半導体パッケージ"共創"の最前線
──アイデアを形にする試作ラインを紹介

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2026年07月10日

米国に企業主体のコンソーシアムを立ち上げたのか?その展望は?US-JOINTの企画からオープニングを主導し、レゾナック・ホールディングスで半導体材料研究開発統括の執行役員を務める阿部 秀則(以下、阿部)がその真意を語る。

後編となる本記事では、US-JOINTが備える先端パッケージを一貫して組み上げられる試作ラインと評価設備を紹介します。

アイデアを形にする、試作ラインの全貌

US-JOINTではどんな試作ラインを用意していますか?

阿部:先端パッケージを一通り組み上げられる設備を揃えています。先端パッケージの要素技術を踏まえると、現在は300mmのウェハレベルで組んでいくのが主流なので、まずはそこに対応できるようにしました。微細バンプ、微細配線、さらにチップ埋め込みという3種類のラインをカバーしています。

まずチップとウェハの接続には、サーマルコンプレッションボンダーを使用します。通常はフラックスで酸化膜を除去しながら接合しますが、当ラインではフラックスを使わないフラックスレス方式での接合にも対応可能です。そして、接続後のアンダーフィル充填や、コンプレッションモールドによる封止も一貫して実施できます。

また、露光機・メッキ装置・スパッタ装置も保有しており、再配線(RDL)構造を形成に対応できます。スパッタ装置は、メッキの前に必要となるシードレイヤー(メッキの種となる層)を形成する装置ですが、ブリッジチップを埋め込みたい場合やインターポーザーの中に部品を埋め込みたい場合は、チップを配置してモールドし、そこから再配線を形成するフローで対応できます。

US-JOINT クリーンルーム

パッケージの評価設備は、どんなラインナップがありますか?

阿部:光学顕微鏡、SEM(走査型電子顕微鏡)、FIB(収束イオンビーム)を揃えているので、テストビークルが設計通りに組み上がっているかその場で確認できます。FIBでは断面構造から接合状態や材料の積層状況を詳しく観察できます。温湿度ストレスを付与できる加速試験設備も用意しており、パッケージの信頼性評価にも対応します。試験後にクラックや剥離といった不具合が発生した場合は、すぐに観察することもできます。

顧客は、どのようにUS-JOINTを活用できるでしょうか?

阿部:テストビークルを組み上げる試作から評価、さらに課題解決に向けたアイデア出しを、一か所で完結できるのが強みです。そして、半導体パッケージの新しいコンセプトを検討する段階から具体化に至るまでを伴走します。よって、設計やシミュレーションを日々行っているファブレスやハイパースケーラーのエンジニアの方々には、新しいコンセプトを検討する段階からUS-JOINTを活用していただければと考えています。

理想的なシミュレーションを得られていても、実物を組み上げてみると、反りが発生する、界面が想定通りに密着しない、表面の粗さや接着力が計算と異なる、といったギャップが生じます。 特に先端パッケージでは、熱膨張率が大きい有機材料の使用比率が高く、応力や反りの問題が避けられません。そのため、理論的に優れた構造であっても、実際の工程を通すと想定外の変形が起こりえます。

株式会社レゾナック・ホールディングス
執行役員 半導体材料研究開発統括
阿部秀則

つくって終わりにしない ── 検証から量産への橋渡し

コンセプト検証から、次フェーズへの移行はどのように進めるのでしょうか?

阿部:コンセプト検証は一度で終わるものではなく、検証サイクルを繰り返すことになります。その中で課題が見つかれば、お客様と材料・装置メーカーが共創し、解決を図っていきたいと考えています。そしてコンセプト検証期間を、従来の6ヶ月から1ヶ月へと短縮し、徹底的に迅速化します。

なお、ここはあくまでコンセプト検証の場であり、大量生産への対応は想定していません。次のフェーズとして少量生産が必要になった場合は、参画企業であるAzimuth Industrial社が少量多品種の試作・パイロット生産を担う体制を整えています。同社は1972年からカリフォルニア州ユニオンシティで半導体の組立・パッケージングを手がけ、パイロット生産、中小ロット組立を得意とする企業です。US-JOINTの拠点と同じユニオンシティに工場を構えているため、コンセプト検証から少量生産へスムーズに引き継ぐことができます。大量生産へ進む際は、従来のファウンドリやOSATのなかから委託先を見つけていただき、そこにUS-JOINTで一緒に開発した材料・プロセス・装置をご提案することで検証の成果を量産までつなげられると想定しています。

研究ではなく、ビジネスとして ── US-JOINTのこれから

半導体に関するコンソーシアムには先行事例もあります。それらとの違いは何でしょうか?

