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対象業種パワー半導体パッケージ・モジュールメーカー、パワー半導体デバイスメーカー
用途想定パワー半導体パッケージ・モジュールの樹脂封止
大電流・高電圧を扱うパワー半導体は、省エネ性能が優れているので、家電、電気自動車、産業機器、電車、太陽電池、通信基地局などで活躍の場が広がっています。しかし、高出力と小型化の要求に対応してパワー半導体の動作温度(Tj:ジャンクション温度)が高温になると、パワーサイクル試験(デバイスのON/OFFによる局所的な加熱)や温度サイクル試験(パッケージ全体への加熱/冷却)など信頼性試験のクリアが難しくなっていました。
従来からパワー半導体パッケージの封止材として使われてきたシリコーン樹脂は、柔らかくてチップなどの部材に対する拘束力がありません。そのため高Tjでのパワーサイクル試験では、膨張収縮するチップやワイヤを抑え込むことができずNGとなっていました。
当社は高Tg(ガラス転移温度)のエポキシ系耐熱封止材<CEL-400>シリーズを提案します。当社品は、硬くて部材を拘束し膨張収縮を抑えるので、パワーサイクル試験の結果を改善します。また一般にエポキシ樹脂において、高Tgとトレードオフと考えられていた密着性や応力緩和ともバランスをとっていますので、温度サイクル試験における剥離の問題も改善します。
パワー半導体パッケージに使われるエポキシ系封止材
パワー半導体パッケージ各部材の熱膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)は下図の通りで、特にワイヤ(Au、Cu)とチップ(Si)のCTE差が大きく、Tjの上昇とともに熱膨張差が大きくなります。柔らかいシリコーン樹脂封止材ではチップやワイヤを拘束できず、高温のパワーサイクル試験では両者の伸び縮みの差から発生する応力の接続部への集中を抑えられないため、ワイヤのリフトオフや断線が発生していました。
エポキシ樹脂は、Tg以下では硬いので部材を拘束し、ワイヤのリフトオフや断線を防いでパワーサイクル試験を改善します。Tg以上では樹脂が柔らかくなるため、Tg≧Tjの封止材を選ぶ必要があります。また高Tgにすると高温域でのCTEのミスマッチを減らす効果も出ます。その一方で、エポキシ樹脂を高Tg化するには樹脂骨格を剛直化する必要がありますが、そうすると骨格が硬く動きにくくなることで、高温で分解しやすくなったり、密着性が悪くなったり、内部応力が大きくなるといったトレードオフの関係があり、そのため発生する剥離によって今度は温度サイクル試験がNGとなる問題がありました。
当社の高Tgエポキシ系耐熱封止材<CEL-400>シリーズは、Tg(TMA)=175~190℃でありかつ分解抑制、剥離防止、および応力緩和を並立しています。エポキシと硬化剤であるフェノ―ルの最適配合、密着付与剤添加、および低応力化材の配合のバランスをとることにより、温度サイクル試験での剥離を改善します。エポキシ樹脂系封止材は、骨格樹脂の配合、各種添加剤、或いはフィラーの組合せを変えると、他の様々な特性が影響を受けますので、当社はお客様の信頼性要求に対応して、高Tgと分解抑制、密着性および応力緩和の調整に加えて他の物性とのバランスも取りながら、最適設計の封止材を提案します。
パワー半導体パッケージ各部材の熱膨張係数CTE
高Tgのエポキシ樹脂は高温域でのCTE差を抑えられますが、高Tgのものほど樹脂骨格が剛直で分子鎖が動きにくくなるため、高温で分子鎖の結合に応力がかかって切れやすい傾向があります。
グラフ① 「重量減@250℃」は、エポキシと硬化剤であるフェノールの種類を変えてTgを振った様々なエポキシ系封止材を高温放置した時の重量変化です。重量減少は樹脂の分解を示しており、分解が進むと樹脂の脆化、クラックや剥離にも繋がります。一般に高Tgと分解抑制の間にはトレードオフの関係があり、グラフ② 「Tg vs 重量減」がこのトレードオフを示しています。
当社の<CEL-400>シリーズは、エポキシとフェノールを最適に選定し最適に配合することにより、高Tgと分解抑制のバランスを取りました。グラフ② 「Tg vs 重量減」のうち緑と青が従来のエポキシ系封止材、赤が<CEL-400>シリーズです。<CEL-400>シリーズにもトレードオフはありますが、そのトレードオフ関係を高Tg側に引き上げました。
グラフ① 重量減@250℃
グラフ② Tg vs 重量減
高Tgとトレードオフになる特性の2つ目は密着性です。高Tgのエポキシ樹脂は、分子鎖が動きにくいことによって、被着面に対して柔軟に配向できず、また官能基が表面に出づらいので接着力が低くなります。接着力が弱いと、温度サイクル試験において熱膨張差の大きい部材間での剥離の原因となります。
下図は様々な被着面に対する接着エネルギーをシミュレーションした結果です。当社<CEL-400>シリーズでは、密着付与剤の添加によって、接着エネルギーが高くなった結果が得られました。
密着付与剤
分子シミュレーション
高Tgとトレードオフになる特性の3つ目は応力緩和です。高Tgのエポキシ樹脂は、分子鎖が動きにくく高弾性率のため、熱膨張差によって応力がかかりやすくなり、剥離の原因となります。 当社<CEL-400>シリーズでは、下図のように低応力化材:S-シリコーンの配合量によって、弾性率を制御することができます。
その他当社は、Cuワイヤ対応のイオントラッパー、Cuワイヤ対応の密着付与剤、および硬化収縮抑制など、様々な物性を付加する加剤と配合技術を取り揃えています。当社はお客様の信頼性要求に対応して、各種物性・特性のバランスを取り、最適設計の封止材を提案します。詳細については技術資料をご参照いただくとともに、ご遠慮なくお問合せください。
S-シリコーンの配合比と弾性率
公開日:2024年03月06日
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