レゾナックナウ

大学生と語る「素材産業が社会課題解決のカギとなる理由とは?」

2023年08月22日

(写真左)松古 樹美:(株)レゾナック・ホールディングス サステナビリティ部長
(写真 右)園田 恭平氏:同志社大学 経済学部 4年生

「日本の素材産業が日本や世界の社会課題を解決し、日本復興のカギになる!」というレポートに共感して、当レポート執筆チームのリーダーである大学生の園田さんと当社サステナビリティ部長の松古が対話しました。なぜ素材産業に注目したのか、どんな会社がこれから成長すると考えるのか、などの新鮮な視点を頂いて、素材・化学企業へのZ世代からの期待にワクワクしました。 このような視点をもっと幅広い従業員、経営陣が受け止め、将来のあるべき姿を考えていく機会もこれから増やしていきます。
(2023年6月21 日 オンラインにて実施、プロフィールはインタビュー当時のものです。)

化学の力があれば根本からの解決が可能で、川下産業に大きな波及効果をもたらせるはず

松古
園田さんたち大学生チームの株式投資に関する「マテリアルイノベーション」というレポートを拝読しました。たくさんの企業を対象に調査やインタビューをして、独自の基準で投資したい企業を見つけるというレポートで、マテリアル、すなわち素材に注目されていましたがとても素晴らしいレポートですね!
課題先進国といわれる日本の社会課題を解決するポテンシャルが高いのが日本の素材企業であり、素材企業ががんばることで、日本は課題「解決」先進国となり、これから生まれる世界の課題も解決していく、だから日本企業は世界に大きく貢献できる、というストーリーには目からうろこが落ちましたし、素材・化学会社で働いている我々にとって、とても励まされる内容でした。
そこで最初の質問です。そもそもなぜ、素材産業、それも日本の企業に注目したのですか? 
3つの社会課題(超高齢社会、自然災害、資源・環境制約)は確かにとても深刻ですが、それをB to B企業、しかも川上、川中に位置する素材との距離はかなり遠い気がします。

園田氏
素材産業に着目したのには、主に3点、理由があります。まず、1つ目は化学の力で根本からの解決が可能である点。2つ目は川上、川中にあるからこそ、川下産業に大きな波及効果を持つ点。3つ目は日本固有の強みがあると考えた点です。 
まず、1つ目の根本からの解決が可能であることに関して。素材産業は産業構造の川上川中に位置するために、あらゆる最終製品の根本の部分を担います。その根本から変革を起こしていくことで、素材産業は、従来の解決策では困難だった課題に対して革新的な解決策を提示できるのではないかと考えました。

次に、2点目の川下産業への波及効果については、素材産業を起点に川下産業を巻き込んで日本全体の変革を起こすことができるはずだと考えました。実際に、実証分析によって検証した結果、素材というものは、製品を通して川下産業に直接的な影響を与えるだけでなく、知識や技術といった無形資産を通じても川下産業に大きな影響を与えていることが明らかになりました。

最後の日本固有の強みに関しては、高度経済成長期から現在に至るまでの間に日本の素材産業というものがこつこつとつけてきた力、とくに技術力が大きな力になるのではないかと考えています。日本は、石油危機の際に重化学工業から知識集約型産業に舵を切って、そこからこつこつとずっと力を蓄えてきたからこそ、他の産業が国際競争力を失う中で高い競争力、高い技術力を維持できていると考えました。以上の3点より、私たちは日本の素材産業の強みに着目しました

松古
なるほど!今のお話を伺って、私自身、今この瞬間に素材・化学企業にいられるめぐり合わせに感謝してしまいました。ありがとうございます。

テクノロジーの力を駆使して、描きたい未来から逆算して今の戦略を決めることができる企業を選びたい

松古
では、次の質問です。皆さんが投資したい企業を選ぶにあたり、資金力や売り上げといった数字に表れてこない、さまざまな企業の潜在的な力を独自の視点で評価していたのにも驚きました。皆さんが企業をスクリーニングする際に採用した基準や項目は、私たちから見ても改めて「その通り!」と納得できるものばかりでした。
何か一つか二つ、例にとって、なぜこの項目が、投資対象を評価するにあたって重要と思ったのか、教えていただけますか。

園田氏
はい、おっしゃる通り、企業の潜在的な能力にも着目しました。例えば、素材の開発に関しては、マテリアルインフォマティクスや逆解析結果による開発などに着目しました。今までの素材の開発は、数年から数10年かけて素材を開発して、そこからどのように使ったらいいのかを考えるというやり方が主流だったと理解しているのですが、世の中の流れが速くなるなかで持続可能な社会を目指していこうとするとそれでは遅い。もっと先の描きたい未来から逆算して考えていくような視点が必要なのではないかなと考えました。

そのため、テクノロジーの力を駆使して、描きたい未来から今必要な戦略や研究開発に落とし込んでいくことができる企業を選びたいと思いました。

また、開発面以外の部分ですと、例えば企業のビジョンや方向性をどう説明しているかが大切だと思ったので、ビジョンに「創造性」や「変革」という言葉があるか、とか、ソリューションを提供することを重視しているか、などにも着目しました。というのも、今まで川上産業は、社会全体の下支え的な側面が大きかったと思いますが、今後は川上産業だからこそ、素材産業だからこそ、川下産業を巻き込んで変革を起こしていく視点が必要なのではないかと思いました。そのため、周りを巻き込んで変革を起こしていけるかどうか、といった視点を判断基準に入れることにしました。

松古
なるほど!いいですね!最先端のテクノロジーを使いこなせているか、しっかりとしたビジョンを持って有言実行しているか、川下企業等も巻き込んで価値をつくっていく力があるか、ということですね。その通りだと思いますが、これらを公開されている情報だけを見て評価するのは難しかったのではないですか?

