品質保証

価値創造への使命

当社は、お客さま、取引先などさまざまなステークホルダーとの信頼関係に基づく品質保証活動を通じて、安心で安全な製品とサービスを提供します。

取り組み方針

当社は『社会の持続的発展に貢献するグローバルトップレベルの品質を提供する』ことを品質方針として掲げ、品質保証活動を通じて開発・設計から上市・製造、販売、市販後に至る製品サイクル全体において、安全で安心な製品とサービスをお客さまに提供していきます。加えて、お客さま、取引先などさまざまなステークホルダーとの信頼関係に基づく共創を通じてその提供価値の最大化を目指すことで、社会の持続的発展への貢献を目指しています。

推進体制

当社における品質保証活動は、ものづくりの最前線である各製造事業所に置かれている品質保証部門が中心となり、ものづくりに携わる全部門の協働によって日々推進されています。加えて、最高製造関係業務・技術責任者(CMEO)/最高品質保証責任者(CQO)の下にある品質保証統括部(本社組織)が、当社グループの品質保証に関する総合的な戦略・制度策定(Plan&Action)機能、制度マネジメント(Do)機能、リスク評価・監査(Check)機能を担っています。本社組織と各製造事業所とが緊密な情報共有や意思疎通などの協働体制を構築することにより、品質保証に関するグループ全体のPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回して品質保証システムの継続的な改善を進めています。
品質保証に関する活動は「サステナビリティ推進会議」を通じて経営層に報告されることに加え、各製造事業所の品質保証に関する責任者が一堂に会する年次の「品質保証責任者会議」を通じて当社グループの品質保証に関する方針や重点課題などの共有を本社―事業所間で推進する体制を整えています。

品質コンプライアンスの徹底

当社は品質コンプライアンスの徹底を「品質保証・品質管理規程」に盛り込み、さらに品質コンプライアンスに関する実施事項を細則に落とし込んで、本社および事業所における関連施策の徹底を図っています。
2018年に旧日立化成で検出された不適切検査事案の教訓と再発防止策はレゾナックにおいても引き継ぎ、さらに体制を強化、再発防止に努めています。
本社品質保証部門はe-ラーニングを始めとする品質コンプライアンス教育を通して従業員の意識づけを進めるとともに、不適切検査のリスク要因の排除のため、改ざん・捏造の余地をなくした検査システムの整備やコンプライアンスの視点からの事業所の品質リスク評価や監査などを行っています。
2024年には前年の国内事業所での調査に引き続き、海外グループ会社を対象とした品質コンプライアンスに関する意識調査を実施し、ステークホルダーとの約束を大事にする組織風土がどの程度醸成されているかを評価しました。この意識調査は今後国内と海外を隔年で継続調査していく方針です。
また、過去の事案を分析した結果、「検査員1人の専属作業」となっている業務で不適切な検査が発生するリスクが高い傾向が見られたことから、エレクトロニクス事業部門をまず取り上げて検査業務リスク調査を実施、専属作業となっている検査業務を同定し、検査員のローテーションや多能工化を通じて非専属化を進めています。今後は海外も含む全社展開を計画しています。

2030年までのロードマップ

ありたい姿(2030年) 取り組むべき課題 2024年実績 2025年計画
  • グローバルでの品質保証ガバナンスと品質を大切にする文化が確立され、ステークホルダーから高い信頼を得ている
  • 安心で安全な製品・サービスの提供を通じて、事業の継続的成長と社会のサステナビリティに貢献している
2030年ありたい姿に向けて
  • グローバル品質保証ガバナンスの確立と品質コンプライアンス遵守文化の醸成
  • CX(顧客体験価値)最大化に向けた品質保証・品質管理の現場力強化
直近の課題・問題意識
  • 意識向上:製品事故・不適切検査事案の風化防止及び教訓の継承
  • 仕組み改善:品質コンプライアンス強化策の一つである人手を介さない検査システムの構築完遂。
  • グローバルガバナンスの強化(統一規程の海外グループ会社への適用推進、品質教育への海外従業員参加促進、グローバル品質コンプライアンス意識調査の実施)
  • 現場力強化に向けた仕組みの構築、連携推進(グッドプラクティス活動、交流活動の推進)
  • 不正防止のための人材ローテーションの仕組みの整備(検査業務担当者)
  • 品質保証体制の再編、品質リスク/ケイバビリティ評価の導入、品質コンプライアンス意識調査の継続実施を通じた品証ガバナンスの一層の強化
  • クレーム再発防止策の可視化・横展開強化、グッドプラクティスの利活用促進、品証教育等人材育成策の継続等を通じた現場力強化

