パーパス・バリュー浸透に向けて。新しい企業文化を創り出すための取り組み
2023年03月14日
当社は、経営理念としてパーパス(存在意義)に「化学の力で社会を変える」、バリュー(私たちが大切にする価値観)に「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」「未来への先見性と高い倫理観」を掲げています。長期ビジョンのゴールである2030年には、経営理念が当社のあらゆる活動のよりどころになり、企業文化として根付いていることを目指し、2021年12月から経営理念の浸透活動を開始しました。その進捗と今後の取り組みについてカルチャーコミュニケーション部の鈴木より説明します。
──カルチャーコミュニケーション部とはどんな役割を担っているのでしょうか
当社は、2020年12月に公表した長期ビジョンの中で統合会社のパーパスを掲げ、その後、バリューと合わせて経営理念として公開しました。2022年1月には旧昭和電工と旧昭和電工マテリアルズ(日立化成)の経営体制を実質的に統合し、最も大切な指針である経営理念に根ざした企業文化を社内コミュニケーションを通じて創っていくために、CHRO (最高人事責任者)管掌の下、カルチャーコミュニケーション部門を新設しました。さらにカルチャーコミュニケーション部の中には、二つのグループがあります。一つ目のカルチャーカルティベーショングループでは、経営理念であるパーパス・バリューの実践が組織を超えて広がっていくよう、企画立案・推進を担っています。二つ目のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョングループでは、一人ひとりが活躍できる環境づくりと、多様性の確保、多様性を集合知に変えていく活動に取り組んでいます。メンバーは、カルチャーカルティベーショングループは10名、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョングループは4名の体制です。
──経営理念浸透がなぜ大事なのか、レゾナックとしての課題感、方針を教えてください
経営理念のパーパスは、我々が何者なのか、どんな価値を出せるのかというところと、社会が求めるものが交差する部分であると思っています。それで存在意義という言い方をするのだと思います。これだけ世の中の変化が激しいと、求められるものはどんどん変わってきますし、とはいえ、その都度それをマインドセットしていくことになると、なかなかスピード感も出てこない。確固たるものをみんなで見失わないようにするためには、一人ひとりがパーパスを理解し、納得していることが非常に大切です。
私たちは、共創型化学会社として「世界トップクラスの機能性化学メーカー」になることを目指しています。そのためには、多様性を集合知に変えていくことは欠かせません。多様性を受け入れると、阿吽の呼吸を前提にした仕事の進め方では上手くいかないこともあると思います。その阿吽の呼吸に代わる共通の価値観、私たちの共通言語の役割を担うのが経営理念のバリューです。バリューの浸透というのも極めて重要だと考えています。 しかし、これまで、両社ともに経営理念と自身の仕事との関連性について考える機会が少なかったという課題がありました。かつ、パーパス・バリューに対する捉え方は人それぞれです。言葉だけ置いてしまうと、みなさんの間に感覚のずれが生じてしまいます。そこで、従業員一人ひとりが、自分自身のパーパス・バリューと向き合う時間、他者との対話を通じて自分とは異なる捉え方などから新たな気づきを得る機会をつくる取り組みを開始しました。
──経営理念浸透に向け中長期に取り組んでいくことを教えてください
長期で考えていることは、パーパス・バリューをあらゆる企業活動のよりどころとなるようにすることです。結果的にそれが、企業文化として根付いている状態を目指していくことを、チームメンバーと早い段階で合意しました。長期ビジョンと連動し、2030年をターゲットにしています。 これを目指して、中期的には三つの浸透フェーズを設定しました。一つ目のフェーズは認知・理解の促進、二つ目はそれを自分ごと化してもらうこと、三つ目はそれが自走化して仕組み化されていることです。
KPIとしては、現在6割くらいの共感度において、2030年までに8割以上の達成を目指します。実践度は、現在3割程度であるので、少なくとも半数以上を目指しています。従業員の皆さんが、経営理念に対する当事者意識を持ち、結果として共感度と実践度を上げていくためには、組織の縦と横のコミュニケーションが重要だと思っています。個人にそれをゆだねると、厳しめに考える人と、緩く考える人がいると思います。ですから、浸透方法として、三つ考えました。一つ目は経営層と従業員とのコミュニケーション、二つ目はカスケードダウン型のコミュニケーション、三つ目が組織間のコミュニケーションです。この三つをセットでやらないと、偏ったコミュニケーションになりかねません。自分ごと化という点では、二つ目のカスケードダウンで、各組織階層でパーパスの捉え方をすり合わせ、バリューへの想いを共有していくことが重要です。各組織はグローバルに広がっているため、カスケードダウンする先には日本以外の拠点も含まれています。部門長の皆さんから、「各地域の言語でコミュニケーションツールを準備してほしい」という要望があり、海外においても対応が進んでいると実感しています。