阿部:最も大きな違いは、ビジネスを目的とする点です。既存のコンソーシアムの多くは、大学や国の研究機関を起点として、そこにメーカーが参加する形をとっており、研究を目的としています。それに対し、US-JOINTはレゾナックが主導し、民間企業の参画を募って立ち上げたものです。先端パッケージ分野で、材料・装置メーカーが主体となって試作ラインと評価設備を運営し、エンドユーザーとの共創に特化したコンソーシアムは、世界的に見ても数少ない取り組みです。

参画企業はいずれも営利企業です。この活動への参画には、ビジネスという明確な目的があります。、スピードと成果を最大限重視した運営を目指しており、その目安としてコンセプト検証を1ヶ月で完了するという野心的な目標を設定しました。お客様の開発サイクルはますます短期間になるトレンドにあり、それに合わせて動くことが、研究主体のコンソーシアムとの根本的な違いです。

率直に言うと、お客様からの期待は非常に高いと日々感じています。ご要望がリソースの処理能力を超えてくる可能性も想定しているところです。どのプロジェクトにどのようにリソースを配分するかは、参画企業と議論しながら進めていきます。

US-JOINTが最も重視しているKPIは何でしょうか?

阿部:お客様の要望に、リソース・質・スピードの面でどれだけ応えられているかが1つの評価軸です。新しいパッケージ構造の検証に取り組んだとき、それをきちんと形にして結果を出せたかどうかが問われるでしょう。

もう1つは、参画企業の満足度です。US-JOINTはレゾナックの他、材料メーカーではMoses Lake Industries、ナミックス、東京応化工業、TOPPAN、3M、装置メーカーではAzimuth Industrial、KLA、Kulicke and Soffa Industries、メック、TOWA、アルバックの計12社が参画するコンソーシアムです。なかには拠点に駐在員を送り、立ち上げから関与してくれている企業もあります。参画企業がこの活動に参加してよかったと感じられるかどうかは、継続性の観点からも重要です。

第1期の目標は、5年間でシリコンバレーにおいて優れた事例を着実に積み上げることです。5年後に参画企業から「US-JOINTを継続しよう」と言ってもらえる状態を作ることが、現時点での最大の目標です。

今後、半導体業界におけるコンソーシアムの役割は、どのように変化していくと考えていますか?

阿部:半導体の技術はますます高度になっており、かつより速いスピードで進化が求められるトレンドにあります。1社では解決できない高難度の技術課題に対して、複数の企業が共創する必然性は今後さらに高まっていくでしょう。 US-JOINTが明確な成果を実現し、業界に共創の流れが広がっていくことを期待しています。将来的に拠点が増えることへの期待もありますが、まずは現在の拠点で結果を出すことに全力を尽くします。

最後にお客様へのメッセージをお願いします。

Seeing is believing.

阿部:実際に拠点を見ていただければ、先端パッケージの一貫ラインが目の前にあります。設備を揃えて、US-JOINTの活動に本気で取り組んでいるとご理解いただけるはずです。 US-JOINTはイノベーションの発信地となります。ご興味があれば、ぜひ見学に来てください。材料・装置メーカーが一丸となって、お客様の新しいチャレンジに伴走する準備ができています。

Profile

株式会社レゾナック・ホールディングス 執行役員 半導体材料研究開発統括

半導体、基板、ディスプレイ向け電子材料の研究開発(R&D)および戦略立案を牽引。これまでに、エレクトロニクス開発センター長やパッケージングソリューションセンター長を歴任し、オープンイノベーションを通じた先端パッケージング技術の開発に貢献。特に2021年には、2.xDおよび3Dパッケージング技術の確立を目指すコンソーシアム「JOINT2」の発足を主導した。さらに2025年には、「US-JOINT」および「JOINT3」の立ち上げも率いている。

東京工業大学大学院化学工学専攻修士課程修了。
英国オックスフォード大学経営大学院エグゼクティブMBA(経営学修士)修了。

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阿部 秀則 LinkedIn

 

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