非財務KPIの目標と実績

私たちは「製品事故ゼロ」「品質コンプライアンス違反ゼロ」を指標としての目標として掲げています。2030年までにレゾナックグループ全体がグローバルに統一された品質保証の枠組みで運営され、品質を通じて顧客との信頼関係を構築し、事業活動を通じた提供価値が最大化されている姿を目指します。
また、マテリアリティに対するKPIとして、下記を掲げて取り組みを進めています。

重要項目(KPI) 2025年目標 2024年実績
重大製品事故件数 0件(全グループ) 0件(全グループ)
重大品質コンプライアンス違反件数 0件(全グループ) 0件(全グループ)
  • 定義は当社基準による。

製品安全管理

製品安全確保の活動のための基本ルールとして、法規制の順守に加え、社内で「品質保証・品質管理規程」を制定しています。その中では、お客さまに当社の製品を安全に安心して使用していただくため、さまざまな審査業務やリスク管理業務を定めて、製品ライフサイクルの各段階において製品安全の確保を図っています。加えて、お客さまに新規に製品を提供する「サンプル出荷」や「上市」では、リスクベースの考え方に基づいて出荷・上市の可否を判断する審査体制を構築しています。
また、一部の認証製品などを対象に、定期的に製品の安全性に関する外部監査を受けています。認証を受けた製品にはマークが表示され、認証後も認証製品の定期的な外部監査を受けることで、品質維持の有効性が確認されています。一例として、認証企業であるUL Solutionsが定めた安全基準に適合している製品にULマークを表示しています。

設計・開発 製品安全審査 製品リスク管理→上市・製造 新製品上市等審査 品質保証能力審査 製造条件変更手続き→販売 契約書・仕様書締結審査 販売宣伝等資料審査→市販後 市販後の製品情報管理→設計・開発に戻る

製品安全のための審査・リスク管理業務など

品質リスク/ケイパビリティ評価および監査の実施

当社は、グループ全体のガバナンス強化および各事業部・事業所、グループ会社の強みと弱みを明確化し共有することを目的に本社品質保証部門による、品質リスク診断を実施してきました。2025年からはこの取り組みを一歩進め、リスクと能力(ケイパビリティ)の両面から事業所の実力を評価する枠組みを定め、改善のサイクルを回していく活動を計画しています。これを、Quality Risk/Capability Assessmentの頭文字をとって「QRiC」と名付けました。QRiC活動では、①お客さまと社会、②製品安全、③コンプライアンス、④品質保証、⑤品質管理、⑥マネジメントシステム、⑦人と組織、という7つの視点からの評価を本社と事業所双方で行い、すり合わせを通じて納得性のある評価を行って改善につなげていきます。その過程で高リスクの拠点が見いだされた場合は、監査等を通じた迅速な対策が打てる仕組みを整えます。

現場力の強化

品質保証・品質管理のレベルアップのため、「現場力(現場で働く人の力量や意識)の強化」を掲げ、グローバルトップクラスの機能性化学メーカーとして必要な品質保証人材の育成を目指し、階層別の教育体系の構築(階層に合致した教育カリキュラムの提供)をグローバルで進めています。また、事業所の枠を超えた活動事例の共有の場を設けて改善活動を促進するために、各事業所で実施されている好事例を「グッドプラクティス(グップラ)」としてグループ全体で共有、活用する仕組みを構築しました。また、事業所間での合同会議、交流会などを行って共創への取り組みを進めています。

