物質の特性解明のカギ握る「最安定構造」、熟練研究員の半分の時間で特定

~「配位結合を有する化学物質」でも探索可能なシステムを開発~

2022年09月06日
昭和電工株式会社
Quantum Simulation Technologies, Inc.

昭和電工株式会社(社長:髙橋 秀仁)とQuantum Simulation Technologies, Inc.(CEO兼共同創業者:塩崎亨、以下QSimulate)の両社は、QSimulateの量子化学計算自動化プラットフォームについて、材料開発における量子化学計算ワークフローの工数を半分以下に削減できる新システムを共同開発しました。従来難しかった「配位結合を有する化学物質※1」を含め、物質の特性を解明するための鍵を握る「最安定構造※2」の特定が、自動でできる新システムです。従来の手動による探索に比べて3倍の確率でより安定的な構造を発見・特定でき、工数は0.45倍に削減できることが分かりました。

従来の課題

材料開発においては、化学物質の特性を解明するため、その化学物質が最も安定する最安定構造を特定することが鍵を握ります。しかし、化学物質の最安定構造は、それを構成する原子数が増加するにつれて候補となる構造も爆発的に増加し、特定するための計算が複雑化する傾向にあります。
例えば、ビタミンB1の活性型であるチアミン二リン酸(C12H19ClN4O7P2S)の最安定構造の探索は、1つの構造を計算するのにかかる時間を12時間として約1年半かかります。こうした特定作業は、熟練研究員の勘と経験を元に効率的に実施していましたが、それでも非常に大きな労力と工数がかかっていました。さらに、これらの単純作業に専門家が拘束されることで、創造的な作業に注力できない問題が生じていました。

今回の解決策

この問題を解決するため用いたのが、QSimulateが開発したソリューション、「QSPマテリアルズ※3」です。QSPマテリアルズは、量子力学シミュレーションに関するカスタムメイドのワークフロー自動化を可能とするソリューションで、今回、このプラットフォームにおける新システムを両社で共同開発しました。この新システムでは、これまでできなかった配位結合を有する化学物質についても、最安定構造の自動探索が可能で、調べたい化学物質について、無作為に作成した1構造をインプットしさえすれば、最安定構造のアウトプットまで自動で行うことができます。

今回実現したこと

この新システムを用いることにより、従来かかっていた工数を半分以上削減できることが判明しました。さらに、手動では発見できなかったより安定的な構造を発見する可能性を向上できることを実証しました。
具体的には、100原子以上含まれる25個の化学物質に対して、従来の手動による解析手法と、QSPマテリアルズによる解析を試みました。従来の手法では、1種類の化学物質に対して、熟練研究員が経験と勘を元に最安定と考える構造を10構造作成し、量子化学計算※4を行うことで構造を最適化して、その中で最もエネルギー的に安定な構造を最安定構造と確定しました。一方、QSPマテリアルズは、無作為に作成した化学物質の構造を1つ入力すると最もエネルギー的に安定な構造1つを自動的に出力します。
この2つの方法の結果を比較したところ、QSPマテリアルズは、手動による最安定構造の探索よりも3倍以上の確率でよりエネルギー的に安定な構造を発見できることが実証されました。また、QSPマテリアルズによる工数削減率は、0.45となり、従来かかっていた工数を半分以上削減できることが判明しました。

今回、新たな材料開発のための最安定構造自動探索機能の性能を実証できたことで、今後は社内の他の材料開発にも適応を広げることを考えており、より多くの創造的な結果に結びつくと期待しています。このような新システムの開発を進め、さらに競争力強化に繋げていきます。

昭和電工 会社概要

会社名
昭和電工株式会社
所在地
東京都港区芝大門一丁目13番9号
設立
1939年6月
代表者
代表取締役社長 髙橋 秀仁
事業内容
有機・無機化学品、セラミックス、電子材料、アルミニウムなどの製造・販売
URL
https://www.sdk.co.jp/新規ウィンドウで開く

QSimulate 会社概要

会社名
Quantum Simulation Technologies, Inc.
所在地
20 Guest St Suite 101, Boston, MA 02135 USA
設立
2019年
代表者
CEO兼共同創業者 塩崎 亨
事業内容
プロダクトを通して、マテリアルズ・化学企業R&Dのための量子力学に基づく様々なソリューションを提供
URL
https://qsimulate.com/新規ウィンドウで開く
  • ※1 配位結合:原子間での電子対の共有をともなう化学結合のことを共有結合と言いますが、その共有結合のうち、一方の原子だけから電子対が提供されてできる結合のことを指します。
  • ※2 最安定構造:化学物質において、最もとりやすい分子の立体構造を指し、その化学物質の大多数がその構造をとっていると考えられるものです。分子の持つ自由エネルギーは構造によって変化し、その自由エネルギーが小さい方がより安定した構造となります。
  • ※3 QSPマテリアルズ:量子力学シミュレーションに関する、革新的なソリューションです。分子構造決定や、化学反応解析、半導体の特性評価、バッテリーの最適化など、多数の機能が提供されています。(https://qsimulate.com/qsp新規ウィンドウで開く)
  • ※4 量子化学計算:原子や分子の構造や特性を、電子の状態から解析する計算手法です。本件では、自由エネルギーが小さくなるよう、原子位置、分子構造に微小な変位を与えて、最適な構造を得るための手法として用いています。

以上

◆お問合せ先:
ブランド・コミュニケーション部 広報グループ 03-5470-3235

Quantum Simulation Technologies, Inc. Department of Business Development
+1-847-626-5535