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レゾナックのグローバル半導体材料ビジョン、共創の未来【半導体材料グローバル座談会】

2023年07月31日

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(写真左から) Sim Mong Teck :Resonac Asia-Pacific Pte. Ltd. Chairman
山下  祐行:株式会社レゾナック・ホールディングス常務執行役員 株式会社レゾナック エレクトロニクス事業本部長
真岡 朋光:株式会社レゾナック・ホールディングス取締役、常務執行役員、最高戦略責任者(CSO)
Dennis Parker:Resonac America, Inc. President and COO
蔡 友傑:Resonac International(Taiwan) Co., Ltd. Chairman and General manager

レゾナックの長期ビジョンにおいて、成長事業と位置づけて取り組む半導体材料事業。今後、長期的に旺盛な需要が見込まれる中、技術開発力の一層の強化や、製品供給・環境・人権を含むサプライチェーンのマネジメントなど、顧客からの要求も高まっており、レゾナックとして積極的な対応が必要と認識しています。
レゾナックの戦略や課題、その対応について、エレクトロニクス事業を統括する山下、米国、台湾、シンガポールの営業拠点長、そしてCSOの真岡が一堂に会し、語り合いました。
(2023年2月21日 東京プリンスホテルにて実施、社名・部署名・役職名はインタビュー当時のものです)

半導体材料ビジネスの特徴とレゾナックがそれを担う理由

真岡

現在、グローバルでの半導体ビジネスでは、各国が生産基盤の囲い込みを行うなど激変の時期を迎えています。レゾナックが主要事業として取り組む半導体材料分野は、半導体需要増の流れに乗って成長し、2025年までCAGR5.2%を見込んでいます。特に当社が注力している高性能半導体向け材料では二桁成長率が見込まれています。  

山下

半導体材料ビジネスは、微細化やパッケージの複雑化を突き詰めていく上で顧客とすり合わせ型のやりとりが必要で、コモディティ化しにくい特徴があります。また、世界トップシェアの製品を多く抱えるレゾナックは、顧客とのやりとりにより技術動向や顧客ニーズを常に把握でき、技術開発で常に先行できています。
 

真岡

やりとりの結果決定した生産プロセスは、変更が避けられる傾向もあります。半導体材料の材料設計は、電気工学、熱力学、構造力学、物性化学を融合して最適化する必要があり、難易度も高い。参入障壁が高いビジネスだと思います。

 
山下

レゾナックが長い間で培った顧客との信頼関係が生きてくる分野です。また、半導体材料業界内におけるレゾナックのポジショニングが独特なことも優位性につながっています。半導体材料メーカーのほとんどが、少数の製品で強みを発揮するニッチマーケットプレイヤーであり、レゾナックのように高シェアの製品を複数手掛けるプレイヤーはあまり多くありません。
 

真岡

各国での半導体製造の囲い込みが進むこれからの時代は、生産拠点も各国で展開することが求められるなど、半導体材料メーカーも企業規模が大きくなければ勝ち抜けなくなります。だからこそM&Aが活発化しているのであり、レゾナックはその先駆けになったといえます。
 

山下

レゾナックは、半導体生産前工程・後工程において高いシェアを持つ製品を有しています。これまで半導体の技術革新は、シリコンウェハーに形成する回路の微細化を担う前工程がけん引してきました。しかし、今や2nmプロセスの実現が間近に迫る中でさらなる微細化は困難になっており、今後は後工程の実装技術により高機能化を実現していく必要があります。この後工程における高機能化では使用する材料が複数にわたり、いわゆる2.X次元パッケージと呼ばれる複雑な立体構造では10以上の材料を最適に組み合わせる必要があります。顧客とのすり合わせを得意とし、半導体材料の売上高のうち約7割を後工程材料が占めるレゾナックが成長していく要因です。

半導体製造の前工程と後工程における、レゾナックのポジション(2021年実績)

レゾナックの半導体材料ビジネスの戦略

真岡

今後、当社が高シェアを持つ材料も軒並み成長が見込まれています。半導体材料事業を当社の成長事業と位置づけ、事業本部とコーポレート部門が連携して経営資源と外部環境の分析を行い、費用対効果と実現可能性から実行可能な戦略を設定し、集中投資を行っていきます。

レゾナックが高シェアを持つ半導体材料の成長予測


山下

2022年は旺盛な半導体需要を背景に増収となりました。一方、営業利益は、原材料価格高騰の販売価格転嫁のタイムラグ影響などで減益となりました。2023年は需要および在庫調整の動向が不透明さを増しており、調整からの回復時期を見通すことが極めて困難です。足元の外部環境は厳しいですが、中長期的に見ると半導体市場は今後も拡大していくた
め、数年後を見据えた先行投資は実行していきたく、半導体市場の成長に見合ったタイムリーな設備投資実行、特に増産・合理化・新製品に関係する戦略的投資を実行し、確実に回収していきます。

市場スピードにあわせた開発力の強化と共創

Dennis

米国市場においても、レゾナックの存在感は増してきており、特に最近はエッチングガスやCMPスラリーなどの引き合いなども増えています。顧客からの技術要求は高く、Resonac America, Inc.を中心に顧客との共創で、先進的な設計・製造技術の開発を行っています。

