CEOメッセージ
成長と選別の経営で、世界のトップを目指し、社会を変える。
長期ビジョンの第一段階として徹底した企業変革を推進
2022年に私がトップに就任し、4年の時が経ちました。昭和電工と日立化成を統合しレゾナックを立ち上げた第二の創業期の長期ビジョンでは、2030年に "日本発の世界トップクラスの機能性化学メーカーの実現"を掲げて、変革を推進してきました。改革の柱は、「事業ポートフォリオの改革」「人的資本経営の徹底」「企業文化の醸成」です。
「事業ポートフォリオの改革」では、各事業を「戦略適合性」「採算性と資本効率」「ベストオーナー」という指標で評価し、基準に合わない事業は譲渡してきました。今年中にパーシャル・スピンオフ完了を目指している石油化学事業を含めると、4年間で18事業を売却・スピンオフしたことになります。しかし、スピーディーな構造改革の成果は、経営資源を成長事業に集中させる準備にとどまりません。「準備をしてから取り組む」のではなく「走りながら考える」という私のマインドが伝わり、覚悟を持った人材が増えたことに手応えを感じます。世界が急速に変化する中で、当社だけが同じことを続けられるわけがない。世界トップクラスの機能性化学メーカーになるには、変化への覚悟が不可欠です。「レゾナックは、時代に合わせて変革する会社」という覚悟を持った従業員が増えたことは、次なる成長の礎になるでしょう。

「人的資本経営の徹底」で重視してきたのは、社員一人ひとりの自律と、共創人材の育成です。私は年間約70拠点に足を運び、100回以上の「ラウンドテーブル」「タウンホールミーティング」を実施してきました。4年間を通じ膨大な時間を費やしながら、従業員との対話に奔走した結果、「パーパス*1を自分自身で持ち、強い想いを実現すべく、仲間と共にバリュー*2を発揮する」人材は確実に増えています。新たにコンソーシアム(JOINT3)を立ち上げるため、一人の役員が世界中を飛び回って仲間を集めてきた行動に心動かされ、私も「夢を買う」と多額の予算を投じる決断をしました。また、旧日立化成の摩擦材事業の研究開発者が旧昭和電工のアルミ事業を視察し、「コラボレーションをしたら絶対にすごいことが起こる」と、新たなプロジェクトがスタートした事例もあります。そして、AI半導体向け材料として、当社の主力製品に成長したNCF*3では、課題となっていた検査工程に、全くの別部門であるハードディスクメディアの画像解析技術を導入することで、垂直立ち上げを実現しました。これらはいずれも、たった一人の強い想いから始まったものです。社内で広く培われた専門分野の垣根を超える共創マインドは、今後も当社の成長の武器になるでしょう。
- *1 パーパス:化学の力で社会を変える
- *2 バリュー: プロフェッショナルとしての成果へのこだわり、機敏さと柔軟性、枠を超えるオープンマインド、未来への先見性と高い倫理観
- *3 NCF:絶縁接着フィルム
「企業文化の醸成」においては、4年前よりバリューの重要性を強調してきました。事業ポートフォリオが最適化されても、その事業で従業員がバリューを発揮できなければ、成長には結びつきません。そのため私は、初年度に「パーパスに共感し、バリューを発揮する人にこそ、会社にいてほしい」と宣言し、皆がバリューを理解・発揮できるよう、HR部門と共に現場との議論を繰り返してきました。4年間の活動で社内に築き上げられたのは、バリューの"相場感"です。
内定者へも「レゾナックは終身雇用の会社ではない。しかし必ず世界のどこへ行っても通用する人間に育て上げる」と伝えたところ、大いに賛同を受けました。次のフェーズへ進む条件はそろいました。
AI社会の到来を前提に"戦略×個の力×企業文化"を最大化
レゾナックの企業価値は、「戦略×個の力×企業文化」の掛け算を大きくすることで高まり、すでに実績としても表れています。
2025年をゴールとした長期ビジョンで掲げたKPIは「売上1兆円超」「EBITDAマージン20%」「PBR 1倍超」です。2022年の段階で売上高は1.4兆円近くありましたが、あえて「売上1兆円超」としたのは、EBITDAマージンを重視したためです。EBITDAマージン20%の到達には、売上規模が大きく営業利益率が低い事業の整理は必須であり、当時から石油化学事業の独立を考えていました。そして現在(*2026年6月末)、売上とPBRは目標を達成しています。2025年度のEBITDAマージンは15.1%となりましたが、石油化学事業のパーシャル・スピンオフが完了すれば20%に達する見込みです。構造改革の成果を資本市場の皆さまにご評価いただき、現在(*2026年6月末)の株価につながっていると認識しています。
