ACF(異方導電フィルム・異方性導電膜)とは?用途、使い方、種類と剥離対策を徹底解説

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ACF(異方導電フィルム・異方性導電膜)とは

ACFとは「Anisotropic Conducting Film」の頭文字をとった略称で、日本語では「異方導電フィルム」或いは「異方性導電膜」と呼ばれています。「異方導電膜」、「異方性導電フィルム」、「異方導電接着フィルム」或いは「Anisotropic Conducting Adhesive Film」と呼ばれることもあります。ACFは、熱硬化性のエポキシ樹脂などの樹脂に導電粒子を分散させたフィルムであり、フィルムを熱圧着すると圧着部において圧着方向すなわち上下方向に対しては導電性を有し、圧着方向とは垂直の方向すなわち面方向に対しては絶縁性を有するという「電気的異方性」を示すようになるため、この意味をとって「Anisotropic Conducting Film(異方導電フィルム・異方性導電膜)」と名付けられました。
ACFは、スマホ、タブレット、PC、TVなどフラットパネルディスプレイのあるほぼ全てのデバイスにおいて、液晶やOLEDを用いたディスプレイのガラス基板上の電極とICチップの電極、或いはフレキシブル基板回路の電極などとを電気的に接続し物理的に固定するために使われています。
このフィルムのサイズは膜厚10~45μm、幅は0.4~20mm程度です。上記のような電極同士を接続したいときに、電極同士の間にACFを挟んで熱圧着することによって、圧着方向の電極間では導電粒子が押しつぶされて接触し導電パスを形成する一方で、押しつぶされなかった粒子は樹脂中に分散したままなので、平面方向では隣接する電極とは絶縁性が保たれた状態を作り出すことができ、さらにこの状態のまま樹脂が熱硬化することによって物理的にも電極同士を接着・固定・封止することができます。
ACFによる接続(以下ACF接続と呼ぶことにします)の特長は、はんだ付けやコネクタ接続に比べて、小さいサイズで、背が低く(厚みを薄く)、平坦に、かつ狭いピッチで接続できることです。また、一度に多数の電極を接続できることや、100℃~240℃程度の低温で、かつ4秒~60秒の短時間で接続できることにも大きなメリットがあります。

ACFとは

使用前のACFの構造

熱圧着後のACFが示す電気的異方性

熱圧着プロセスによるACF接続

熱圧着プロセスによるACF接続

 

ACF接続の特長

ACFの用途

液晶ディスプレイや0LEDディスプレイでの用途

スマホ、タブレット、PC、TVなどのフラットパネルディスプレイでは、液晶やOLEDをセル毎に駆動させるための透明電極がガラス基板上にパターニングされており、この透明電極と駆動用のドライバーICとを電気的に接続する必要があります。このとき、透明電極として使われているITOは、はんだと共晶をつくらないため、はんだ接続は使えません。また液晶のセルの数に対応する多数の電極を画面サイズ内に配置する必要があるため、平面方向で隣接する電極同士が短絡しないように隣接電極との距離=接続ピッチに関する制約があります。ディスプレイが高精細になるほど、またその一方で小型化するほど、要求される接続ピッチ分解能は狭くなります。
当社の前身である日立化成は、1984年世界に先駆けて小型液晶TVにおいてACF接続を実用化しました。それまでカーボンファイバーを導電粒子に用いたフィルムは知られていましたが、対応可能な接続ピッチ分解能は500μm以上であり1)、当時液晶TVに要求されたピッチでは使えませんでした。当社は導電粒子として金属粒子を用い、粒子の分散量や分散状態を調節することによって液晶TVの要求に応えました2)
その後当社はさらにACFの改良を進め、導電粒子の改良や樹脂の材料開発、分散技術の向上などによって1992年には接続ピッチを100μm以下にすることに成功し、さらに2016年に発表した「粒子超分散配置型異方導電フィルム(Particle-Aligned Anisotropic Conductive Film、以下、PAL-ACF)」3)というフィルム内で導電粒子を均一に配置させる粒子分散技術などを駆使して、現在では当社製ACF「ANISOLM」は接続ピッチ20μmを達成しています。
このようにACFは、ピッチ分解能の改善によって液晶ディスプレイやOLEDディスプレイの高精細化にも小型化にも対応してきており、またACF接続後の背が低いことからディスプレイの薄型化にも貢献してきました。
ディスプレイの用途には、ACFの、小さいサイズで、背が低く、平坦に、かつ狭いピッチで、一度に多数の電極を接続できるという特長が活かされています。当社製ACF「ANISOLM」は、幅0.4mmという当分野における最小サイズを実現しています。