2023年から、新たな人事評価の運用を始めました。半分は業績評価、もう半分が行動成長評価という仕組みになっていて、バリューに紐づくコンピテンシーを後者で評価します。バリューを実践すると必然的に評価されるという制度となり、全従業員に行動成長評価が用いられます。
──経営理念浸透に向け2022年に取り組んだこと、2023年に取り組むことを教えてください
2022年は、経営層と従業員とのコミュニケーション、カスケードダウン型のコミュニケーション、組織間のコミュニケーション、この三つに取り組みました。
認知度9割超えの仕掛けは経営層
経営層と従業員とのコミュニケーションとして、2022年の初めからCXO(最高責任者)や事業部門長によるタウンホールミーティングを、国内外のほぼ全ての拠点で開催しました。主にこの成果により、パーパス・バリューの認知度は9割を超えました。それと並行して実施したことが二つあります。一つが、CEOとCHROとのラウンドテーブルです。2022年は110回実施しました。ラウンドテーブルでは、テーマを縛らずにフリーにとにかくしゃべってもらって、経営層との距離を近くしてもらいたいという目的で実施しました。もう一つが、製造現場の従業員とCMEO(最高製造関係業務・技術責任者)とのコミュニケーションです。CMEOが製造拠点を回り、安全・環境・品質・生産などについての座談会を実施しました。こちらは現時点において国内10拠点で実施し、さらにグローバルに広げていく予定です。
理解度アップの立役者は部門長・部課長
カスケードダウン型の縦のコミュニケーションで言うと、部門長から部課長、部課長から職場というプロセスでの浸透活動を行いました。その際、部門長から部課長に伝えるときに、パーパス・バリューとそれに関する想いについて、ご自身の言葉で語ってくださいとお願いしました。部課長が共感・納得できない場合は、部門長にフィードバックしていただき、対話の繰り返しで理解を深めていただきました。さらに、部課長から職場に伝える際も同じです。そこには私たちは一切かかわらずに、コミュニケーションをとってもらったので、それぞれの部門の実情を踏まえたパーパス・バリューへの想いが伝わっていきました。その結果、それぞれの従業員の心に響き、理解度もかなり上がったのではないかと思っています。
部門の垣根を超えて未来について語り始めた従業員
最後に、組織間の横のコミュニケーションについてです。施策としては、オンラインカフェをグローバルで10回実施し、約2300名が参加しました。オンラインカフェとは、参加者のパーパス・バリューへの理解、旧昭和電工と旧昭和電工マテリアルズとの相互理解を目的とする対話型のイベントです。実際に、参加者から感想をヒアリングしたところ、両社従業員のどちらからも、「相手のことが分からなかったから、この機会に話せて良かった」という声がありました。オンラインカフェで今までの組織のこと、この先の未来のことをざっくばらんに話すことで、従業員同士の理解が進んだことは、良かったと思っています。組織間のコミュニケーションの仕組みはもう少し考えていきます。
2023年も、基本的にはこれら三つの取り組みを続けていきます。
拠点訪問によるコミュニケーションの強化
経営層と従業員とのコミュニケーションとして、CEO、CHROによるラウンドテーブルを2023年も継続しています。テーマを定めずフリーで話した2022年に対し、今度は、業務上の困りごとやモヤモヤを挙げて、解決策を一緒に考える、名付けて「モヤモヤ会議」を実施します。モヤモヤ会議では、従業員それぞれが課題に感じていることを挙げてもらい、それについてバリューをベースに解決アクションを一緒に考えます。バリューの実践により課題を解決できることを、実体験してもらいたいと思っています。当人のバリューの実践だけで解決できないことがあれば、他の参加者はバリューに基づいて助言し、その場に同席する拠点長はバリューに基づく意思決定を行い、みんなで一緒にバリューを実践していきます。 CMEOとの座談会については、2023年は特にグループ会社へ積極的に展開しています。この座談会には、製造現場を取り仕切る人たちが参加しており、2022年の参加者からは、「パーパス・バリューはわかりました。ただ、それを自分の部下にどう伝えていくか、伝えるツールがほしい。」という意見が多く出ました。具体的には、パーパス・バリューを実践した事例のようなものを教えてほしい、日頃の業務とバリューを結び付けられるように、もう少しわかりやすく教えてほしい、というリクエストがありました。そこで、2023年は事例集を整えて、展開していこうと考えています。今、各事業所長にお願いして、それぞれの事業所から事例を推薦してもらっており、それを全社に共有していく予定です。