 

山下
顧客の期待に応え、市場のスピードに遅れないよう開発力を強化し、新製品立ち上げを加速していくことが引き続き重要と認識しています。そのため、日本に設置しているパッケージングソリューションセンターのような機能を米国にも設置できないかと考えています。これを、半導体・材料・装置メーカーとの共創の場、かつ先端技術情報の集約の場としたいです。
 
真岡
米国内は、Chips Act法により独自の半導体エコシステムが形成されていく状況です。現状維持ではなく、そのエコシステム内に参入することで、先端パッケージ情報獲得や開発初期フェーズでの当社材参入の機会を得て、後工程グローバルNo.1の継続を狙います。実は、日本での共創の取り組みを見学された海外のお客さまから、驚きとともに高い評価をいただいています。この共創が、日本の半導体産業自体の差別化にもなると期待しています。
 
Dennis
最先端の技術が求められる米国市場において、こういった共創の取り組みをレゾナックが主体となって拡げることは、レゾナックのプレゼンスを上げるためにも非常に意味のあることだと考えています。

地域別戦略とサプライチェーンマネジメント

Dennis

地政学リスクが高まる中、大手半導体メーカーによる米国での投資や設備増強が増え、半導体材料の米国内での需要も拡大しています。アジアの生産拠点で生産・充填し、米国へ輸送する当社のサプライチェーンの改善が期待されています。
 

Sim

シンガポールを中心としたアジア圏でも、サプライチェーンに関する問題が大きな課題の一つです。当社は安定供給と競争力維持を目指して、インド太平洋地域におけるサプライチェーン体制の構築と情報の一元管理を進めています。2023年4月にはマレーシアでグローバルサプライチェーンシステムに関する事例紹介を行いました。環境問題や生産・物流の制約、地政学リスクなどの問題もあり、半導体サプライチェーン全体のリスク低減や効率化が求められています。

 
 
真岡

これらに対応するため、2022年4月より本社の経営企画部に渉外専任者を置いています。当社は半導体材料業界をけん引する一企業として、経済産業省とも連携し、サプライチェーン全体のリスク墘減や効率化に向けた活動を拡張させていく予定です。
 

台湾では、成長基盤の構築に向けて、キートレンドの次世代通信(5G)、HPC、AI、xEVなど先端・成長分野で新規案件を獲得することを主軸に置いて取り組みを進めています。これら成長分野での急速な需要拡大に対応することを目的に、Resonac SemiconductorMaterials( Taiwan) Co., Ltd.では、最先端デバイス向け半導体ロジックの回路形成工程で用いられるナノセリアスラリーの生産能力を今年1月より拡大、7月には、高研磨速度と墘研磨傷の両立が可能なセリアスラリーの能力増強も行いました。同じく、2025年までに半導体パッケージ基板用銅張積層板の生産ライン・設備を導入し、生産能力を増強する予定です。
 
 
山下
一方、当社は中国・台湾に多くの顧客を抱えており、事業戦略上、エンドユーザーを含む中華圏顧客の動向・購買戦略について注視が必要です。私が率いるエレクトロニクス事業本部における、中華圏の従業員比率は約30%と高く、従業員の雇用や安全管理も含めたリスクマネジメントが重要と考えています。
 
真岡
半導体業界においては、主要技術は米国が握り、製造が台湾、素材は日本と国ごとで分業される形で構成されています。地政学を注視し、BCM(事業継続マネジメント)を行うことがますます重要です。各国の政府・行政との連携、情報収集とシナリオプランニングを進め、即座の対応ができる体制を整えています。
 
Sim
環境や人権などの問題も、社会や顧客からの要請の重要事項と認識しており、営業の最前線にいる我々も意識高く対応していきたいと考えています。ますます顧客やサプライヤー、そして世界各地のレゾナックの仲間との連携が必要と認識しています。

グローバル半導体材料ビジネスをけん引する立場として

真岡

レゾナックは半導体材料分野での世界No.1シェア製品を多数有しており、社会への責任は非常に大きいと捉えています。世界経済の急速な悪化と消費者需要の減退が半導体市場にも影響を及ぼしており、どのタイミングから回復するか現状では見極めが難しい状況ですが、長期的に見ると半導体市場は今後も拡大していく市場です。急な回復も視野に入れ、市場の動きを観察しながら、需要回復の時期について早期の情報入手に努めていきます。
 

山下

我々事業本部では、2025年までの3年間の計画として、半導体材料を中心とした新製品開発およびワンストップソリューションの提供、サプライチェーンマネジメント強化による高効率オペレーションの実現、バリューチェーンでの強力なパートナーシップ構築を重点的に進めていきます。


真岡

全て共創ですね。今後は1社で解決できることは、ますます少なくなっていくことでしょう。レゾナックはあらゆるステークホルダーと共創することで、グローバルでの半導体材料ビジネスをけん引します。

山下
半導体材料を通じて、これからのデジタル社会の進展を支え、持続的な社会発展に貢献していきます。 

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