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半導体パッケージ"共創"の最前線 ──なぜシリコンバレーに「US-JOINT」を立ち上げたのか
2026年07月10日
2026年4月20日(現地時間)、米国・シリコンバレーでUS-JOINTがオープニングを迎えました。US-JOINTは、株式会社レゾナックが主幹し、日米の材料・装置メーカーなど12社が参画するコンソーシアムで、データセンターを主用途とする次世代半導体パッケージのコンセプト検証に特化したプロジェクトの展開を予定しています。
なぜ、米国に企業主体のコンソーシアムを立ち上げたのか?その展望は?US-JOINTの企画からオープニングを主導し、レゾナックで半導体材料研究開発統括の執行役員を務める阿部 秀則(以下、阿部)が、その真意を2回に分けて語ります。
前編となる本記事では、US-JOINTを立ち上げに至った背景と、材料メーカーであるレゾナックが見据える半導体パッケージの未来に迫ります。
微細化の限界と検証の壁── US-JOINTが生まれた背景
US-JOINTを立ち上げた背景には、どのような課題があったのでしょうか?
阿部:半導体の微細化が物理的な限界に近づくなかで、性能向上の主戦場は後工程、つまりパッケージ技術に移っています。 高性能な先端半導体では動作にともなう発熱への対処が必要となり、放熱にはパッケージの工夫が有効です。 また、AI向けサーバー向けのパッケージでは、より多くのチップが実装されて大型化が見込まれます。従来のパッケージは50×50mm程度でしたが、現在はすでに100×100mm程度のものが登場し、大型化のトレンドは続きますので、反りへの対応が不可欠です。
パッケージ技術は、単一の材料や工程だけで組み上げられるものではなく、材料メーカー同士、さらには装置メーカーを加えての共創が望ましいと考えています。そして共創することで、各社の部分最適ではなく、パッケージ技術を俯瞰して全体最適が可能になります。
また、半導体パッケージのコンセプト検証に時間を要することに課題を感じていました。なぜなら、お客様はテストビークルを材料・装置メーカーの拠点に送った上で、現地に出向いて検証を行い、しかも工程の順に拠点を次々に移動するという、プロセスの繰り返しだったからです。

株式会社レゾナック・ホールディングス
執行役員 半導体材料研究開発統括
阿部秀則
レゾナックは材料メーカーですが、半導体製造装置を保有してテストビークルを作製し、お客様の使い方に近い形で材料を評価することに長年重点を置いてきました。その一環として、日本では新川崎 (神奈川県・川崎市) に先端パッケージの試作ラインを整備した「パッケージングソリューションセンター」を立ち上げました。当社以外の材料・装置メーカーからも共創を募ることで、評価プラットフォームを一か所に集約し、お客様に提供する取り組みを続けています。
US-JOINTが目指すのは、このような取り組みを米国で展開することです。米国のファブレスやハイパースケーラーといったお客様に向けて、長距離移動や輸出入にともなう煩雑な手続きなく、先端パッケージのコンセプト検証を一か所で完結できる環境の提供を目指しています。
米国・シリコンバレーを選んだ理由を聞かせてください。
阿部:シリコンバレーはコストが高く、化学物質規制も厳しいですが、新しいコンセプトを生み出すファブレスやハイパースケーラーが集中している地域です。そのような地に拠点を構えることで、先端パッケージのコンセプト検証期間を従来の6ヶ月から1ヶ月に短縮し、徹底的に迅速化します。これによりAIの進化を支える新たな技術開発サイクルの確立に貢献していきます。
また、一つ屋根の下でエンジニア同士がテストビークルや試作現場を見ながら、対面でアイデアを議論できる環境は、微妙なニュアンスを相互に理解しやすくイノベーションにつながるはずです。 さらに、材料・装置メーカーにとっては、お客様のエンジニアがあたためていたアイデアに触れる機会にもなり、将来のニーズを早期に捉え、パスファインディングの質を高めることが可能となります。
半導体業界では、新しい技術が生まれた際、その時点で使われていた材料がデファクトスタンダードになる傾向があります。US-JOINTは、そのようなポジションを先行して獲得するための拠点としての役割も担っていきたいとも考えています。
米国のファブレスやハイパースケーラーから、どんな課題や要望がレゾナックに寄せられていましたか?
阿部:以前から、「材料がどういったパフォーマンスをもたらすのかを、実際に先端パッケージを組んで検証してほしい」というご要望を受けていました。従来のパッケージは、1つのチップを1つの基板やリードフレームに乗せて完了ですが、先端パッケージでは構造が複雑化しています。HBM(High Bandwidth Memory)は複数のチップを縦方向に積み重ねた2.5D実装では、パッケージの上にインターポーザー(中間配線基板)を設置し、その上にロジックチップとHBM、メモリを搭載します。インターポーザーでは、伝送距離が短いほどデータを高速に処理できるため、いかに配線長を短くできるかが重要となりますが、その性能は実際にパッケージを組んで検証する必要があります。 つまり、お客様は材料そのものが欲しいわけではなく、その材料がもたらす性能を求めています。

2.5Dの新世代パッケージ
これまで国内のパッケージングソリューションセンターで評価プラットフォームを提供してきましたが、米国企業のエンジニアが日本を訪れるのは容易ではありません。出張に数日から1週間を要し、その時間を取ることが難しいからです。テストビークルを見ていただければ、性能やアイデアを十分に伝えられる自信があっただけに、こうした状況に当社としてはもどかしさを覚えていました。
そこで、お客様の拠点の近くに評価プラットフォームを集約し、提供する場を作る構想を考え始めました。お客様にとっては約30分の車移動で、テストビークルに触れながら、材料・装置メーカーとともに議論ができる場です。このような環境はこれまでシリコンバレーには存在しませんでした。
部分最適から、全体最適へ ── US-JOINTが目指すもの
US-JOINTにはレゾナックを含め、日米の材料・装置メーカー12社が参画しています。参画企業にとってこのコンソーシアムには、どんな期待があるでしょうか?
阿部:US-JOINTは、ファブレスやハイパースケーラーが持ち込むアイデアの実現に向けて、お客様、材料・装置メーカーの複数社が共創し、最適解を導き出す場です。従来の各社による部分最適化ではなく、半導体パッケージにおける全体最適化を前提にした共創を目指していきます。
US-JOINTがシリコンバレーにおける1つのハブとなり、参画企業の枠を越えてイノベーションを実現する未来を思い描いていまです。参画企業にとっても、これまで触れられなかった初期段階のアイデアに接する機会となり、これまで接点が少なかった企業との連携が得られることもあるでしょう。 参画企業にはぜひ、US-JOINTを最大限活用してほしいと思っています。このようにお客様と参画企業が一丸となってイノベーションのために全力を尽くし、業界に新しい開発プロセスと、それにともなう成果を提供していきたいと考えています。

イノベーションの実現を目指す
Profile
株式会社レゾナック・ホールディングス 執行役員 半導体材料研究開発統括
半導体、基板、ディスプレイ向け電子材料の研究開発(R&D)および戦略立案を牽引。これまでに、エレクトロニクス開発センター長やパッケージングソリューションセンター長を歴任し、オープンイノベーションを通じた先端パッケージング技術の開発に貢献。特に2021年には、2.xDおよび3Dパッケージング技術の確立を目指すコンソーシアム「JOINT2」の発足を主導した。さらに2025年には、「US-JOINT」および「JOINT3」の立ち上げも率いている。
東京工業大学大学院化学工学専攻修士課程修了。
英国オックスフォード大学経営大学院エグゼクティブMBA(経営学修士)修了。