品質クレームの削減

当社は顧客満足の向上、さらにはCX最大化を目指すために、品質クレームの削減に取り組んでいます。クレームの本質原因に基づいた再発防止対策の実施や、これまでに発生したクレームから抽出した教訓を活用した未然防止策の実施により、毎年前年比20%の削減を目指します。

品質マネジメントシステム

当社では、製造事業所毎にそれぞれの製品や組織に適した品質マネジメントシステムを構築し、ISO9001やIATF16949などの国際規格の認証を取得しています。これからも品質マネジメントシステムを強化し、さらなる製品・サービスの品質向上およびCX最大化に努めていきます。

品質教育・文化

品質保証や品質管理の現場で必要なさまざまな知識を教える任意受講の技術系プログラムと、全従業員を対象とする品質コンプライアンスeラーニングを始めとするコンプアイアンス系プログラムの二つを品質教育の柱としています。技術系の講座は製品安全とPL対策、製品リスク評価などを扱う「品質リスク管理」、問題が発生した際の根本原因特定のための「真因分析」、レベルに応じた「統計解析講座」や「内部監査員養成講座」など約15講座があり、のべ約4,000人が受講しました。
品質コンプライアンスに関しては2024年に国内グループ会社も含めた従業員の約9割に当たる12,000人が受講したeラーニングの他、理解促進のためのビデオ教材(3か国語の字幕付き)も用意してコンプライアンス意識の浸透を図っています。

TOPICS

人の手を介さない検査システム

レゾナックでは品質コンプライアンス違反の発生を防止する目的で、検査指示、品質規格、検査結果情報およびその判定結果に基づいて、出荷検査成績書の自動発行を行うシステムを事業所に順次導入しています。これまで検査項目によっては測定した検査データを紙の帳票に手書きで記録し、その後システムに手入力していました。ある事業所では月に平均4万件のデータを手入力で処理しており、転記・入力ミスおよび不適切作業が起こりうる状態でした。これを改善するために検査機器とシステムを直接接続することで検査データの自動転送、検査結果判定や各種データへの人的関与を極力排除し、ヒューマンエラーや不正の防止および作業の省力化を実現することを目指しています。

人手を介さない検査システム

品質保証コンプライアンス意識調査

品質コンプライアンス違反の再発防止・風化防止の一環として、2023年には国内、2024年には海外レゾナックグループ全従業員を対象に、品質コンプライアンス意識調査を実施しました。会社全体や自身の職場、あるいは個人の「品質を守ろ うとする風土や体制、リソースの十分さ」や「失敗を隠さず学ぶ姿勢、コミュニケーション、風通しの良さ」などを確認しました。
国内・海外ともに、「個人や組織単位の品質コンプライアンスの徹底状況や風土」に関しては肯定的な回答が多かった一方で、「品質保証の体制整備やリソース配分」については改善の余地ありとする結果となりました。調査結果は事業所・グループ会社ごとに集計し、今後品質コンプライアンスリスクを極小化していく際の指針として活用してもらうようフィードバックを行いました。本調査は国内と海外を隔年で継続して行っていく予定です。

グッドプラクティス活動

当社では複数の事業所メンバーで構成したワーキンググループを設置し、それぞれの事業所で実践している好事例を「グッドプラクティス(グップラ)」として社内のポータルサイトに集約・共有しています。
2024年は”量“の追求をメインテーマとし、事業所からの事例提供を促すキャンペーンや全社ポータルサイトへのバナー設定などを実施した結果、サイト訪問数や公開グップラ数などで目標を達成しました。また、「最多提案賞」「バリュー賞」「いいね!賞」といった表彰も実施し、認知度を高め、現場力強化につながる事例共有の機運を盛り上げています。今後は量的拡大に加えて「利活用の拡大」も進むよう、活動を継続展開していく計画です。