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【対談:レゾナックの「共創のカタ」】 PSセとPMiCがもたらす、 レゾナック流「共創のカタ」の 現在と未来

2025年8月5日

※本記事は2025年8月発行の統合報告書「Resonac Report 2025」の転載です。

お客さまとの対話から新たな価値を創出し、製品化へとつなげていくレゾナックの共創。その原点であるパッケージングソリューションセンター(PSセ)は、顧客の声を丁寧に汲み取りながら、時にその一歩先を示す提案を重ねてきました。そうした姿勢は、やがて業界内に新たな開発のあり方を示すこととなりました。そして2023年、モビリティ領域を担うパワーモジュールインテグレーションセンター(PMiC)が本格始動し、"共創のカタ"が新たな進化を遂げつつあります。現場で共創をリードする3人が、それぞれの経験と展望を交えながら、レゾナックらしい共創の未来像を語ります。

30余年の歴史の中で、一歩ずつつくり上げていった「共創のカタ」

福島 私たちが目指す共創。その屋台骨となるのは、パッケージングソリューションセンター(PSセ)とパワーモジュールインテグレーションセンター(PMiC)です。その始まりは、今からおよそ30年前にまで遡ります。機能性材料メーカーとして、お客さまの製品を評価する装置や仕組みを整えるのは、当時としては画期的な取り組みの一つでした。畠山さんは、入社当時からPSセの所属でしたよね。

畠山 そうですね。PSセの前身組織である旧日立化成の「実装センタ」ができたのが1994年。私は1997年に入社して、そちらに配属されました。ただ、設立当初は現在のような存在感を発揮できていたわけではありません。材料メーカーでありながら、半導体パッケージという「完成品」に踏み込み、その評価まで担うことには、当初社内からは慎重な意見がありました。しかし2000年を過ぎたあたりから、徐々に変化が訪れます。私たちの行った評価を発端に新たな製品が生み出されたり、当社の材料が新しいお客さまに採用されたりなど、次第にその成果が目に見えるようになってきたのです。そして2000年代後半には、材料単体ではなく、それをどう使うかという視点への注目度も高まり、お客さまに向けて材料の使い方も含めた提案ができるようになっていきました。そうした流れの中で、現在PSセが行っている「共創のカタ」の原型ができてきたように思いますね。

福島 特に半導体領域においては、PSセと同じ役割を果たせるものを今後イチからつくろうと思っても難しいと思います。積み上げてきた歴史があり、整えてきた装置があり、お客さまと築き上げてきた共創の仕組みがある。こうした環境は他にはありません。中でもお客さまとの共創、つまり市場と対話ができるということは、私たちの事業推進においても非常に大きな強みです。こういった、PSセの存在価値、将来性、社会・環境への貢献については、Resonac Pride 製品・サービスとして可視化も試みています。

原 例えば私が担当するモビリティ事業では、主なお客さまは自動車メーカーとなります。お客さまは「こういうことがやりたい」という希望を持っていますが、「希望を叶えるための材料があるのか」「そうした材料を新たに作ることが可能なのか」「どう組み合わせればよいのか」といったことまでは把握していません。場合によっては、既に希望を満たす性能を有した材料があるにもかかわらず、その存在や活かし方を知らずにいたことで開発が進まなかった、という事例もあるのではないでしょうか。そうした状況は、お客さまにとってはもちろん、私たちにとっても損失であり、望ましくありません。お客さまと対話し、困りごとが何なのかを素早く把握することで、必要とされる製品を開発する足がかりになっていくのです。

企業と開発者、双方にメリットをもたらしてくれる共創

福島 モビリティはもちろん、半導体やその他の事業において、最先端を進んでいるのはお客さま自身ですからね。だからこそ、お客さまと対話できれば、開発すべき技術が何なのか誰よりも早く絞り込み、深掘りすることができる。開発者の立場から言えば"いち早く仮説検証に入れる"ということです。逆にこうした手がかりがなく、ぼんやりとしたところから仮説検証に入ってしまうと、ほぼ必ずといっていいほど失敗します。期待する製品が開発できなかったり、仮に開発できたとしても時間も予算も余分にかかる迂回路を進んでしまったりするのです。開発スピードが速まっている現代において、そうした悠長な動きは望ましくありません。私たちが築き上げてきた共創の仕組みは、お客さまの希望を直接的に捉え、最短距離で仮説検証を行える環境です。これは単なる連携ではなく、開発の生産性と成功確度を高める「戦略装置」として機能しています。