 

液晶ディスプレイやOLEDディスプレイでの用途

大型ディスプレイ

中小型ディスプレイ

ディスプレイ用途におけるACF接続の種類

透明電極とドライバーIC(チップ)の電極(金バンプ)の接続の仕方として、ガラス基板の透明電極の上にACFを挟んでチップを載せて双方の電極をACFで直接接続する方法の他に、フレキシブルプリント基板にドライバーICを実装したフレキシブルプリント回路基板(FPC;Flexible printed circuits)とガラス基板上の透明電極とを接続する方法などが知られています。
大型ディスプレイの場合などでは後者が一般的であり、中型、小型ディスプレイでは、前者、後者ともに用いられます。前者の接続をCOG;Chip on Glassと呼びます。COGタイプのACF接続のことを、ICチップをガラス基板に実装すると言うこともあります。また、狭額縁タイプのディスプレイやベゼルレスタイプのスマホなどでは後者が採用されており、透明電極とFPCのACF接続をFOG;Flex on Glass、Film on Glass、またはFPC on Glassなどと呼び、FPCとICチップのACF接続をCOF;Chip on Flexと呼びます。COFタイプのACF接続を、ICチップをFPCに実装すると言うこともあります。
また用途はディスプレイに限りませんが、FPCとプリント回路基板(PCB;Printed circuit board)を接続するFOB;Flex on Board、FPCとFPCを接続するFOF;Flex on Flex、或いはFPCとプラスチック基板(PET、COP、CPIなど)を接続するFOP;Flex on PlasticなどにもACF接続がよく使われています。
当社ACF「ANISOLM」は、これらの接続の仕方に合わせた様々なタイプのグレードを取り揃えておりますので、「お問合せボタン」からお気軽にお問合せください。

ACF接続の種類

 

 

タッチセンサーでの用途

スマホやタブレットなどではディスプレイの上或いはディスプレイと一緒にタッチセンサーが取り付けられています。手が触れたときの静電容量の変化を検知するため、透明フィルム基板またはガラス基板に透明電極がパターニングされており、周辺部では透明電極からAgペースト等で電極の配線を取り廻す場合もありますが、ディスプレイと同様にこれらの電極とセンシングのためのドライバーICとの接続をとるためにACFが使われます。
特にアウトセルタイプで狭額縁の場合は、透明フィルム基板上の透明電極または周辺部のAgペースト配線電極や銅配線電極とFPCとをACF接続する(FOP)ことが一般的です。
タッチセンサーの用途には、ディスプレイと同様に、小さいサイズで、背が低く、平坦に、かつ狭いピッチで、一度に多数の電極を接続できるという特長が活かされています。

 

