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「半導体って、とにかく超ヤバいんすよ!」 Z世代社員の主張が本当だった話

2026年06月09日

みなさんはひとつの半導体が完成するまでに、どのような工程を経て作られているか知っていますか? 

そもそも、髪の毛よりもずっと小さな半導体の内側の世界。その製造過程には、工数の複雑さはもとより、“超”が何個もつくほど繊細かつ、常軌を逸したレベルの気遣いや工夫が盛り込まれています。もはやこれは製造業というより、人類の英知を総動員した「極限の芸術」と呼ぶべきかもしれません。 

ここではそうした“超”小さな世界について熱弁してくれた、とあるZ世代社員の主張を覗いてみましょう。

オフィスに響く「超ヤバいんすよ!」

ある日の朝。某IT企業の打ち合わせにて。静まり返った室内で、電子工学のディープな世界を覗き込むことが生きがいのような20代社員、田中の声だけが響いていた。

「みなさん、半導体半導体って簡単に言いますけどねぇ! 半導体って、僕たちが思ってる以上に、マジで超ヤバい技術なんですよ。“超”が渋滞する、もはやホラーの領域なのわかってます!?」

部長は読みかけの資料から顔を上げ、目を丸くして尋ね返した。

「田中、今は新製品の企画案の話をしているんだけど……。まあいいか、その『ホラー』な理由を教えてくれないか」

部長のその一言は、田中に力説させるきっかけを与えてしまった。

“超小さい”どころじゃない。指先ほどのチップに、髪の毛の約1万分の1の線が何十億本も!

田中「まず、サイズです!  部長、髪の毛の太さってどれくらいか知ってます?」

部長「一般的には0.08mmから0.1mm……つまり、大体100マイクロメートルくらいだろう?」

田中「正解ですけど、一発で答えられるのは部長もなかなの猛者ですね! じゃあ、今度は最新の半導体の回路の太さは?」

部長「よくわかんないけど、指先サイズのチップもあるぐらいだから、髪の毛の1/100くらいの細さとか?」

田中「残念! 不正解です。正解は髪の毛の太さの数万分の1。『3ナノメートル』とかの世界なんです。つまり、赤血球(約8マイクロメートル)よりも、インフルエンザウイルス(約0.1マイクロメートル)よりも、春先に私たちを苦しめる花粉(約30マイクロメートル)よりも、圧倒的に小さい。もはや顕微鏡でも『見えない』レベルなんです!」

部長「ウイルスより小さいって、全然想像つかないけどな」

田中「そう、そこなんです! そんな想像もつかない回路が、小さな半導体のチップのなかにあるってことを僕たちはもっと認識すべきだと思うんですよ。先端プロセッサでは、1,000億個を超えるトランジスタが高密度に集積されている。それって地球の人口どころか、銀河系の星の数に迫る勢いなんですよ」

【解説:ナノメートルの極限】
田中さんが言う「3ナノ」や「2ナノ」といった数字は、現在の半導体業界では「プロセスノード」と呼ばれます。実はこれ、特定の部品のサイズを指すのではなく、技術世代の「名称」に近いものになっています。しかし、実際の加工精度が原子レベルに達しているのは事実です。例えば2ナノメートルの線幅は、シリコン原子が10個程度並んだだけの太さしかありません。
これ以上小さくすると、電気が勝手に壁を通り抜けてしまう「量子トンネル効果」という物理現象が発生するため、現在は新素材や「GAA(Gate-All-Around)」という立体構造を採用することで、物理の限界に挑み続けているのです。

路線図や地図よりも超〜複雑。入り組んだ設計図は、もはや都市計画のレベル!

田中「で、その何十億本もの回路がどうなっているか! 部長、東京の電車の路線図って、初めて見る人には迷宮ですよね?」

部長「(え、打ち合わせにも付いてくるの……?)ああ、新宿駅や大手町駅の立体構造なんて、俺もいまだに把握できてないほどだよ」

田中「部長、全然ダメじゃないですか。半導体の回路設計図に比べれば、新宿駅なんて真っ直ぐな一本道レベル。最新の高性能GPUには、1,000億個を超えるトランジスタが搭載されています。しかも部長、建材にあたる素材も超異次元です。ナノレベルで磨き上げる研磨剤がなければ、この緻密な設計図もただの夢物語で終わっちゃいますからね!」

部長(なんか、俺がディスられてる……?)