他方、変革中に、外部環境に大きな変化が生じました。AIの飛躍的な進化です。生成AIに不可欠な先端半導体需要の急増は、当社へ大きなチャンスをもたらしています。また、各事業の研究開発や生産性向上においても、AIは私たちの味方になるはずです。一方、人間の役割もまた、大きな変化を迫られています。AIには、できないことが三つあります。「志を持つ」「経験に基づく価値判断を下す」「0→1のイノベーションを起こす」ことです。まさにレゾナックが重視するパーパス、バリュー、共創マインドと言い換えられますが、これらの力を持たない人材は、AIで代替されるでしょう。今後は、個の力を引き上げることが、さらに重要となります。
成長を実現するため超えるべき三つのハードル
成長の基盤は整いました。2026年、ここから始まるのは、成長を実現するフェーズです。CEOである私の仕事は、レゾナックの企業価値を最大化することです。社会や環境に貢献し、世界トップクラスの機能性化学メーカーを目指す。そのために超えなければならないハードルこそが、マテリアリティと捉えています。社会価値創造、事業基盤、人と文化に関するマテリアリティ*に対し、経営アジェンダ施策とKPIを設定し、成長実現へ向けた取り組みを開始しました。成長を描く、広げる、支えるという視点から、三つのSay & Doをご説明します。
- * 「 イノベーションと事業を通じた社会価値の創造「」成長を支える強靭な事業基盤」「自律的で創造的な人材の活躍と共創文化の体現」

事業ポートフォリオ最適化による資本効率向上
"フェーズ2"の一つ目は、成長を"描く"。半導体・電子材料領域を成長の起爆剤と位置付け、各セグメントの収益性を抜本的に改善します。
レゾナックは機能性材料の会社であり、有機のレジン(樹脂)と無機のフィラー(粉)の豊富な知見、混ぜ合わせる技術を、価値創造の源としています。つまり、技術の出口は無限に広がっているわけですが、企業価値の最大化という観点に立つならば、今注力すべきは半導体材料です。しかし、将来例えばドラえもんが流行すれば、"ドラえもん"をつくる機能性材料を開発すればいい。これまで培ってきた技術基盤と共創を掛け合わせ、新たな機能を生み出し続けられると考えています。
では、半導体市場はいつまで成長するのか。現在の生成AIトレンドがいつまで続くかは不明ですが、半導体需要にはサイクルがあることから、一時的に下落する可能性も高いでしょう。しかし大きなボラティリティとともに伸び続けるのが、半導体の特徴です。そして"谷"の後に訪れる"山"が、前の山よりも大きいからこそ、半導体市場分野は成長を続けてきました。投資額の回収期間が長くなることを恐れ、投資を躊躇すると、機会損失が生じるため、積極的にリソースを投下すべきです。判断には勇気だけでなく、覚悟と信念がなければ、世界トップクラスにたどり着けません。
100年に一度の変革期といわれる自動車分野も、技術の出口として有望です。自動車は他業界の参入が難しい分野ですが、パワーモジュールや熱マネジメントなど、高度な材料技術が必要な分野にアプローチすれば、当社の存在感を示せるはずです。 一方、長期成長が見込めず、ボラティリティも高い石油化学や黒鉛電極事業は、事業構造の見直しを徹底しなければなりません。また自動車分野でも、バックドアなどの樹脂成形品は、材料技術というレゾナックの戦略適合性から外れるため、事業売却を実施しました。
AI向け材料の成長と事業ポートフォリオの最適化により、半導体・電子材料セグメントの売上を売上構成比50%超にすることを目指しています。EBITDAマージンにおいても、半導体・電子材料セグメントでは20%を大幅に上回っています。他セグメントについて事業構造を改善し、営業利益率を高められれば、全社EBITDAマージンは底上げできると見込んでいます。
何より、「半導体材料にフォーカスした機能性材料メーカー」というポジションが確立されれば、企業価値が大きく向上します。ここで期待できるのが、他のプレイヤーとの"塊"の形成です。半導体材料に関する日本のメーカーは、高水準の技術を有するものの、売上規模としては大きくなく、AI需要に応じた大規模投資が難しい状況です。しかしメーカー同士が連携し、場合によっては統合すれば、技術協力や投資の補完ができるかもしれません。一定の時価総額に達すれば、海外巨大企業による同意なき買収の防波堤にもなります。相乗効果による半導体産業全体の発展は、日本にとってもプラスに働きます。こうした中で、レゾナックがリーディングカンパニーとなれるよう、事業成長を加速させていきます。
