レゾナック、島津製作所と特許ライセンス契約を締結

~顕微鏡計測における新指標を提供、材料科学分野の解析に貢献~

2025年03月04日
株式会社レゾナック・ホールディングス

株式会社レゾナック(社長:髙橋秀仁、以下、当社)は、表面分析手法の一つである走査型プローブ顕微鏡(Scanning probe microscopy、以下、SPM)※1に関する特許技術について、2月14日に株式会社島津製作所(社長:山本靖則、以下、島津製作所)と、非独占的実施権※2によるライセンス契約を締結しました。本技術は、新しい計測指標を提供する技術で、今後、島津製作所が販売する走査型プローブ顕微鏡のオプションソフトウェアとして、当社技術の搭載が検討される予定です。当社は、本技術の活用を通し、材料科学分野の解析に貢献していきます。

ナノテクノロジーの進展は、半導体、高分子、バイオ、食品など、あらゆる分野において加速しており、いずれの分野においても、優れた材料を創出したり、材料が持つ機能の発現メカニズムを調べたりする上で、材料表面を分析することは非常に重要です。
SPMは、ナノメートルオーダーで材料表面の微細な形状を調べることができる顕微鏡で、産業界にも広く普及しています。このSPMは、カンチレバーと呼ばれる板バネの先端についた針(以下、探針)を材料表面に近づけて、材料表面から受ける力を利用し、表面の形状を顕微鏡像として出力します(図1)。SPMの測定方法をフォースカーブモード※3にすると、形状に加え、凝着力※4や弾性率※5を顕微鏡像として出力できますが、従来技術では、鮮明な画像が得られなかったり、データの解釈に注意を要したりすることがありました。

当社は、SPMフォースカーブ測定時に、探針と材料表面との間に引力が働く距離に着目しました。この距離を「破断長」と定義し、大量のデータを効率よく解析できる技術を見出して、容易に破断長像として出力できるようにしました。破断長像では、凝着力像や弾性率像では得られない鮮明な像が得られるとともに(図2)、観測される力が「強いか・弱いか」だけでなく、「強く長いか・強く短いか※6」という解析ができるようになります。破断長は、凝着力や弾性率と同様に材料表面の特性を表す基本的な計測指標として活用できることから、当社は、2022年に関連技術の特許を取得しました。本技術は、種々の材料表面に適用することができ、特に高分子や柔らかい材料表面の分析において有効です。

図1 SPMの装置略図

 

図2 高分子表面の観察例(左 従来技術:凝着力像、右 今回技術:破断長像)

島津製作所は、国内大手の分析・計測機器メーカーで、SPMをグローバルに提供しています。このたび、本技術の像の鮮明さ、および汎用性を評価いただき、本契約締結に至りました。本技術は、島津製作所が販売するSPMのオプションソフトウェアとして搭載が検討される予定です。

今後も当社は、知的財産を足掛かりとした「共創」を進め、さまざまな社会課題の解決が行える「共創型化学会社」としての成長をめざします。

  • ※1 微小な針を試料表面に近づけて,試料と針の間の力学的・電磁気的相互作用を検出しながら走査し,試料表面を三次元的に観察する顕微鏡の総称
  • ※2 特許権者(レゾナック)が第三者に与える特許発明を実施できる権利
  • ※3 SPMの探針を試料表面で垂直にスイープさせ、試料とカンチレバーとの距離を変えながら力を測定する手法
  • ※4 二つの表面が互いに接触したままでいようとする力
  • ※5 材料の変形のしにくさ(材料のかたさ)を表す値。弾性率が大きい材料ほど変形しにくい
  • ※6 強く長いは、言い換えると粘り強くてなかなか離れない状態、強く短いは、言い換えると接触していれば強い状態

 

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