タッチセンサーでの用途

半導体デバイスの接続用途

ディスプレイやタッチセンサーのドライバーIC以外にもACF実装される半導体デバイスがあります。
スマホやデジカメのカメラモジュールに使われているCMOS(相補性金属酸化膜半導体)やCCD(固体撮像素子)は高温に弱いため、低温で接続可能なACF実装が使われています。またマイクロLEDは多数のチップを一度に実装する必要があるためACF実装が検討されています。さらに、半導体パッケージや電子部品やFPCなどをプリント基板に載せる半導体の2次実装の分野においても、低温実装可能なACF接続が活躍する場面が増えています。
半導体デバイスの接続用途は、100℃〜240℃程度の低温で接続できることや、一度に多数の電極を接続できるといった特長が活かされる場面で活用されています。
今後のトレンドとして、ヘテロ化、マルチチップ化、モジュール化が進む半導体デバイス実装の世界では、先のCMOSと同様に、MEMSセンサー、バイオセンサーなど高温に弱いデバイスが同じパッケージ内に実装されている場合がありますので、ACF接続の出番が増えてくるものと思われます。またウェアラブルデバイスなどで半導体デバイスがフレキシブルフィルム基板に実装される場合にもACF接続が有力な候補となるでしょう。
またACF接続は、はんだやコネクタ接続と比較して、電気的に接続している電極間の距離が短いことから、電気抵抗も熱抵抗もともに小さくなるため、高周波通信での低導体損失化・低伝送損失化や、熱マネジメントにおける排熱・チップのジャンクション温度の低温化にも有利と言えます。

 

半導体デバイスの接続用途

CMOS

マイクロLED

半導体の2次実装

ACFの使い方

ACFの使い方を解説します。例としてICチップをガラス基板(COG)やFPC(COF)に実装する場合を取り上げます。FOGの場合も同様です。まず表面を洗浄した実装基板にACFを貼り付けて、セパレーターフィルム(PET)がついたまま熱と圧力を加えます(図1;ラミネート)。その後、セパレーターフィルムを剥離します(図2)。さらに、接続したいICチップの電極の位置を正確に合わせるアラインメント作業を行ないます(図3)。その後、再び加熱圧着して接合・接続します(図4;熱圧着)。
ラミネート前の注意点は、接合面となる実装基板の表面の洗浄です。特にガラス基板の場合は、アルコール・有機溶剤での洗浄、プラズマ洗浄やUV洗浄を用いて清浄度を保ちます。
熱圧着にはコンスタントヒート方式とパルスヒート方式があります。前者はヒーターヘッドを指定温度で常時加熱し続ける方式であり、後者はACFを熱圧着する時だけ加熱する方式です。後者の場合、ヒーターヘッド温度を常時モニターし、接着時の温度低下を検出したら直ちに指定の温度に戻す操作を行っています。熱圧着の注意点は、ヒーターヘッドの温度管理、ヒーターヘッドとガラス基板の平行維持、接合後の導電粒子形状、抵抗値、接着力の確認などです。
ACFの使い方で最も大事な注意点は、最適なACFを選択することです。接合・接続したい双方の電極の、基板材料、電極材料、電極サイズ(厚さ、幅、長さ)、ピッチ、加熱可能な最大温度によって、ACFの樹脂や導電粒子の最適な組み合わせを選択する必要があります。また最大温度はチップや基材の熱耐性を考慮する必要があります。
当社ACF「ANISOLM」は、後ほど「4.ACFの種類」で詳述する通り様々なタイプのACFを取り揃えています。当社は1984年の液晶TVへの採用以来、実用可能なACFをお客様に送り届けるとともに、ACFのさらなる改良を進めて参りました。その知見・経験から、お客様の接合・接続のご希望に合わせて、様々なタイプのACFの中から最適なACFをご提案いたします。また熱圧着の温度や時間など各種の条件設定についてもご相談させていただきますので、「お問合せボタン」からお気軽にお問合せください。

 

ACFの使い方

図1;ACFラミネート

図2;セパレーター剥離

図3;電極アラインメント

 