実践サポートと相互刺激を促す勉強会
カスケードダウン型の縦のコミュニケーションでは、2022年に聞こえた声として、比較的若い層の人たちから、自分たちが何かやりたいと思っても上司がサポートしてくれないという意見がありました。反対に、部門長・部課長の人からは、部下の実践をサポートしたいのだけれども、どうやったらいいかわからないなどの意見が挙がり、お互いに違う角度で同じように悩みを持っていることがわかりました。この課題を解決するため、パーパス・バリューの実践をサポートするための「パーパス・バリュー実践サポート勉強会」を部門長向けに実施しています。事業部門やコーポレート部門の部門長、総勢約100名が対象です。実際にこういうことをサポートしてほしいとお伝えするほか、他の参加者の話を聞いて、こういうこともできるよね、のような気づきも得ていただけたらと考えています。
グローバルアワードの活用と活性層レブルック(REBLUC: Resonac Blue Creators)
組織間での横のコミュニケーションでは二つあります。一つは、それぞれの拠点で実施していることの見える化です。それについては、後からお話しする「グローバルアワード」の中で設計できないかと考えています。トップオブトップの人だけが、称賛されるだけではなくて、参加した人全員が参加してよかったと思えるような活動にしたいと考えています。もう一つは「レブルック」です。これまで行ってきた施策は、どちらかというとバリューに寄せた取り組みです。「レブルック」はパーパスに軸を置いて、パーパス実現のために何ができるか、を追求するコミュニティです。「このように社会を変えたい」、「社会にこんな貢献をしたい」や「レゾナックの文化や価値を自分たちで創り出していく」という想いを持ったメンバー同士の横の繋がりを通じて「化学の力で社会を変える」に向けた具体的な行動を進める活動です。第1期は36名の従業員が参加したいと手を挙げ、2022年の下期からスタートしました。第1期生は2023年の4月までを任期とし、これは2期、3期と続けて行く予定です。
──レゾナックが経営理念の実践を加速するために取り組んでいる「グローバルアワード」とはどんな取り組みですか
グローバルアワードは、パーパス・バリューの実践を加速する場として進めている組織間コミュニケーションの代表的な取り組みです。同時に、レゾナックが共創型化学会社として進化していくための仕掛けの1つがグローバルアワードです。コンセプトは、「共感・共創」と掲げました。これは、先ほどの人事評価とは別の切り口で、バリューを実践している人を奨励して、称賛したい。そして、各々の取り組みを全従業員に共有したい。それが相互刺激につながって共感となり、結果的に共創につながるということを考えて設定しました。グローバルアワードには、各職場のみならず、組織の垣根を超えたチームが、パーパス・バリューを踏まえた行動宣言を策定し、それに基づく目標と具体的な取り組み内容を定め、自らエントリーして活動します。その後、選考会の場で、挑戦の中で実践したバリューの経験を語り合い、お互いに「共感」することで良い刺激を受け、枠を超えた「共創」が生まれることを狙っています。これらが積み重なることで、レゾナックの文化が醸成されることを期待しています。
──経営理念浸透の目指すべき姿について聞かせてください
レゾナック誕生が第2の創業であるという言い方をします。もちろん今まで培ってきたものをベースにしていますが、新しく始まるのであれば、これからの自分たち一人ひとりの行動がレゾナックの文化になっていくと、思っています。そして、そのベースとなることこそが、経営理念であるパーパスとバリューです。しっかり、ちょっと前のめりで熱意をもって取り組んでいきたいと思っています。
ただ、今、一所懸命頑張ったからといって、明日、すぐに企業文化ができるわけではないですし、毎日積み重ねていくものだと思っています。この経営理念浸透活動は今だからやっているイベントであると思っている人もいますが、そうではない。パーパス・バリューを実践する日々の行動を積み重ねていき、それが企業文化につながっていくということを理解してもらう必要があります。企業文化を創りたいから経営理念を定めたのではなくて、経営理念に基づく行動を積み重ねていくことで、自然とこれが私たちの文化であると思えるようになってほしい。引き続き、経営理念の浸透に向けて取り組み、進捗についてもステークホルダーの皆さまに共有していきます。
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