化学品管理の取り組み
製品の安全性・法規制情報の管理体制
当社は、化学品管理の基本インフラとして「化学物質総合管理システム」を整備し、化学物質の原材料や自社製品情報を管理しています。
本システムは、主に化学品管理に関連する化学物質の情報と各国の化学物質法規制情報のデータベース(DB)で構成され、それらの情報・データを活用し、実務を遂行するための機能を搭載しています。
個々の化学物質に対して、化学品管理部が有害性情報および法規制情報を広範に調査し、専門的に評価することにより、高い質を確保しています。
また、各国の化学物質法規制DBをタイムリーに更新し、収載する情報を定期的に見直すことで、最新情報を維持しています。さらに、社内基幹システムやSDS(安全データシート)管理DBと管理システムとの連携や相互補完関係も整備しています。
世界各国で化学物質に係る法規制の制定や改定の動きが加速している中、自社のコンプライアンスのみならず、お客さまのビジネスのサプライチェーンを構成する一員としての責任をしっかりと果たすため、今後も本システムの強化、拡充を図っていきます。
製品情報の収集とステークホルダーへの提供
当社では、化学物質総合管理システム収載の情報に基づき製品のSDSを作成しています。国内版および海外版のいずれのSDSにおいても、各国の法的要求事項の情報を収集し、各国法令に準拠したSDSを作成しており、社内の審査・決裁を経て、お客さまに提供しています。
2023年4月に施行された化学物質排出把握管理促進法(化管法)の政令改正に伴うSDSの改訂は、2022年末までに対応を完了しました。また、2022年2月および5月公布された労働安全衛生法(安衛法)の政省令改正に基づき、SDSの改訂などの対応を進め、情報伝達の強化を行っています。
また、プロダクトスチュワードシップ推進の一環として、当社において優先的に評価する化学物質(自社優先評価対象物質)を選定して順次リスク評価を行い、その結果をステークホルダーに公開する取り組みを積極的に実施しています。
2023年も、昨年に引き続きリスク評価に注力し、全社におけるリスク評価の向上に取り組みました。特に、自社優先評価対象物質については、21件のリスク評価を実施し、評価実施率100%を達成しました。その結果を記載した安全性要約書を作成し、(一社)日本化学工業協会(以下、日化協)が提供する化学物質リスク評価支援ポータルサイト「JCIA BIGDr(ビッグドクター)」に公開しました。これにより、当社は日化協より、その年に最も多くの新規安全性要約書*1を公開した企業に贈られるJIPS*2賞大賞を2021年度から3年連続で受賞しました。本取り組みによる社内外のリスクコミュニケーションの活性化と社内の貢献意欲向上が、今後のプロダクトスチュワードシップ推進の原動力となっています。
- ※1 安全性要約書: Safety Summary、自社で製造販売する化学品に関するリスク評価結果等をわかりやすい書式でまとめたもの。物質の概要や特性、用途、人や環境への影響、推奨するリスク管理措置、緊急連絡先等が記載されている。
- ※2 JIPS:Japan Initiative of Product Stewardship 、国際的な化学品管理戦略であるGPS(Global Product Strategy)の日本版。化学品の危険有害性を分類し、ラベルや安全シートを提供することで災害防止や人の健康、環境の保護に役立てる取り組み。
化学物質に関する国内外法規制対応
当社は、国内外の化学物質規制動向を常に注視し、各国法規制の順守を図るとともに、化学物質総合管理システムを活用し、製品、原料および化学物質に係るコンプライアンス確保に積極的に取り組んでいます。各国法で要求される製造/輸出数量管理などについては、本システム内の集計機能と基幹システムを連携させることで、信頼性、透明性の高い集計を行い、国内外の行政機関への報告に活用しています。グループ内では、本社と各事業場との連携を密にして課題や情報などを共有し、コンプライアンス違反の未然防止に努めています。
- 国内法規制:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)・労働安全衛生法(安衛法)・毒物及び劇物取締法(毒劇法)・化学物質排出把握管理促進法(化管法)などの法規制について、化学物質総合管理システムを活用し、体系的に法順守を推進しています。また、化審法については、レゾナックとして全社一元管理体制を適用し、コンプライアンスの強化を図っています。
- 海外法規制:欧州(REACH)、米国(TSCA:Toxic Substances Control Act)、アジア(中国 新化学物質環境管理登記弁法、韓国 化学物質の登録及び評価に関する法律)等の海外各国・各地域法令については新設や改正が頻繁に行われており、今後規制がますます強化または拡大される傾向にあります。各種情報源およびデータベースを活用して改正動向を監視し、当該国の現地関係者との情報共有により、適切かつタイムリーに対応を進めています。さらにRHQに化学品管理担当人材を配置し、当該国地域と連携したグローバルでの化学品管理を強化していきます。
ナノ材料のリスク管理
当社では、数多くのナノ材料を取り扱っています。原材料として、また製品として取り扱うすべてのナノ材料のリスク評価を行い、作業者およびお客さまの安全と健康、環境への配慮を行うナノ材料の安全管理体制を構築し、2017年から運用を開始しています。ナノ材料のリスク評価及び安全管理は、「ナノ材料安全管理要領」に則って実施しています。
ナノ材料について適切な管理がなされていることを、CMEO/CQOを議長とするナノ材料安全対策協議会にて定期的に確認し、事業/開発の継続可否について経営会議に上程、経営会議にて決定しています。
安全性評価における動物実験に対する配慮
当社では、社会的に有用で安全で健康かつ環境に配慮した製品を提供するため、毒性予測評価(in silico)や、培養細胞や試薬を利用した試験(in vitro・in chemico)を積極的に活用しています。こうした動物実験によらない段階的なアプローチによる製品の安全性評価を実施することで、実験動物の使用を可能な限り最小限に抑えています。
グローバルな法規制要件に適合するため、実験動物を使用した安全性評価試験を実施する際には、動物実験における3Rの原則(Replacement:代替法の活用、Reduction:使用数の削減、Refinement:苦痛の軽減)を尊重し、「動物の愛護および管理に関する法律」に基づき運営される外部機関に動物実験を委託しています。
今後は、法的要求が無い限り実験動物を使用しないことを原則とし、実験動物使用の必要性を協議する社内プロセスを設けることにより、動物実験実施を厳格に管理していきます。