ディープラーニングを用いた画像解析を活用し材料検査の自動化を実現

2023年07月12日
株式会社レゾナック・ホールディングス

株式会社レゾナック(社長:髙橋 秀仁)は、近年目覚ましく進歩しているディープラーニング技術※1)と画像解析を材料検査に活用することで、製品の開発・検査の自動化の実現により、検査にかかる時間を大幅に短縮することに成功しました。例えば異方導電フィルムに使われるはんだ粒子の検査時間を1/140に、リチウムイオン二次電池の正負極用導電助剤に使われるグラファイト繊維では検査時間を1/3に短縮できます。

 

従来、はんだ粒子やグラファイト繊維などの検査工程では目視による検査が多く、多くの時間と工程がかかり、また各検査員で検査に要する時間が異なることが課題になっていました。一方で、ディープラーニング技術を使い検査工程を自動化するためには、膨大な学習用の画像やディープラーニング専門の技術者、強力なデータ処理能力を持つコンピュータなどが必要でした。
計算情報科学研究センターの画像解析専任チームは、(1)少ない画像でも学習・解析させることができる高度な画像解析技術の獲得、(2)検査に使うディープラーニング技術の絞り込み、(3)Webアプリケーションの導入といった独自の取り組みを行いました。さらに実際に運用する製造現場との密接なコミュニケーションにより、高品質な学習用の画像を準備することができました。これらにより、材料検査の自動化と検査時間の統一化を実現しました。


当社では精度の高い解析を実現するために、ディープラーニングの動作原理をふまえた上で従来の画像処理技術との組み合わせや、複数のディープラーニングのモデルを組み合わせるなどの独自の工夫を積み重ねております。
今後計算情報科学研究センターは、画像解析のノウハウを社内展開して技術者を増やすとともに、画像解析だけでなく大規模言語モデルを活用した社内向けWebアプリケーションなども開発していく予定です。

 

(1)少ない画像でも学習・解析させることができる「画像解析技術」
ディープラーニングでは数千枚規模の学習用の画像が必要になるが、1枚の画像から複数枚の画像を得る技術※2)や、別データの学習済みモデルを対象データでチューニングする転移学習により、数十枚程度の少ない学習用の画像でもディープラーニングを利用可能とした。


(2)検査に使う「ディープラーニング技術の絞り込み」
ディープラーニング専門の技術者を育成するには時間がかかるが、材料検査に用いる画像解析技術を特に重要な3項目(算出、測定、分類)に絞ることで、短期間での技術者育成を可能とした。


(3) Webアプリケーションの導入
高性能なクラウドサーバ上で動作するWebアプリケーションを提供することで、ユーザーは業務用モバイルPCから画像解析ができるようになった。また、クラウドの活用によりソフトウェア開発者側の保守・管理作業が容易となった。
 

撮影画像
撮影画像
解析例
解析例

はんだ粒子:撮影画像を解析し、画面内の粒子の数量、寸法、真円度などを自動測定

 

撮影画像
撮影画像

 

解析例
解析例

グラファイト繊維:撮影画像を解析し、各繊維を別々に識別することができている。
(繊維が重なった部分でも、同じ繊維だと誤認識していない)

 

 

※1 ディープラーニング:大量のデータからルールを自動で学習する技術。
※2 1枚の画像に左右反転や彩度などの調整を行うことで複数枚の画像を得る。

 

 

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