田中「それらを結ぶ配線は、多層構造……つまり何十階建てもの超高層ビルが、密集した都市の地下から地上まで複雑に絡み合っているような状態なんです。それをナノメートル単位の精度で、一本のミスもなく設計する。これ、もはや人間業じゃないですよ。都市計画を1ミリの狂いもなく、数千億人分同時に進めるようなものですから」

部長「1,000億個のスイッチが、爪の先に乗っているのか……。田中くんの脳みその中よりもはるかに整理されていそうだな」

田中「部長、それは失礼ですよ!  僕の脳内も、プライベートの予定だけは1ナノメートルの精度で管理されてますから!」

【解説:3次元化する超精密設計】 
半導体の設計は、かつての「平面的」なものから、現在は「立体的」な構造(FinFETやGAA構造)へと進化しています。限られた面積にどれだけ多くのスイッチ(トランジスタ)を詰め込むかの戦いであり、現在の設計データは、1チップ分だけで数テラバイトという膨大な容量に達することもあります。
近年では、この複雑すぎる設計を従来の手法で行うのは限界に来ており、AIを活用して最適な配置を導き出す手法も取り入れられています。「AIを動かすための半導体を、AIが設計する」という、SFのような循環が現実のビジネスシーンで起きているんですね。

超大変な製造工程を、超正確に!最大1,000を超える製造工程からなる半導体製造

田中「さてさて、その狂気じみた設計図をどうやって形にするか。これがまた超大変なんですよ部長!!」

部長(まだ続くのかよ、昼メシくらいゆっくり食わせてくれよ……)

田中「その工程数は、なんと数百〜数千工程にも及びます。もしラーメンを作るのに1,000回工程があったら、お客さんは餓死しちゃいますよね!?」

部長「確かに気が遠くなるな。それで、製造期間はどれくらいかかるんだ?」

田中「通常、ウエハー投入から完成までは数か月。プロセスによっては半年近くかかることもあるんだとか!」

部長「ウエハーって、ICチップの基板となる薄い円盤状の板のことだろ?ピザみたいに、シリコンでできたウエハー生地を作って、それでトッピングを追加していく作業に、そんなに時間がかかるのか?」

田中「例えが微妙ですが、大体そんな感じです。主な作業は、『成膜(薄い膜を張る)』『露光(回路を焼き付ける)』『エッチング(不要な部分を削る)』『洗浄(目に見えないレベルの不純物などを落とす)』。このような工程を、何十回、何百回と繰り返すんです」

部長「例えるなら、数千層のミルフィーユを、ナノ単位の精度で一枚一枚デコレーションしながら積み上げるようなものか」

田中「いいですね、そういうことにしておきましょう! それでいて一度でもミスをしたら、そのウエハー(板)は検査でアウトになります。1,000工程の最後、999工程目でホコリがついたらアウトです。このプレッシャー、部長には耐えられますか!?

部長「……。まあ、田中が言っている半導体のヤバさが、ようやく分かってきたよ。もはや修行の域だな」

【解説:執念の1,000工程】 
半導体製造において、各工程の成功率を「歩留まり(イールド)」と呼びます。仮に1工程の成功率が99.9%だったとしても、1,000工程繰り返すと、最終的な成功率は 0.9991000≈0.367 ……つまり、約37%まで落ち込んでしまいます。そのため、各工程には「99.999%以上」という、文字通り完璧な精度が求められます。
特に「露光」工程で使われるEUV(極端紫外線)露光装置は、1台数百億円以上とも言われる超高額マシンです。この装置の中で行われるミラーの制御精度は、「東京からレーザーを放って、富士山の山頂にある1円玉に当てる」ような、高レベルの精密さで制御されています。

半導体製造には、超清潔な空間が不可欠!宇宙空間よりも清潔なクリーンルーム

田中「そして最後にして最大の“超”が、その現場の清潔さ! 部長、病院の手術室ってきれいですよね?」

部長「(結局、移動中もずっとしゃべってるな……)そりゃあ衛生面は最重要だしな。映画やドラマで見る限りピカピカだな」

田中「そうですよね。でも半導体工場のクリーンルームは、手術室の100倍、いや1,000倍清潔。もはや『宇宙空間よりもきれい』と言っても過言じゃないんです!!」

部長「…そ…もそも宇宙空間がきれいって認識が俺にはないんだけど、 とにかく無菌状態なんだろうな」

田中「 例えばISO規格の『クラス1』という基準の工場。ここでは、1立方メートルの空気中に、0.1マイクロメートル以上のゴミが10個以下しかない状態にしなければいけません。一般的なオフィスビルだと1立法メートルに数百万個のゴミが舞っています。つまり私たちのこのオフィスは、半導体から見ればゴミだらけの世界なんです!」

部長「(いや、ゴミだらけなのはキミのデスクだろう……)。しかし、改めてそう言われると、ちょっと呼吸するのもためらうな」

田中「なぜそこまでするのか。それはナノの世界では、たったひとつの目に見えないホコリが、“巨大な隕石”になり得るからです。回路の上にホコリが落ちたら、一瞬でショートしてパー。だから人間は、全身を覆う白いクリーンウェアを着て、エアシャワーを浴びて、眉毛一本、フケ一つ落とさないようにして入るんですよ。いちばんの元凶は、実は人間ですからねっ!」

