書の制作に「編集長」の立場であたった松古樹美(なみ)さんです。松古さんは金融機関やメーカーで統合報告書を作成してきた経験豊かな人。秋葉さんがそれまでのキャリアで多く向き合ってきたのは、どちらかと言えば「まかせます」というタイプの上司でしたが、松古さんは違いました。「ハードルが高くて。正直、体力的にどうなるかと思いました(笑)」と秋葉さん。「『こういうのを入れたほうが面白いよ』『ほかではこういうことやっていないよね』とアイデアがあふれ出してくる。当然スケジュールはきつくなるのですが、それによって、私たちメンバーの『こういうことを表現したい』という思いも引き出されていきました」
 

サステナビリティ部秋葉

サステナビリティ部企画・開示グループマネージャーの秋葉

松古さんは今回のグランプリ受賞に、「実はこっそり新人賞をねらっていたんです」と打ち明けます。統合報告書の「プロ」からすれば、今回の報告書は、実績を開示して信頼を得るというセオリーから外れた一冊。「新会社として変わるんだという気合と価値創出をきっちりと出すために、ほかではやっていないことをできるタイミングでやろう、という気持ちでした。冒頭のメッセージの撮影に髙橋がパーカーで登場したのには、さすがに驚かされましたけど(笑)」
 

サステナビリティ部長松古

サステナビリティ部長の松古

社長選任について前社長が率直に語る対談に社外取締役を招いて実現させ、日程的にきびしい見通しだったCFO、CSO、アナリストの鼎談もぎりぎりの調整を進めました。マテリアリティや非財務KPIの実行担当者が覚悟を語るインタビューに至っては誌面からこぼれてWeb掲載となりましたが、いずれも投資家に好評でした。「統合するタイミングで社員のモチベーションも高いし、経営陣も自分事としてとらえてくれたので、私自身ものびのびできました」

松古さんは社内の多くを巻き込もうと、秋葉さんらメンバーに『友だち何人できるかな大作戦』を呼びかけたと言います。
 

森川さん、CFOCSO

左)前社長と社外取締役対談ページ、右)CFO、CSO、アナリストの鼎談ページ

「友だち100人とつながって」

秋葉さんが救われたのは、まさにその人とのつながりでした。一番悩んだのは、各事業や機能をパーパスとバリューにしたがった長期ビジョンで横串にしていく部分。「まだビジョンは語れない」という部門も少なくありませんでした。そこで頼りにしたのが出自も領域も違う、制作現場や企画会議のメンバーです。知り合いを紹介してもらっては相談して掘り下げることを繰り返し、100人を超える社員とのつながりが実現しました。「結局、仕事は垣根を越えてオープンに人とつながり合う『共創』なんだな、と。私自身、松古というプロに出会えてこの1年ですごく成長したと思います。やらなければならないことだけをやるのではなく、やりたいことを仕事の中で実現していく。小さくやっていた仕事が『共創』で大きく広がった実感があります」

松古さんは「楽しげにやってくれて心強いな」と秋葉さんを見ていました。「前向きに仕事をすることで新しいものや人に伝わるものができるんだとあらためて感じました。今回はまだ社内の垣根を超えるのに遠慮もありましたが、次号はより機敏に迅速に進めていけるはず、と」
 

サステナビリティ部二人

左から)サステナビリティ部企画・開示グループマネージャーの秋葉、同部部長の松古

挑戦的に仕事に取り組むことで信頼を深め合う上司と部下の姿が見えてきます。制作期間には、2人で業務外に食事をしながら公私の話をする機会も。それぞれの思いをのぞくと、自然と「プロ」「オープン」「共創」「機敏」といったバリューに通じる言葉が出てきました。秋葉さんが「驚いたけど、うれしかった」という今回の受賞は、レゾナックがめざすバリューへの最初のごほうびだったのかもしれません。

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