長期ビジョン

2022年1月、昭和電工と昭和電工マテリアルズは、両社の経営体制を一本化し、社長以下12名の両社共通の執行役員が両社のマネジメントを遂行する体制により実質的統合を実現しました。また、新マネジメント体制と新経営理念の始動に伴い2020年12月発表の長期ビジョンを更新し、2030年の目指す姿に向けて取り組みを進めています。
パーパス(存在意義)
化学の力で社会を変える
先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献する
目指す姿
長期ビジョンにて「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指す中で、質的な面、計数的な面それぞれを兼ね備えた「世界で戦える会社」、イノベーションと事業開発力で「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」、他企業からも注目されるような「国内の製造業を代表する共創型人材創出企業」を実現していきます。

主な戦略
長期ビジョンでは、「サステナビリティ」を全社戦略の根幹と位置づけました。「世界トップクラスの機能性化学メーカー」に向け「プラットフォーム」を確立させ、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を組み込んだ「グローバル水準の収益基盤の確立」「ポートフォリオ経営の高度化」「イノベーション」の各戦略を推進していきます。

財務・資本戦略
世界で戦える会社のエントリーチケットとしての規模と収益性
長期数値目標
当社は、「世界で戦う」ために、“質”と“計数”の両方が充実していることが不可欠であると考えます。質の面とは社会に貢献できること、特にサステナビリティから社会に貢献できることが重要です。他方、計数の面、すなわち一定の規模があり収益性を有する企業であることが、企業価値を最大化していく観点でも、あるいはタイムリーに投資をして収益を確保した上で社会に貢献していく観点からも重要です。
長期数値目標について、世界で戦える会社のエントリーチケットとして、売上高1.6兆円以上、EBITDAマージン20%以上という規模と収益性を追求し、計数目標をきちんと実現していくことで企業価値の最大化を実現していきたいと考えています。
- ※ 今後のM&Aなどを考慮しない場合の目安値
当社の戦略意図とポートフォリオ経営高度化への取り組みをより正確に示すため、2022年12月期より開示セグメントを変更しました。セグメント区分の変更により、半導体材料への集中投資に代表されるポートフォリオ属性に応じたメリハリある経営資源配分やポートフォリオの見直し・入替といった戦略の効果をより確認しやすい開示を目指していきます。

ポートフォリオ戦略に即した新たな開示セグメントへの変更
ROIC改善に向けた取り組み
重要とする業績評価指標(KPI)について、2020年12月に発表した長期ビジョンで示したKPIから、今般の計画更新に際し、規律を重視する観点からROEに代わり、ROICを重要な計数目標として導入しました。
事業本部および事業本部を構成するサブビジネスユニット別にROICを測定、そしてサブビジネスユニット別のROICの構成要素ごとにランキング化を行い、各事業トップに対するROIC経営の意識づけを推進します。そして、四半期ごとの定期的なモニタリングの実施や、ROICとマネジメントの評価・賞与との連動などさまざまな施策を通じてROIC経営を浸透させ、中長期的にROIC10%超の達成を目指し、ポートフォリオ経営の高度化に努めていきます。

グローバル化学メーカーの資産効率性・収益性
出典:各社開示資料などに基づき当社作成
ポートフォリオ経営の高度化
ポートフォリオカンパニーに最終形はありません。当社は事業ポートフォリオの見直し・入替を継続し、ポートフォリオ経営のさらなる高度化を図ります。ポートフォリオの運営方針として右記の3つを判断基準とします。①戦略適合性:サステナビリティを前提にポートフォリオ属性に応じて、当社全体戦略および各ビジネスユニットの役割に応じた戦略に合致するか、②ベストオーナー:各事業の価値最大化を実現する上で最適な経営主体は誰か、③採算性・資本効率:事業または投資が期待する採算性・資本効率を充足するか。これらを管理指標としてのROICを重視し企業価値の最大化を図ります。

ポートフォリオの運営方針
メリハリある経営資源配分
2021年の公募増資で得た資金を活用しながらコア成長事業である半導体材料、モビリティに経営資源を集中します。コア成長事業への集中的な経営資源配分により、全社利益成長を牽引、世界で戦える会社の収益性および資本効率を目指します。そしてコア成長事業を伸ばすことでコア成長事業が売上高に占める比率を高めます。全事業の画一的な成長ではなく、コア成長事業が全社利益成長をドライブします。その結果各事業のEBITDAマージンの加重平均である全社EBITDAマージンを高めていきます。

コア成長事業への経営資源配分と成長イメージ
ポートフォリオ改革進捗
当社は⻑期ビジョンにおいて事業価値ベースで2,000億円の事業売却⽬標を打ち出しました。その後、アルミ缶、アルミ圧延品、食品包装用ラップ、プリント配線板、蓄電デバイスの事業売却を発表するなど、速やかに意思決定を進め、これまでに8割程度まで進捗しています。持続的な成長を実現するための最適な経営資源の配分や事業ポートフォリオの再編、両社技術の融合を通じたイノベーションの創出に向けて取り組む中、売却した事業についてはそれぞれ慎重に検討し、それぞれの事業が保有する技術力、お客さまとの強固な関係性などの強みが最大限活かされ、さらなる発展に結びつくようなベストオーナーへと譲渡されました。
継続事業については、コア成長事業である半導体業界向けは高い市場成長が見込まれ、引き続き大型投資を要します。安定収益事業である石油化学、カーボン事業などで安定した利益を稼ぎ、全社としての投資資金を捻出していきます。
ポートフォリオマネジメントには終わりはなく、今後も持続的な成⻑・収益性向上のために、事業ポートフォリオの⼊れ替えは継続して検討していきます。
(昭和電工レポート<統合報告書>2022「戦略」より抜粋)