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対象業種OEM、Tier1、バッテリメーカー
用途想定EVの冷媒配管の断熱、保温、余熱の有効活用
電気自動車(EV)の省エネは、航続距離だけでなくサスティナビリティの観点からも重視されており、EV全体での熱マネジメントが着目されています。EVでは、モーター、インバーター、バッテリなど熱源の温度をコントロールするための放熱に加えて、発生した熱を車内暖房などに有効活用するためにEV全体の断熱が課題になっており、実際に冬季にEVは車内暖房のため航続距離が短くなることも指摘されています。そのため熱源を冷却する冷媒の配管にも、意図しない放熱によるエネルギーロスを防ぐために断熱性が求められるようになってきました。
従来から配管の断熱材として知られているブランケットは、狭い空間に設置することが難しいことと、吸湿による腐食が課題でした。一方、中空粒子などを樹脂に充填した従来の断熱塗料は、熱伝導率が高くて断熱性が不十分な上に、1回の塗布で形成できる膜が薄いため膜厚(熱抵抗)を稼ぐには塗布回数を増やす必要があり、既存方式に代わる断熱対策として満足できるものではありませんでした。
当社は断熱性がよく、塗布あたり乾燥膜厚の厚い塗布式断熱材を提案します。当社開発品は、熱伝導率が0.03 W/(m・K)と低く、塗布あたり乾燥膜厚が最大2 mmと厚いので、1回の塗布で従来品を上回る断熱性能を示します。狭い空間にも塗布可能で、撥水性が高いので腐食耐性にも優れます。
EVの熱マネジメントと省エネ対策
従来の断熱塗料は、断熱材の空孔サイズが大きく、空孔内の対流が熱の移動に寄与するため、熱伝導率は0.05~0.10 W/(m・K)が限界でした。また、空孔を有する低密度の断熱素材を樹脂に高分散・高充填すると塗膜が割れやすく、加えて液垂れの問題があり塗布あたり乾燥膜厚は最大0.5~1.0 mmに留まっていました。
当社開発の塗布式断熱材は、多孔構造の空孔サイズがナノオーダー(ave.20 nm)と空気の平均自由行程(67 nm)より小さい上に、空孔率が大きく(80~90%)固体密度が低いことから、熱伝導率0.03 W/(m・K)を達成できました。 また、当社開発品は構成成分どうしの相互作用により非ニュートン性(せん断速度が上がると粘度が下がり、せん断速度が下がると上がる)を示して液垂れしにくいため、塗布あたり乾燥膜厚は最大2 mmを達成しています。
そのため、当社開発品は1回の塗布で従来品を上回る断熱性能を示します。また当社品の断熱塗膜は疎水性成分を高充填しているので撥水性が高く、腐食耐性にも優れています。さらに、有機成分とのハイブリッド化により力を加えても塗膜が割れにくく、柔軟性を備えています。
冷媒配管へ当社開発の塗布式断熱材を施工した例
当社開発品は、厚膜形成可能であり、断熱性と撥水性に優れています。
従来の断熱塗料として市販塗料Aと市販塗料Bを、またその他従来品として市販シートCを取り上げ、1回施工(塗布またはシート接着)あたりの熱抵抗を計算するとともに、塗膜の水に対する接触角を測定して比較しました。
下表のとおり、当社開発品は従来品と比較して、1回施工あたりの熱抵抗が高く、かつ接触角が大きいことが分かりました。当社品が断熱性能と撥水性に優れていることを表しています。
下図のとおり、当社試験・条件によれば、150℃の熱源に対して当社開発品を2 mm塗布すると表面温度を51℃低下させる結果が得られました。他社品(市販塗料A)の表面温度低下は36℃でした。さらに100℃の熱源に対して当社開発品を2 mm塗布すると表面温度を30℃低下させる結果が得られました。他社品の表面温度低下は21℃でした。
当社試算によれば、熱源温度100℃・外気温度25℃の条件で膜厚2 mmの断熱塗料を用いた場合、断熱施工なしに対する省エネ効果は、従来品で21~28%に対して、当社開発品では40%という結果が得られました。
公開日:2023年7月4日
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