図4;熱圧着

ACFの種類

熱硬化性樹脂を用いたACF

現在使用されているACFのほとんどが熱硬化性樹脂を用いたものです。この後紹介する熱可塑性樹脂に比べて、導電パスの電気抵抗、接着力、隣接電極との絶縁性、およびこれらの信頼性において、熱硬化性樹脂の方が優れています。ただし温度が高くなると熱硬化反応が始まるために、保管には冷蔵保管が必要です。
当社ACF「ANISOLM」は熱硬化性樹脂を用いたACFを各種取り揃えています。熱硬化性樹脂としてアクリル系樹脂、カチオン・エポキシ系樹脂、アニオン・エポキシ系樹脂などを有しており、お客様の要求する熱圧着温度や接着力のニーズにお応えします。

熱可塑性樹脂を用いたACF

当社ACF「ANISOLM」にはラインアップしておりませんが、熱可塑性樹脂を用いたACFも非接触ICカード(スマートカード)の回路接続部向けなど一部の用途で使われています。冷蔵保管が不要であること、熱硬化のように高温で保持する時間が不要なことなどの特長がありますが、熱硬化樹脂を用いたACFと比べると信頼性が悪く用途が限られています。

様々なタイプの導電粒子を用いたACF

前述の通り、当社が1984年、世界に先駆けて小型液晶TVにおいてACF接続を実用化した際に用いていた導電粒子は金属粒子でした。当社はその後、粒子技術、樹脂技術および分散技術を駆使して、お客様の要求条件と物性を合わせ込むべくACFの改良を進めてきました。
導電粒子としては、例えば、真球状の樹脂にNiをコートしたものを開発し量産化しています。その粒子の直径としては3~20μmのグレードを取り揃えており、各々のグレードの中で直径の均一性を確保することが技術的なポイントとなっています。お客様の要求する、接続の背の高さ、平坦性、接続ピッチのニーズにお応えします。
またAuやPdなど貴金属をメッキした導電粒子もあり、接続する導電パスの低抵抗化、高信頼性といったお客様の要求にお応えします。
当社ACF「ANISOLM」が保有する樹脂や導電性粒子につきましては、下記の表をご参照ください。
お客様の接合・接続のご希望や、熱圧着など各種プロセスの条件設定に合わせた最適なACFをご提案いたしますので、「お問合せボタン」からお気軽にお問合せください。

様々なタイプの導電粒子を用いたACF

 

ACFの剥離問題を解決する「ANISOLM」

ACF接続の信頼性を確保するには、剥離によって接続がオープンにならないように強力な接着力が必要です。また基板表面の洗浄が不十分で汚染がある場合は、剥離の恐れが高まりますのでその対策も必要です。一方で、例えば産業用のカメラモジュールで使われるような高価な基材にACF接続する場合は、接続ミスの際に容易にリワークできるよう適切な剥離性が求められる場合もあります。
当社ACF「ANISOLM」は、お客様の接合・接続のご希望に合わせた最適なACFをご提案すべく、様々なタイプのグレードを取り揃えております。その一例として上記剥離問題を解決するグレードをご紹介します。具体的なグレード名については「お問合せボタン」からお気軽にお問合せください。

接着力が強いタイプ

剥離モードが、外力により部材の端から剥がれるような、一般的な剥離の場合には、接着力の強力なアクリル系樹脂を用いたグレードが最適です。当社ACF「ANISOLM」は接着力の強力なアクリル系樹脂を用いたグレードを取り揃えておりますので、特にFOG、FOB、FOF、FOPなどFPCとのACF接続に定評があります。

汚染に強いタイプ

表面汚染やコンタミに強いタイプとしては、アニオン・エポキシ系樹脂を用いたグレードをお奨めします。表面洗浄の厳密さや汚染防止対策が若干不足していても、十分な接着力を示しますのでハンドリングが容易です。

リワークに適したタイプ

接着力の強力なアクリル樹脂を用いたグレードも、汚染に強いタイプのエポキシ系樹脂を用いたものグレードも、有機溶剤等を適切に選択することにより、リワークのための剥離・除去条件を見出すことができます。リワーク・プロセスの例については下図をご参照ください。

リワーク・プロセスの例

 

技術資料ダウンロード

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資料では、ACFの用途例や使い方をご覧になれます。

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