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汚れ除去のメカニズムを刷新!生産性を向上する金型洗浄とは
開発のきっかけ
樹脂成形の金型に上下で挟みこみ、金型に付着した樹脂汚れを接着・除去するシート、それが当社の提供する「金型クリーニングシート」だ。金型を清潔に保つことにより、成形品の品質向上に役立てられている。
この「金型クリーニングシート」は現在、半導体パッケージ用の封止材を成形する金型の洗浄用途で、広くご採用いただいている。
半導体パッケージ用封止材を供給する当社は、取引先であった半導体メーカー様から「金型汚れがひどくなっている。洗浄工程に2~4時間も要して、生産性が低下している」との相談を受けた。これが、金型クリーニングシートの開発をスタートさせるきっかけとなった。
技術の壁
半導体パッケージ用金型のクリーニングシートの開発は、半導体の進化に並走するように進んだ。半導体の進化に伴い、封止材も配合変更され、性能を高めている。この封止材の配合変更に伴い、金型に付着する汚れが変化し、金型クリーニングシートも高機能化を求められたのである。
半導体メーカー様から、ご相談をいただいたのは半導体パッケージの大型化がトレンドになっていたとき。パッケージの大型化に伴い、半導体に加わる応力を軽減するため、応力緩和材を配合した封止材が開発され、使用されていた。この応力緩和材が金型への汚れ付着の要因となっていたのである。また時代を経て、半導体パッケージの小型化・薄型化が進むとそれに対応すべく封止材の配合変更を繰り返したため、いままでの金型クリーニングシートで解決していた金型汚れの問題は再発、さらに金型汚れはひどくなった。
これら半導体と封止材の進化に伴う、金型汚れの変化に対し、当社は、樹脂設計技術で製品を開発、課題を解決してきた。開発チームは、洗浄性はもちろん、材料の環境安全性の確保、そして不純物を除去することに最も配慮した。汚れの除去に有効とされるアミノ基を含む化学物質を取り寄せ、汚れに見立てた樹脂を金型に焼き付け、洗浄の有効性を調査し続けた。加熱時に強いにおいがしないか、など使い勝手の点にも留意しながら、洗浄性の高さを図っていく。実に200以上の物質の配合実験を繰り返し、ようやく開発のもととなる洗浄成分「イミダゾール」にたどり着いた。以降当社ではこれをベースとし、さまざまな汚れに適合する数種類の金型クリーニングシートの開発をおこなった。
ところが、新たにハロゲンフリーの環境対応封止材が登場すると、状況は一変する。この環境対応封止材の金型汚れには、これまで実績を積み重ねてきたイミダゾールが有効でないことがわかったのだ。再び、ゼロから新たな洗浄材料の開発をスタートすることとなった。
当社ならではの技術
ハロゲンフリー封止材による頑強な汚れと対峙するなかで、開発チームは、いくつもの“トレードオフ”に苦慮することになる。これまで当社の金型クリーニングシートは、汚れと洗浄成分を反応させて、強力な接着力をもって除去することで、汚れを落としていた。当然、ハロゲンフリー封止材の汚れに対しても、金型クリーニングシートの汚れを除去する接着力を上げる必要がある。しかし、汚れへの接着力をいかに上げても、金型クリーニングシートのゴムの強度が耐えられなければ、シート自体が金型に接着してしまい破断。結果として汚れを落とすことができない。ゴムの強度には限界があり、汚れへの接着力とゴムの離型性は両立できず、従来の方法では目下の課題である汚れに対応できないという判断となった。
そこで開発チームは“汚れ落としのメカニズム”を全く異なるものに転換した。従来の金型クリーニングシートは汚れを強力に接着・除去していたのに対し、新たな金型クリーニングシートは、加熱硬化したシートから染み出た溶剤を汚れに浸透・膨潤させて汚れを溶かし、接着・除去する手法を採用した。
そこで有効だと考えられたのが、溶剤を使うことで金型表面の汚れの層を通過し、金型界面を直接アタックするという洗浄法だ。汚れに浸透させる溶剤の選定についても実験と検証を繰り返した。
まず、溶剤の沸点だ。低沸点の溶剤は瞬時に揮発してしまうため、洗浄には効果が足りず、また安全面でも不安が残る。そのため高沸点の溶剤を使って、少しでも長い洗浄時間を取って効果を上げるべきという結論に至った。さらに、金型の界面まで確実にリーチし、汚れの被膜を突き破るべく、アルカリ成分を加えるという選択をした。アルカリ成分による加水分解が行われることで、汚れも充分に落とすことが可能となった。
こうして、ひとつの新発想と数多くの実験よって、新たな金型クリーニングシートは完成した。この新製品は、従来の5回以上必要としていた洗浄作業も削減し、作業効率を大きく向上させることができる。取引先メーカー様にもその洗浄力を認められ、この新たな金型クリーニングシートへの切り替えが次々となされている。
今後の展開
当初、半導体パッケージの金型を洗浄する目的で開発された金型クリーニングシートは、今後はそれ以外の幅広い業界の金型洗浄にも活用できると考えている。
あるウォーキングシューズを生産するメーカー様では、靴底を金型プレスで成形している。現状、金型はドライアイスブラストで洗浄しているという。しかし、凹凸の深い部分にはドライアイスの粒子が届かず、溶剤を使い、手作業でブラッシングする必要がある。煩雑な洗浄工程に悩んでいたところに当社の金型クリーニングシートをご提案したところ、「金型をおろさず、短時間で確実にクリーニングできる」と喜んでいただくことができた。
金型クリーニングシートの開発を手掛けるエンジニアは語る。
「半導体に限らず、金型を扱う多くの業界で、時代とともに変化する金型汚れに関して課題を持っているお客さまは多いと考えています。金型をきれいにして不良をなくしたい、生産性を上げたい、などの課題にマッチした技術を提供し、常に解決への的確な手助けをしたいという思いで開発に臨んでいます」
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