共創イノベーションによる事業成長力強化
二つ目は、成長を"広げる"。培われた共創マインドを軸に、社内外のネットワークを最大化し、半導体材料を中心に市場をリードしていきます。
当社がこれまで半導体材料分野で成長してこられたのは、顧客理解という強みがあったからです。半導体メーカーではないレゾナックは、TSMC、NVIDIA、インテルなどの主力プレイヤー、GAFAMなどのハイパースケーラーなど、多方向に接点を持っており、業界のニーズを先回りして収集できます。蓄積した情報から、半導体進化における5年先のロードマップを描き、逆算的に材料の研究開発を進めることで、お客さまへの迅速な提案を実現してきました。
ただし、最新情報を持っているのは、レゾナックだけではありません。材料、装置、設計の各分野で、世界のトップ企業と仲間になれば、より高度な知見を共有できるはずです。こうした考えのもとで2025年に設立したのが共創型評価プラットフォーム「JOINT3」です。材料開発を進めるパネルレベル有機インターポーザー分野は、データ通信の容量増加、加速化に伴い需要が急拡大する、ゲームチェンジャーと期待されています。28社の参画企業が共創することで、先端半導体パッケージに革新をもたらすことができるでしょう。
当社はこれまでも「JOINT」「JOINT2」を設立した経験から、成果や特許の管理など、コンソーシアム運営のノウハウを蓄積してきました。この強みを生かして設立した、日米の材料・装置メーカーなど12社が参画する「US-JOINT」は、2026年に本格稼働を開始しました。最大のポイントは、米国・シリコンバレーに拠点を構えたこと。影響力を拡大させるGAFAMは、半導体パッケージの新コンセプトを次々と生み出します。これらを受け止める体制をコンソーシアムとして築き、試作や実験を担うバックヤードとして機能させるのが狙いです。次のAI時代を主導する、ハイパースケーラーの強固なパートナーになることは、需要の先取りにもつながります。
共創文化を核に持続成長の基盤を確立
三つ目は、成長を"支える"がテーマです。当社のエンゲージメントスコア「パーパス・バリューの実践度」は、2022年が34%、2024年は60%と大幅に向上しました。しかし2025年は2024年と同水準にとどまっています。次のステージで重要になるのが、従業員が"ハピネス"を感じられることです。定着したパーパスとバリューの相場感をベースに、組織改革を実行に移します。
その際の最大のハードルは、バリューを発揮できない人が、社内に残っていることでしょう。ハピネスは、周囲をアンハッピーにさせる人がいない状態で高まります。アンハッピーにさせる人が10人のうち1人でもいると、周りのモチベーションが格段と下がることは、エンゲージメントサーベイの結果からも明らかです。そして現場へのヒアリングからは、周囲をアンハッピーにさせる人は概ね、バリューを発揮できない人であることが見えています。こうした経緯から、2026年には「バリューを発揮できない人には、しっかりとフィードバックし、自らを振り返ってもらう。それでも改善に至らない場合は、その人の活躍にふさわしい場を検討する支援を行う」旨を宣言しました。かなり厳しい内容ではありますが、避けて通ることはできません。一方で、この宣言に対して社員の反応はポジティブなものが多かったです。パーパスやバリューを大切にしようという思いが広がっているのでしょう。
日本の企業は、ネガティブなフィードバックを行うこと自体に、大きな抵抗感を抱きがちです。雇用に関しても、慎重さが重視されるあまり、適切な指導・対処ができない状況は間違っていると考えます。バリューを発揮できない人に対しては、まずはしっかりと自覚してもらい、改善プランの策定と行動促進を繰り返し、それでも結果が伴わない場合には、社外を含めて本人の強みがより活きる役割や環境を検討しなければならない。個人の価値の否定でなく、より良い成長と活躍の機会を見つけるための真摯なコミュニケーションこそ健全であり、経営者は覚悟と信念を持って遂行すべきです。
