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対象業種OEM、Tier1、Tier2で、車載パワーモジュール・インバータ設計・製造メーカ
用途想定SiCチップのダイボンド材、パッケージと冷却器の接合材料
xEVでは、航続距離の伸長や燃費・電費向上のため、高効率なSiCパワーモジュールの普及が進んでいます。パワーモジュールは、複数のパワー半導体チップを基板に搭載したパッケージに冷却器を接合して構成されます。
SiCは高効率であることに加えて、ジャンクション温度を高く設計できるため、パワーモジュールの高出力化や小型化にも有利です。ただし、その利点を活かすには、ダイボンド材や接合材料を含めた構成部材にも、高耐熱、高放熱かつ高信頼性が要求されます。
現在SiCのダイボンドには、従来の高鉛はんだに替わり、耐熱性と放熱性を両立する焼結銀ペースト(以下焼結銀と呼ぶ)による接合が用いられています。しかし、モジュールのさらなる高出力化や小型化を目指す上で、信頼性に対する懸念がありました。
当社は、耐熱性、放熱性に加え信頼性にも優れた接合材料として、焼結銅接合ペースト(以下焼結銅と呼ぶ)を提案します。焼結銅による接合では、焼結銀と同等の放熱性を維持しつつ、SiCパワーモジュールの信頼性を向上させることができます。また、冷却器との接合に適した大面積用の焼結銅ペーストも開発しており、併せてご紹介いたします。
焼結銅ペーストの外観
焼結銀をダイボンド材として使用する場合、その主成分である銀が軟らかく変形しやすいため、応力歪みによる疲労が溜まりやすい傾向があります。パワーサイクル試験では、半導体チップや絶縁基板と接合材料の熱膨張係数の差により、ON/OFFの繰り返しを経るごとにダイボンド部位に応力が蓄積されるので、柔らかい焼結銀だと疲労破壊に至る恐れがあります。
一方、銅は、銀と比べて弾性率や降伏応力が高く熱膨張係数が小さいことが知られています。当社が提案する焼結銅による接合なら、焼結銀よりも熱歪み量が少なく、弾性変形範囲に熱歪みが収まるため疲労破壊が生じにくく、高い信頼性が期待できます。
パッケージと冷却器の接合材料として使用する場合、従来材の高鉛はんだは、熱伝導率が低く放熱のボトルネックになっていました。また焼結銀ではダイボンド部位よりも大面積への適用はさらに歪みが大きくなることから、信頼性に懸念が残ります。そこで、当社は大面積接合に適した高信頼性の焼結銅接合ペースト(開発品)を提案します。現行の焼結銀よりも低圧力で熱圧着ができます。
当社の焼結銅接合ペーストは、焼結銀と同等の熱伝導率を示し信頼性を向上させ、SiCパワージュールの高出力化と小型化に貢献します。
Tj ,max=175℃でのパワーサイクル試験において、特性寿命は高鉛はんだの約40倍、焼結銀の約5倍との結果が得られました。
また、温度サイクル試験でも焼結銀を上回る結果を得ています。詳細はお問合せください。また、接合の熱圧着条件等は技術資料をご参照ください。
焼結銅と高鉛はんだで接合材料を比較したサンプルの温度分布図をご覧ください。焼結銅による接合は、焼結銀と同等の熱伝導率300W/(m・K)を有するため、SiCからの発熱を拡散し、局所的な温度上昇を抑制できています。一方で、熱伝導率30W/(m・K)の高鉛はんだによる接合では、ダイボンド部位が放熱のボトルネックになっています。
(a) 焼結銅による接合
チップから基板に熱が拡散し、局所的な温度上昇を抑制できる。
(b) 高鉛はんだによる接合
熱が拡散せず、局所的に高温となる。
(材料物性以外の設定事項)
電力、環境温度:各サンプルの測定値、空気特性:常圧30 ℃の空気(各物理量は一定値)、密度:1.161 kg/m3、熱伝導率:2.610 × 10-2 W/(m・K)、分子粘性係数:1.840 × 10-5 N・s/m2、熱膨張率:3.333 × 10-3 K-1、伝導・輻射・自然対流による伝熱、浮力、乱流を考慮
ダイボンド用と大面積接合用(開発品)の2種類を提案します。接続部位に合わせたペースト設計となるよう開発しています。ダイボンド用の接続は5mm~13mm角、大面積接合用は30~50mm角を想定しています。特に大面積接合の場合、焼結銅の方が低圧力で熱圧着できるため総荷重を減らせるとともに、焼結銀よりも高い信頼性が期待できます。
更新日:2023年12月13日
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