レゾナックナウ

情報をビジネスにつなげてシナジーを創造するDX推進部の試み

2023年01月20日

明石 麻依子
株式会社レゾナック DX推進部長兼デジタル教育・育成部長

「化学の力で社会を変える」をパーパスとするレゾナックでは、会社や企業の枠組みに囚われない共創により価値創造をしていくこと、そのための土台作りが大切だと捉えています。
様々なステークホルダーと直接繋がり情報の共有化から共創を進めていくために、現在取り組んでいるデジタルトランスフォーメーションと人材育成について、DX推進部長兼デジタル教育・育成部長の明石より説明します。

──現在の業務内容を教えてください

CDO(最高デジタル責任者)管掌下でDX推進部とデジタル教育・育成部を担当しています。CDO管掌下には、DX推進部とデジタル教育・育成部のほか、IT/デジタル戦略部、ITインフラ部、ITアプリケーション部、先端技術探索部、データマネジメント部があり、レゾナックのIT/デジタル戦略に則り、様々な取り組みを進めています。
私たちがグローバル企業として持続可能な発展に貢献し続けるためには、社内外の関係者との共創を通じて新しい価値を創出し続けることが求められます。CDO組織では、会社全体の継続的な業務改善・変革を通じて、競争力向上、あらゆるステークホルダーとの共創、社会的価値創出が行えるよう、IT/デジタル技術やデータを活用し、事業活動を支えるデジタル基盤の構築や、DXの活動を牽引するデジタル人材の強化・育成に取り組んでいます。

──DX推進はレゾナックの発展に不可欠と認識しています。特に中長期での目標はどのように定めていますか?

当社の成長と社会への貢献の両面から特定した3つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)「イノベーションと事業を通した競争力の向上と社会的価値創造」「責任ある事業基盤による信頼の醸成」「社会課題を解決する自律的・創造的な人材の活躍と文化の醸成」を解決するためには、IT/デジタル分野での取り組みが不可欠と考えています。
特に、デジタル基盤の促進は事業活動を支えるために不可欠な要素ですし、同時に、デジタルを利活用する力を持つ自律的なプロフェッショナルの育成こそが、今後のレゾナックの発展を支えると認識しています。
CDO組織では中長期でのIT/デジタル分野のテーマ・目標として、下記を掲げ、効果的な取り組みを進めるとともに、同じ方向に進むための一つの道標として、進捗を計る指標である2025年の目標を掲げています。

サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に対するIT/デジタル分野の目標

重要項目 2025目標 2022実績
データドリブン経営
  • データの標準化構想が完了し、全社標準のデータ分析基盤の構築ができている
  • ESGデータの取得先、必要データ、分析方法の正確性を確認する方法論、プロセスが構築されている
  • エレクトロニクス事業部などにて可視化・分析ソフトウェアの利活用を推進
  • 言葉の定義統一、ビジネスプロセスの標準化・体系化、データの構造化を進める体制を確立
CoE体制によるDX推進とデジタルプロフェッショナルの育成 CoE組織において事業部メンバーが対になり、プロジェクト推進ができている
  • DX投資・施策に関し、DX推進部をハブとするCXO・事業部横断的な施策の最適化を開始
  • デジタル人材、DX推進人材の強化のため、特に外部から知見を有する即戦力人材を採用
IT/デジタルリテラシー向上 全社員のデジタル体験および教育の提供 Tableauというデータの可視化・分析ソフトウェアの利活用を推進し、迅速に業務や経営の現状を可視化する取り組みを支援

──2023年の重要施策は、言葉の定義の統一やビジネスプロセスの標準化・体系化、データの構造化とのこと。DX推進という言葉とは少しイメージが異なる活動のように思いますが?