改革を具体的に進めるためには、バリューに対する指標を示し、対象者の行動と照合しながら、周囲から360度フィードバックを実施するなど、公平かつ客観的なアプローチが必要です。大変な作業ではあるものの、好き嫌いのような主観的指標は排除されるため、納得感の高い結果を得られるはずです。
同時に、バリューを発揮する従業員が、もっとやりがいを感じられる組織を目指します。人間は、他者とつながることで幸せを感じる生き物であり、仲間と達成感を味わえる会社は、素晴らしい場です。その魅力を最大化するためには、挑戦に共感するマネージャーを育てなければなりません。研修体制などを強化するとともに、周囲を巻き込む共創型人材をモデルケースとして示すなど、環境整備を推進していく方針です。また、これらの基盤として、心身ともに健康であることは何よりも重要であり、健康経営への取り組みにも一層加速していきます。
そして、新たな制度設計にも着手します。特に今回新たに導入するのがプロジェクト型組織です。業務の特性に応じて組織形態を使い分け、再現性や品質の安定が重要な領域では従来のヒエラルキー型組織を、迅速なイノベーションや改革が求められる領域では、部門や課の壁を越えたアジャイルなプロジェクト型組織を選択できるようにします。プロジェクト型組織では、プロジェクトを担う「プロジェクトマネージャー」と人材を管理する「ピープルマネージャー」を配置することで、一人の人材が複数のプロジェクトで力を発揮できるような体制を目指します。注力課題に必要な人員を投入すれば、ゴー
ルやミッションが明確になり、さまざまな施策が活発化するはずです。分野横断型の共創も、さらに増えていくでしょう。
人や文化に関する改革には、反発や不安がつきものです。しかし、過去4年間の取り組みにより、「レゾナックなら、これくらいはやる」と、変化への柔軟性も育まれています。それぞれの意向の尊重、段階的なトライアル、着実な手続きを前提にしながらも、大胆な改革を進めることで、皆のハピネスを追求していきます。
人々が幸せに暮らせる社会と美しい地球を次の世代へと手渡していく
フェーズ2で実現する成長は、未来社会に資するものでなければなりません。レゾナックが共創で実現するのは、「人々が幸せに暮らせる社会と美しい地球」です。戦争や気候変動など課題はありますが、私は今の地球が嫌いではありません。良い形で次世代に手渡したい。使命を果たすために大切なの
は、利益創出とサステナビリティを両立させる姿勢です。
まず重要なのは、事業を通じた社会貢献です。今後の技術インフラになるAIは、多くの領域で社会課題を解決していくでしょう。同分野に貢献するレゾナックの技術力は、人類の発展に寄与するものです。このように、活動の先にある社会を見据える視点を、全ての事業に落とし込み、新たな価値を創造していかなければなりません。
また、サステナビリティの取り組みでは、共創マインドを応用したいと考えています。基礎化学品などを製造しCO₂排出量が多い川崎事業所では、経済産業省の事業採択を受け、水素混焼ガスタービンの一部導入を決定しました。また、同事業所では使用済みプラスチックからアンモニアや水素を生成する事業「ガス化ケミカルリサイクル事業」を20年以上推進していますが、ケミカルリサイクル技術は世界的に見ても先進的であると自負しています。こうした成果を活かし、川崎市とも協力しながら、環境に配慮した都市型事業所へと進化させることで、持続可能な社会における一つのモデルを示していきます。
そして、レゾナックの徹底的な改革は、JTC*とも揶揄される、日本の産業界における保守的な意識を刷新すると考えています。現に、他社の経営者からの相談が増えており、社外からの注目を実感しています。HR業界では、「革新的すぎて真似できない」と言われることもあるようです。将来、日本産業の歴史を振り返った際に、「レゾナック以前・以後で変わった」と言われる存在を目指したい。CEOが覚悟と信念を抱き改革を敢行する姿勢は、長らく停滞する日本の産業にも、刺激を与えると信じています。
レゾナックは次の成長へとかじを取ります。本気なのは、私だけではありません。現場でロードマップを描く社員と接するとき、鮮烈な印象を受けるのは、彼らの目の輝きです。世界トップクラスの企業と比較しても、もはや負ける気がしません。
ぜひ、次なるフェーズにご期待ください。
- * Japanese Traditional Companyの略。日本的経営を行う企業
- RESONAC REPORT 2026(統合報告書)
代表取締役社長 CEO