園田氏
 おっしゃるとおりで、大変難しかったです。主に企業のホームページや統合報告書を見ながら検討していきましたが、よくわからないところやもっと深く確認したいときには、企業の方々へのインタビューによって判断しました。その際、評価できると感じたのは、ストーリーがあることでした。何の目的で行っている取組みなのか、その取り組みによって将来、どんな企業になっていくのか、がストーリーとしてしっかりつながって明確になっている場合に、評価に値すると納得することができました。

松古
私たちも統合報告書を中心に、さまざまなステークホルダーを意識してさまざまな情報発信をしていますので、今の言葉はとても刺さりますし、何より緊張します。企業は快くインタビューに応じてくれましたか?

園田氏
はい、最初はメールでのコンタクトなどを試みたのですが、なかなか返していただけず苦戦することはありました。少しご迷惑だったかもしれないのですが、どうしてもお話を聞きたい企業には何度かメールや電話を差し上げ、受けていただいた皆様には親切に対応していただけて理解が深まりました。

松古
あきらめないこと、大切ですね。私たちだけでなく、多くの会社が、できるだけ皆さん世代との対話をしたいと考え始めていると思います。

企業評価における財務と非財務の順番やバランス

松古
では次に、財務力について考えてみましょう。皆さんの評価方法はいわゆる「非財務情報」を最大限活用しています。そうであればこそ、私たちとしては、会社のビジョンや技術力や人材、顧客基盤といった、財務数字には表れないけれどレゾナックが価値を生みだす源泉となっているさまざまなモノやコトを情報発信や対話を通じてしっかり伝えていきたいと思っています。 一方で皆さんは、財務的な部分も非常に重要な観点としてスクリーニング基準に入れていますね。しかも、最後のスクリーニングの段階で検討している。財務情報を入り口の足切り基準として使うのではなく、出口の判断基準として位置付けたという考え方の背景があれば教えてください。

園田氏
財務基準を投資判断の最後に位置付けた理由は、最初に財務面から入ってしまうと、企業の潜在能力や将来に向けての成長のストーリーを正しく評価できないのではないかと思ったからです。私たちが投資したいのは、これから社会を変えていける企業ですので、そういったストーリーが描けている会社かどうかをまず見たかったのです。そのうえで、最後に財務基準でスクリーニングをしました。やはり実際に企業に投資をしていくためには、財務情報がしっかり整っていること、財務状態がしっかりしていることは大事な要素であるのと考えて、最後に財務情報で企業をスクリーニングしています。

松古
評価における財務と非財務のバランスや順番には大きな意味があると再認識しました。

レゾナックへZ世代からのアドバイス

松古
では最後に、園田さんをはじめとするレポート執筆チームの皆さんからみて、「ここをもっと頑張ったら?ここをもっと納得できるように見せてほしい」とか「ここはよかった」といった要素があればぜひアドバイスください!

園田氏
レゾナックの昨年の統合報告書は本当に素晴らしいなと感じました。素材の力でどんな社会を築いていきたいのか、そのためにどういうどのようなことをする必要があるのか、といったストーリーがしっかり描かれていて、素材のレポートを書いた自分自身の心にぐっとくるものがありました。その上で、一学生として、思うことを挙げさせていただくとすれば、「しょせん素材産業は川上にあって最終消費者から遠い、だから、最終消費者により近いB to Cの会社が社会を変える」と捉えるのではなく、素材だからこそ川上だからこそ、基点となって川下を巻き込んで社会全体を変革していけるという強い意志を、もっと強くレポートや対話で訴え、図示化して、レゾナックならではのストーリーとして見せていただけると、大きな目標に向かっている感じが伝わってより魅力的に映るのかなと、僭越ながら考えました。

松古
ありがとうございます! 今日お話しくださったことは、まずは今年の私たちの統合報告書作成にも大変参考にさせていただきますね。
皆さんがこれから社会に出て、10年、20年たったときに、レゾナックが皆さんの何らかのパートナーとして魅力的でいられるように、私たちも頑張っていきます。
お互い頑張りましょう!

 

関連リンク

 

動画版:RESONAC Here We Go ! 学生との対話「素材・化学の可能性」(約3分59秒)

 

動画版:RESONAC Here We Go ! 学生との対話「素材・化学の可能性」フルバージョン(約9分36秒)

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