【対談:サステナビリティの事業への実装】「第二の創業」から3年。次のステージへの準備はできているか?
2025年8月5日

※本記事は2025年8月発行の統合報告書「Resonac Report 2025」の転載です。
レゾナックのこれまでのサステナビリティの取り組みへの評価や課題、今後の期待についてCSuOの松古とサステナビリティアドバイザーの対談を行いました。
「第二の創業」から3年、何を変えてきたか
松古 第二の創業以来、レゾナックは事業ポートフォリオ改革とその完遂に不可欠な共創型人材の育成、企業文化の醸成に注力してきました。これは私たちのパーパス「化学の力で社会を変える」を実践して企業価値を高め、私たちが実現したい未来を創るためです。サステナビリティはこのパーパスに埋め込まれていると捉えて、"サステナビリティを経営の根幹に据える"ことをこの3年目指してきました。まず実行したのは社内の意識改革です。経営の守りやブランディング目的にとどまっていたサステナビリティを経営課題として位置づけ直し、取締役会、経営会議に紐づく会議体として全CXO(最高職務責任者)が毎月出席するサステナビリティ推進会議(通称「サス推」)を立ち上げ、マテリアリティ(重要課題)やそれに紐づく非財務KPIを設定し、進捗確認や見直しを始めました。これにより、トップマネジメントチームのサステナビリティに関する「共通言語づくり」を行いました。
三つのマテリアリティのうち「責任ある事業運営による信 頼の醸成」は私たちの目指す「世界トップクラスの機能性化学メーカー」になるための土台づくりです。CMEO/CQO、CRO、CDIOなど各CXOが責任をもって推進し、2025年KPIの達成が見えてきました。
もう一つの「自律的で創造的な人材の活躍と文化の醸成」は、CEOとCHROが強力なタッグでリードし、チーム髙橋全員がそれぞれの持ち場で着実に進めています。2年目からはサス推への事業担当役員の参加率を増やし、今年から隔月開催となった会議では、全役員出席のもと、毎回必ずいずれかの事業における取り組み(例:TCFDシナリオ分析に沿った気候変動による事業機会・リスクの分析、Resonac Pride 製品・サービス、顧客のサステナビリティ戦略分析など )を議論するに至っています。
このようなトップダウンの議論を現場の取り組みに根付かせるために、各部門のサステナビリティパートナー(通称「サスパ」)がサステナビリティ部との連携のもと、各部門の戦略や状況を踏まえた取り組みを推進しています。一方、従業員のサステナビリティマインドを醸成することでボトムアップの力を応援するための施策にも取り組んでいます。2023年以降は、全社横断のカーボンニュートラルプロジェクトの開始や、役員報酬へのサステナビリティ評価の組み入れなど、"世界で戦う"水準の取り組み基盤を整備し、一定の外部評価も獲得できました。アドバイザーの皆さまは、これまでの当社のサステナビリティの歩みを、どのようにご評価くださっていますか。私たちは、次の10年に向けて準備はできているでしょうか。
長谷川 企業文化の醸成や人材育成、ガバナンスの強化を通じて、サステナビリティが経営戦略と有機的に結びつき、全社変革のドライバーとして機能している点は非常に印象的です。特に、従業員中心の企業文化づくりが共創型人材の育成と密接に連動しており、サステナビリティが意思決定プロセスに組み込まれている点は、実効性のある統合的経営の実現に向けた好事例といえます。
今後は、このサステナビリティ基盤をさらに競争優位へと転換していくために、「サステナビリティ・ドリブンな投資判断モデル」の確立を目指すとともに、非財務と財務のつながりを示すことで、社外への説明力を高めていくことが重要ではないでしょうか。これにより、企業の覚悟や戦略性がより明確に伝わり、ステークホルダーの理解と信頼の深化につながると期待しています。
松原 私もサステナビリティが全社戦略の根幹に据えられることで主要戦略に息吹を与えていることを高く評価しています。マテリアリティも実効性のある枠組みです。だからこそ、2030年の10年後あるいはその先にレゾナックが共創により成し遂げたいものは何か、どんな社会を実現したいのか、そのためにどんな改革をし、それが企業価値にどんな意義をもたらすのか、と思考を巡らし、高い視座のもとで取り組みを進めていただきたいです。この3年で整備してきたサステナビリティ経営の制度設計を基盤に、次の10年に向けて機能性と統合性、そして納得性を高めていただくことを期待します。
松古 心強いコメントをありがとうございます。進んできた方向性は間違っていなかったと感じ、同時にこれからのチャレンジにクラクラしつつもワクワクしています。企業価値への意義、非財務と財務のつながりといったお言葉をいただきましたが、今回私たちは、改めて、目指すべき企業価値が"何でできている"のかを見つめ直し、従来の価値創造プロセス図に代えて「価値創造"仮説"図」を作成してみました。真の企業価値(というものがあるとして)を高めるためには、私たちが注力すべきことやステークホルダーに評価いただきたいのは何で、それがどんな施策となり、どんな指標に現れる(はず)か、という仮説を示すものです。これからステークホルダーの皆さまと対話を重ねながら深めていきたいと考えています。