畠山 開発者側の目線を補足すると、この環境は自身のモチベーションを上げる意味でも重要な役割を果たしていますね。最先端の技術に携われるというのは、開発者にとってこの上ない喜びです。今まで知らなかったことを知り、新しい発想が生まれる、そうした瞬間に立ち会えるのはとても嬉しいものですから。そのように、仕事が趣味といえるくらい楽しんでいるときにこそ、技術革新や新たな発見が生まれるのです。加えて、そうした研究が市場とつながっており、お客さまの反応を見ながら進めていけるのも良いと思います。いくら面白い技術があったとしても、そこが市場とつながっていなければ、研究の方向はどうしてもズレていってしまうものです。何のために開発するのか、開発することで何が起きるのか。ゴールを明確にし、そこへ進んでいく一歩一歩に手応えを感じられるようにしておくことが、開発側のモチベーションの維持には必要不可欠です。

福島 そういう意味では、われわれが立ち上げたJOINT2も、開発者にとって良い効果をもたらしていると感じています。JOINT2は、半導体実装材料や基板、装置の開発に携わる企業14社が参画するコンソーシアムです。それぞれの知見を持ち寄り共同で研究を進めていくからこそ、新たな気づきの瞬間に、さまざまな会社や複数の開発者が立ち会うことができる。これによって、幅広い可能性が見えてくるようになると思うのです。例えばA社の材料だけでは実現が難しい要望に対し、「B社の材料を組み合わせれば実現可能だ」ということが分かれば、A社とB社が協力してお客さまに提案することができるようになります。お客さまにとっても、いち早く期待する製品が受け取れるようになるわけですから、メリットしかありません。普段は競合として切磋琢磨している関係性であったとしても、互いに手を取り合いながら市場と対話していく。これも一つの「共創のカタ」と言えると思います。

原 これまでの日本企業は、一社ごとに研究開発を行っていましたので、場合によっては複数の企業がそれぞれに膨大な時間とお金をかけて、同じような性能の製品を開発していることもあったでしょう。また予算などの関係上、手が届く範囲内のことしかできず、進化のスピードを上げきれないということもあったと思います。しかし、われわれが実践する「共創のカタ」が広まっていけば、こうした無駄を省きつつ、顧客が気がついていなかった課題へのソリューション提案や新たな開発テーマの創出など、多様な出口へとつなげていくことが可能になります。

今後の成長ドライバーとなることを期待されるPMiC

福島 そのカギを握っているのが、PMiCですね。畠山さんはPSセに加え、2024年6月からはPMiCのセンター長も務めています。PMiCにおいて「共創のカタ」を進化させること、なおかつそれを短期間で行うことを期待されていますね。

畠山 そうです。PMiCが本格的に始動したのは2023年。PSセは今でこそ「共創のカタ」を見つけ、さまざまなメーカーとの協業、実証実験などが軌道に乗り始めていますが、それでも前身組織のときから考えると30年の月日がかかってしまいました。PMiCには、PSセが30年かけて築いてきた共創の道筋を、より短期間で再現・進化させるという挑戦が課されています。とはいえ、PSセが主とする半導体を領域としたお客さまと、PMiCが主とするモビリティを領域としたお客さまは、それぞれ性格が異なるもの。いわば新しいお客さまであり、PSセで積み上げてきたものが必ずしも活かせるとは限りません。新たなお客さまに刺さるソリューションをどのように提案していくか、お客さまとのお付き合いを持続的なものへ発展させていくにはどうすれば良いか。そこをしっかり考えていきながら、4~5年以内には「共創のカタ」を定着させていきたいと思っています。

原 既に、事業部の開発チームや営業が、PMiCがあることを前提にお客さま先を訪問し、共創のきっかけをつくり出していますよね。実はこんなのが欲しかったんだという声がたくさん上がってきていると聞いていますよ。

福島 半導体とモビリティ、それぞれ大きく異なる分野でありつつ、世界的に重要なこの二つの市場を確保できるようになることは、われわれにとって非常に大きな意義があります。レゾナックが世界と戦っていくためには、欠かせない取り組みです。

畠山 そのためには、お客さまとの対話の中で得られる情報の中から、いかに先を読んでいくかが重要になりますね。自分たちなりの仮説を立て、仮説検証もした上で、その情報を持っている状態にしておくことが大切です。お客さまに「こういったことはできないか」と言われてからでは遅いですからね。

福島 対話や業界の動向を見ていく中でお客さまの困りごとの兆しをいち早く捉え、即座に対応できるかどうか。そこで差がつきますね。「それでしたらこういったものがあります」と言えるかどうかで、お客さまの反応は全然違います。その場で曖昧な返答しかできないようであれば、お客さまはレゾナックとコラボレーションしたいと思ってくれません。

原 ひと昔前であれば、営業担当がお客さま先の購買担当と話しながら、社内で見聞きした話を話題として振ってみて、という感じだったんですけどね。しかし、今はそれでは刺さらない。開発スピードは日々格段に上がっています。材料メーカーが材料だけ売っていればよかった時代は既に終わっています。求められたものを渡すだけでなく、自らも積極的に動きながら、共創による利益を創出していかなければなりません。