当社は、2023年1月より、レゾナックとして始動しました。旧昭和電工と旧日立化成が培った技術やサービスを統合しシナジー効果をあげ、社会への価値提供を向上させていくことが求められていると認識しています。

両社はこれまでの長い歴史の中で、異なる手順、異なるシステム・データを使って業務を行ってきましたが、レゾナックとして効率的に業務を進め、シナジーを創出していくためには、両社の類似する業務プロセスを「レゾナックとしての最適な標準プロセス」として統合し、その標準化されたプロセスをIT/デジタルの技術を活用して自動化・効率化を図っていく必要があります。また、異なるシステムに格納されているデータをレゾナック全社横断で集計・分析するためには、同じ定義(意味を持つ)データが、同じ場所に体系的に整理されて格納されている必要があります。
そのために、レゾナック共通で使う言葉の定義統一や、業務プロセスの標準化・体系化、データの構造化の取り組みをスタートしました。この取り組みを「Resonac Way Transformation」と称して、CXO組織と共に活動を始めています。

今後は、各事業部門の協力を得て、この活動を全社展開し、効率的な業務が行える環境を構築していきます。

──全社の事業や組織で波及効果をあげるための、今後の計画についても教えてください

レゾナックの始動により必要なシステムの一部は運用を開始しましたが、全てのシステムの統合は一朝一夕に実現できることではありません。ビジネスを止めずに、円滑にシステム切り替えや統合を進めていくために、中長期の計画を立て、優先順位をつけて取り組んでいきます。古いシステムや業務個別で更新が困難なシステム、高コストなカスタマイズされたアプリケーションの断捨離を進めていき、効率的かつ更新が容易なシステムへの統合を進めていきます。

この他にも、レゾナック全社のシステム投資の最適化を図るため、CDO組織が全体統制をとりながら各事業ユニット・CXO組織のIT/デジタル化を支援する横断的な取り組みも開始しています。2023年は、MESと呼ばれる製造実行システムやPLMと呼ばれる製品ライフサイクル管理システムなど、これまで各事業各々でシステム投資を行ってきた領域のシステム化活動を集約しようとしています。また、単一事業で進めていた施策が特定の事業や組織に閉じないよう、類似する施策を繋ぐ「プログラムマネージメント」という活動も23年からスタートし、複数の事業・組織で波及効果の創出を狙っていきます。

──世界トップレベルのデジタル利活用を実現するための、デジタル人材の教育・育成はどう進めていますか?

デジタル人材は、ビジネスプロセス・システム・データを理解し、IT/デジタルとビジネスを繋ぐことのできる人材だと思います。この3つを理解し、ビジネスに貢献できる人材とそのノウハウをレゾナックのアセットとしていくためには、デジタル人材を継続的に社内で育成していく必要があると考えています。

CDO組織では、2022年から、社外から即戦力人材の採用を進めており、様々なIT/デジタルや業務改革のスキルや知見を有するメンバーが活動をリードし始めています。また2023年1月には、新たにデジタル教育・育成部が組成され、IT/デジタルリテラシーの向上を図るための社員教育プログラムを開始します。まずは国内従業員を対象に階層別にIT/デジタルスキル向上のための教育コンテンツを提供し、受講管理・成果のモニタリングを行っていきます。また既に実施しているTableauやMicrosoftアプリケーション(Teams/Forms/Plannerなど)の活用支援活動に加え、新たにAI勉強会も企画を進めています。IT/デジタルツールの活用支援や業務に即したIT/デジタル活用のTipsなども継続して提供していきます。従業員が積極的に活用する教育コンテンツの拡充を図り、IT/デジタルリテラシーの向上に取り組んでいきます。

──レゾナックのデジタル利活用力向上に向け、明石さんの想いを聞かせてください

ビジネスを支える重要な要素の1つは間違いなく「情報(データ)」だと思います。その「情報(データ)」の流れを澱みなく繋ぎ、業務のムダを省いたり、迅速な意思決定を行える環境を作り「世界で戦える会社」への変革を牽引していくことがDXを担う部門の役割だと思います。社内には多くの組織があり、それぞれの組織が行っている業務は様々ですが、その組織の中にある情報が繋がることで、組織間で重複していた作業が不要になったり、複数の組織にまたがる情報を並べてみることで、今まで気づかなかった課題や価値に気づける可能性も広がります。 私は、CDO組織の一員として、各事業部門やCXO組織と共に、業務に必要な情報が必要な時に必要な人に届き、業務やビジネスそのものをより効率的に進められる環境を構築し、レゾナック事業の持続的な発展に貢献したいと思っています。

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