伊坪 私は社内外にどう効果的に伝わっているかという点が気になりました。どれだけ素晴らしいビジョンや取り組みを開示していても、届けるべき相手に正しくリーチできていないと意味がありません。例として、個別製品の環境負荷削減を目指した開発をしているのであれば、幅広いステークホルダーにというよりも、最も価値を理解できるはずの顧客に焦点を当てて技術価値を含めて訴求し、フィードバックを得ることで経済価値に結び付けられるのではないでしょうか。効果的な情報の届け方をご検討ください。
松古 ありがとうございます。これまで統合報告書やサステナビリティ説明会では、ターゲットを「長くお付き合いしたい大切なステークホルダー」と広めに位置づけ、共通する関心事項に応えようとしてきました。財務戦略をしっかりと伝えつつも非財務の力による価値創造にご期待いただけるように、担当者の声を含め現在進行形でお伝えすることを心がけ、一定のご理解はいただいてきたと感じています。しかしながら、個別かつ具体的なお客さまや製品をバイネームで想定して取り組みを進め、対話を通じて共に価値を創り出すという私たちの「共創のカタ」を、サステナビリティの分野でももっと打ち出すべき実装段階に来ていることに改めて気がつきました。
環境・社会価値を可視化する「Resonac Pride 製品・サービス」
松古 また、ご指摘の「サステナビリティの取り組みを経済価値に結び付ける」ことも視野に入れて加速しているのが「Resonac Pride 製品・サービス」の認定です。これは三つめのマテリアリティ「イノベーションと事業を通じた共創力&競争力の向上と社会価値の創造」に該当します。
2023年に始動した「Resonac Pride 製品・サービス」の 認定制度は、製品・サービスがパーパス「化学の力で社会を変える」をどのように実現してきたかを可視化し、第三者の視 点も踏まえて評価・認定する取り組みです。
素材は社会で利用される最終完成品の要素ではありますが、特に粉や液体といった形をとることが多く、どこにどう使われているか分かりづらいだけでなく、自社製品単独でどのように社会の役に立っているのか見えにくいという特徴があります。ですので、私たちが社会をどう変えているのかを顧客を含めたステークホルダーにご理解いただくために何らかの社会インパクトを示していくことは、サステナビリティの取り組みを経済価値につなげることが簡単ではない分野における私たちにとっての挑戦です。また、この一連の流れが取り組む従業員にとってのプライドになり、パーパス・バリューの実践の達成感につながることも期待しています。
Resonac Pride 製品・サービスは、現状の売上高や収益だけでなく、今後売上やシェアが拡大し、将来的に事業の中心あるいは成長のドライバーとなりうる製品・サービスかどうか、将来的な社会への展開力があるかどうかを判断基準としています。そのため、認定においては、社会、環境、顧客への貢献の可視化・数値化とその妥当性(ネガティブインパクトを含む) に加えて、定性的な社会価値創造ストーリー(仮説)を提示すること、共創の観点から幅広いステークホルダーの意見を伺うことが特徴で、25年からはサステナビリティアドバイザーの視点も入れて評価してサス推で決定します。
これまでに川崎プラスチックケミカルリサイクル事業と、パッケージングソリューションセンターによる共創活動を認定しました。2025年中に残り5事業の主力製品の認定を予定しており、役員の評価にも組み込んでいます。
長谷川 社会価値創造ストーリーの提示や非財務KPIとの接続を試みている点は、非常に前向きな取り組みで業界全体にとっても意義のあるチャレンジです。 一方で、社会価値の可視化が「社会にとって良いことをしている」にとどまらず、財務的成果とどのように結びつくのかを示すことが、今後のステークホルダーとの対話やIR活動において必要ではないでしょうか。ぜひ、「Resonac Pride 製品・サービス」の認定が中長期的にどのような経済的リターンをもたらすのか、社会価値と財務インパクトを結んだストーリーを描いていっていただきたいと思います。
伊坪 "世界で戦う"ための意思と戦略を示す素晴らしい取り組みだと認識します。社内のKPIとすることで認識も急速に広がっていることがうかがえます。これらを成長事業として育成していくためにも、認定された案件に対する毎年の振り返りをお願いします。そして、これらを社会に実装することの効果の見える化を早期に行い、投資、成長へとつなげていただくことを期待します。
松原 ステークホルダー資本主義における企業の果たす役割、そもそも企業とは何か? レゾナックという会社がなくなったとしても残したいものは何か?時間軸をより永く求めていく中で、辿り着く未来像があると考えています。Resonac Pride 製品・サービスのような素晴らしい取り組みとともに北極星を見つけ、それに向かっていく推進力を兼ね備えていただければと思います。
松古 ありがとうございます。まずは私たちのつくる素材が、お客さまとの共通の利益であるはずの社会価値を生んでいることをご理解いただくよう、発信を強化していきます。その先に、財務との接続すなわち経済価値への変換が実現する世界があると信じて取り組みを進めていきます。また、認定して終わりではなく、ステークホルダーとの対話を継続して事業の成長や新たな展開を示していくつもりです。それによって、スケールアップや横展開などの将来へのチャレンジを加味した認定であることを納得いただけるようにしていきます。