レゾナックナウ

「自動車外装部品といえばレゾナック」をめざして

2023年01月01日

プロダクトのさらなる軽量化・環境配慮が求められる自動車業界において、待望とも言える、樹脂射出発泡成形技術による自動車外装品を生み出した株式会社レゾナック・オートモーティブプロダクツ(開発時、社名は日立化成オートモーティブプロダクツ株式会社)。前編では、新技術開発における奮闘の数々を聞いた。

後編では、外装軽量化発泡技術からさらなる新技術開発を目指しているという設計部 主任技師の中野真吾、設計部 技師の三石直子に、前編に続いて技術にかける想い、今後のビジョンを聞いた。

パートナーとしての「信頼」がさらなる反響に

前回は、「外装軽量化発泡技術」を完成させるまでの奮闘についてお伺いしました。その後、2018年にはトヨタ自動車の「レクサス」にも採用されています。

中野:技術そのものを評価いただいたのはもちろんですが、パートナーとして「信頼」を勝ち得たことが大きかったのではないでしょうか。トヨタ九州さんに長年お引き合いいただいて、丁寧な仕事が認められたのだと思います。「レクサス」への提案の機会をいただけたのも、トヨタ九州のご担当者のおかげです。人が人を呼んで、今の結果に結びつきました。

パートナーとして信頼されるということは、大きな自信になりますね。

三石:その通りですね。もちろん品質の厳しい基準をクリアできたことも、大きな自信になりましたし、最終的にあるお客さまから「注目度No.1のサプライヤーです」と言っていただいたときは、本当にうれしかったですね。その後、国内外のお客さまから多くの引き合いがあって、もちろんレクサスにも継続して採用いただいています。

海外メーカーも注目されているんですね。

中野:はい。グローバル展開にも力を入れているところで、欧州のある自動車メーカーさまからはとくに高い関心を持っていただいています。彼らは、すでに我々が高いレベルで外装軽量化発泡技術を確立していたことに、驚いていました。

国内でも多くのメーカーさまから技術に関心を持っていただいて、「ぜひ拠点を近くに設けてほしい」「バンパーへ応用したいから技術を教えてほしい」といった要望もいただいています。そういう声を聞くと、本当に自分たちは価値あるものをつくることができたんだと、実感が湧いてきますね。

間違いなく、レゾナックの外装軽量化発泡技術は世界に通じるので、今後さらに進化させて、世界中の自動車の軽量化に貢献していきたいと思っています。

次の時代を見据えた、さらなる技術開発

では、今後取り組んでいきたいことについて教えてください。

中野:まずは、さらなる軽量化の実現ですね。現時点で従来の樹脂成形品より30%程度の軽量化を達成できているのですが、これを3~4年内に40%まで引き上げたい。そのために、グループ会社と連携しながら、樹脂の素材開発に目下、取り組んでいるところです。

三石:素材についていえば、これまでは「ポリプロピレン」を使っていましたが、より光沢性にすぐれる「ABS樹脂」でバックドアガーニッシュ(バックドアの装飾部品)やリアスポイラー(トランク後端の突起)の開発にも成功しました。足回りの部品よりも、目立つ位置に取り付けられるので、より外観性が求められます。今後さらに、ABS発泡の需要は高まるはずです。

最近では、「SDGs」や「脱炭素」という言葉があらゆるところで聞かれるようになりました。「環境負荷を低減してほしい」という要求もあるのでしょうか?

三石:ありますね。詳細はまだお話できないのですが、外装発泡成形技術にプラスアルファの技術を組み合わせて、工程を削減できないかを検証しています。それを実現するために、挑戦を始めていますが、まだ全然うまくいっていません。なかなか高いハードルですが、諦めずに研究を続けて、環境負荷の低減ニーズに応える技術を必ず完成させたいと思います。

中野:そもそも外装軽量化発泡自体が、実は環境にやさしい技術なんですよね。スポンジ状である分、材料である樹脂の使用量は通常よりも少なくて済みますし、軽量化されているためトラック輸送する際の燃費も向上する。そういった環境負荷低減につながることをどんどん売り込んでいくつもりです。

樹脂射出発泡成形技術による自動車外装パーツ

世の中を驚かせる技術を次々生み出していきたい

最後に、今後、技術者として挑戦していきたいことについてお聞かせください。

中野:もともと、当社では“三本柱”をつくることを目標に研究・開発を進めてきました。そしてまず、従来のスチール製と比べて軽量で、自由な造形が可能な「樹脂バックドアモジュール」を生産しています。こちらも多くのメーカーさまから評価をいただいて、主力製品のひとつになっています。次に、今回お話した「外装軽量化発泡」の実用化に成功しました。今後さらに技術を掘り下げて、シェアを拡大していきたいと思います。

いま次の3本目の柱として、世間を驚かせるような技術を磨いているところです。間もなく発表できると思いますので、ぜひご期待ください。3本目が完成しても、それに満足せず、4本目、5本目……とどんどん新しい技術の開発にチャレンジしていきます。「自動車外装部品といえばレゾナック」と認められるようになることが目標です。

三石:私はとにかく新しい技術、世の中を驚かせる技術を開発したいと思っています。外装軽量化発泡技術にヘリウムを組み合わせれば、浮力で浮かび上がる車がいつかつくれるんじゃないかと、夢みたいなことを考えたりもしています(笑)。

やっぱり、技術者として一番うれしいのは、自分が興味を持ったこと、面白いなと思ったことの研究に打ち込めることです。その環境が、ここにはあります。夢みたいなことを言っても「面白そうじゃん」と言って、聞いてくれる仲間たちが本当に心強いですね。自動車の軽量化は永遠のテーマなので、この素晴らしい仲間たちと一緒に、今後もそれに貢献できる技術を次々生み出していきたい。日本の自動車産業を支える縁の下の力持ちとして、これからも頑張っていきます。

中野真吾

株式会社レゾナック・オートモーティブプロダクツ 九州事業所 設計部

自動車メーカーで設計業務を経たのち、日立化成オートモーティブプロダクツ入社(当時)。
自動車内外装部品の技術開発・設計の経験を経て、現在に至る。

三石直子

株式会社レゾナック・オートモーティブプロダクツ 九州事業所 設計部

日立化成オートモーティブプロダクツ入社(当時)。
自動車内外装部品・一般成形品の設計・生産準備の経験を経て、現在に至る。

関連リンク

レゾナックの自動車部品に関する技術をご紹介します。

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