熱マネジメント領域を筆頭に、広がっていく可能性

福島 モビリティと言えば、EV化を目指す上で避けては通れない熱マネジメントの領域にも、われわれにとっての大きな可能性があるように思います。これまでの熱マネジメントの世界では「熱は悪いもの」「マネジメントすべき」という考え方が一般的でした。だからこそ、どうすれば熱を発生させないようにできるか、発生した熱をどうすれば効率良く冷却できるか、というのが開発の目標になっていたわけです。しかし近年では、発生した熱を有効活用するにはどうすれば良いか、という視点も持たれるようになってきているなど、その環境は目まぐるしく変化しています。そうした激動の波を、お客さまと一緒になって渡っていけるのも、PMiCがあるからこそです。

原 正直、モビリティの世界で熱マネジメントの研究開発をしている人は、最近までごく少数でした。1908年に内燃機関の車が量産化され、100年以上が経過していく中で、「車とは内燃機関である」という考えが当たり前のものになってきました。しかし、これからますますEV化が進んでいけば、車は内燃機関ではなく、バッテリーと電気マネジメント装置であるという認識に変わっていくはずです。そうした時代の変革期に、まさにその当事者である自動車メーカーと共創していける環境は、狙ってつくれるものではありません。自動車メーカー自身も、このままではいけないという危機感を強く持っているはずですからね。そこで、私たちと共創していくことの価値をしっかりと感じ取ってもらえれば、今後ますますの発展が期待できます。

福島 そして、こうした共創の仕組みを、PSセ、PMiCに続いて第三、第四と生んでいくことができれば、レゾナックは間違いなく世界に誇る企業へと成長していけるでしょう。もちろん、そのためには当社がこれまで蓄積した技術力、素材を開発する力を磨き続けていくことも忘れてはいけません。

原 一方で、レゾナックは統合会社であるため、担当領域がさまざまに枝分かれし、それぞれの分野の専門家が全国各地に散らばってしまっているのが現状です。こうした状況では、研究開発に無駄が発生してしまうことがよくあります。ある事業所で行き詰まってしまった開発が、別の事業所が持っている知見一つですんなり解決してしまう、ということも珍しくないのです。すると「何のために時間をかけていたんだ」ということになってしまいます。第三、第四と共創の仕組みを拡大していくためには、自分たちの強みをしっかりと把握することが欠かせません。そうした状況を打開するために取り組んでいるのが、「技術ランドマーク」の整備・開発です。技術ランドマークでは、社内組織をバーチャル化し、それぞれが得意な技術領域を互いに認知ができる環境を整えます。そうすることで、私たちが長年積み上げてきた知見の無駄をなくし、より大きな強みとして活かしていくことができるはずです。

共創の環境を存分に活かせる人材を育てていく

福島 PSセとPMiCを起点とし、そこから広がっていく第三、第四の共創の仕組みについて話してきましたが、忘れてはならないのが、それらはあくまでも「箱」であるということです。箱である以上、それを使いこなせる人がいて、使い倒してもらえる環境を用意しておかなければ意味がありません。レゾナックでは今後、「共創を担える人材」を定義し、多様な経験・視座を獲得するためのローテーションやスキル育成を体系化していく方針です。加えて、社内の知識資産を見える化する「技術ランドマーク」整備により、知見の重複や孤立を防ぎ、社内共創の促進にも取り組んでいます。事業・組織・人材が三位一体で進化すること。それこそが、次の時代に選ばれるレゾナックの姿です。

原 異文化交流とでも言うのでしょうか、多様な経験を積み重ねることが重要です。開発だけ、営業だけといった形にならず、いろんな分野、いろんなお客さまと触れ合えるような仕組みも考えていく必要があります。

福島 そこが特に検討が必要なところです。技術力を磨くためには、ある程度時間が必要になるのですが、技術だけを磨いていては欲しい人材が育ちにくい。技術を学び、経験を積む期間はしっかりとありつつも、そこから飛び出して、お客さまと共創する営業やマーケターのような仕事をしたり、新しい技術を探して歩を進めたりする時期もないといけない。

畠山 そういう意味では、PSセでは新入社員には必ず「ここの知識だけは誰にも負けない、という分野を持てるようになってほしい」と伝えるようにしています。それこそ、レゾナックで一番と思えるぐらいにまで知識を深めてほしいと。その上で、知識のすそ野を広げていくような意識を持ってもらいたいと思っています。

福島 多様な経験は大切ですが、やはり画期的なイノベーションを生むためには、技術的な目線で深掘りしていくことが必要不可欠ですからね。ここから先は、営業畑と技術畑、その両方をリスペクトし、両方からリスペクトされるような人材の育成をより進めていきたいと考えています。