【解説:人類最大の敵は人類?】 
クリーンルームにおいて、最もゴミを出すのは装置ではなく「人間」。人間が動くだけで、皮膚の破片や衣類の繊維が数万個単位で放出されてしまうのです。そのため、最新の工場では可能な限り無人化が進められ、ウエハーは「FOUP」と呼ばれる完全に密閉された容器に入れられ、天井を走る自動搬送レールで移動します。 ちなみに、クリーンルーム内では化粧は厳禁、喫煙後数時間は入室禁止といった、厳しいルールが課されることも珍しくありません。ここでは微細な粉末や呼気の中の粒子すら、半導体にとっては致命的な欠陥を招く「凶器」になりえるのです。

クリーンルーム

クリーンルーム

半導体回路を“現実世界”につなぐ最終仕上げ。性能を決める「後工程」と「素材」

田中「……で、部長。ここまででようやく“頭脳”が完成なんですけど、正直な話、ここからも超ヤバいんですよ。半導体って、性能が高いだけじゃ現実では使えないんです」

部長「(話長かったけど、ようやくクライマックスか?)なるほど。回路を作ったらもう完成だと思っていたが、そんなに簡単な話ではないか……」

田中「そこがよくある誤解です!今まで話したのは前工程と呼ばれる、製造の前半部分。  一方で、熱や衝撃、電圧変動などが当たり前の現実世界でちゃんと働けるかどうか? は後工程次第なんです」

部長「その後工程っていうのは、具体的にどういうものがあるんだ?」

田中「お、気になっちゃいますか? 例えば、今のCPUやAI向けGPU(データ処理やAIの計算を担う半導体)では、チップを“表向き”ではなく“裏返し”にして、基板にできるだけ近い形でつなぎます。これが『フリップチップ実装』です。遠回りせずにつなげるので、電気信号が伝わりやすくなり、熱も逃がしやすくなる。つまり、性能を出しやすいんです。ただし、そのぶん取り付けの精度は超シビアです。ほんのわずかにズレたり、熱でゆがんだりするだけでも、うまく動かなくなる。ものすごく小さい回路と、それを支える部品を、無理なくピタッとつなぐ必要があるんですよ!」

部長「おお、ただ作るだけじゃなくて、つなぎ方そのものが性能に関わるんだな」

田中「しかも最近の半導体って、1枚のチップだけで終わらないんですよ。複数のチップを横に並べたり、上下に重ねたりして、ひとつの大きな機能として動かしています。これが『2.5D・3Dパッケージ』です。イメージとしては、部品をマンションみたいに立体的に配置する感じですね。そうすると高性能にはしやすいんですが、一気に難しくなるのが熱とゆがみです。温度が上がると素材はふくらみますし、違う素材を組み合わせると、ふくらみ方の差で少しずつ負担がたまる。最初は小さなズレでも、それが長い目で見ると故障の原因になるんです」

部長「性能を追い求めるほど、条件が厳しくなるわけだな」

田中「その通りです、部長! 乗ってきましたね!」

性能を成立させる“見えない素材”の力。封止材・基板材料が担う本当の役割

部長「(よし。ここまで来たら、気が済むまで話してもらおう……)。それでそれで? もっと詳しく聞かせてくれないか」

田中「任せてください! 高性能化と信頼性は、素材の力によってギリギリで支えられているわけですが、そこで効いてくるのが、封止材や基板材料、接着材、絶縁材といった “守りの素材” です。一見、脇役に見えるかもしれませんが、実際は半導体がその性能を維持できるかどうかを決める主役なんです! 高温でも歪まない、急激な温度変化に耐える、長期間使っても劣化しにくい——こういった特性は回路設計ではなく、完全に素材の仕事と言っていいでしょう」

部長「つまり、素材が追いつかなければ性能も成立しない、と」

田中「イエス、ボス! いまの半導体では、『どこまで性能を上げられるか』と同時に『その性能をどれだけ長く、安定して維持できるか』が、これまで以上に問われる段階に入っているんです。つい半導体進化って、CPUやGPUが主役に見えますけど、実はその裏で、材料技術が限界を押し上げ続けているんです」

部長「見えないところほど重要、というわけか……確かにそれは会社でも同じだな」

田中「分かってくれますか! 人類の限界に挑む精密な半導体を、ちゃんと現実世界で使える形にしている後工程と材料の技術も超ヤバいんで、しっかり注目してくださいね! では定時になったので上がります!」

部長「お、おお。お疲れさま。(田中くんも十分ヤバいけどなぁ……)」
 


 

【解説:なぜ最近は「後工程」が注目されているのか】 
かつて半導体の進化は、「トランジスタをどれだけ小さくできるか」が主戦場でした。しかし微細化が限界域に近づいた現在、性能向上のカギは実装・パッケージ技術へと大きくシフトしています。 複数のチップを組み合わせるチップレット構成や、2.5D・3Dパッケージでは、電気信号の速度、発熱、機械的な歪みなど、半導体回路以外の要因も性能と信頼性を左右します。その結果、設計された性能を「一瞬だけ出せる」かではなく、「長期間、安定して発揮し続けられるか」を決める後工程も製品価値を決める重要な指標になっています。

先端半導体パッケージ外観

パッケージ断面イメージ

 

今、あなたがスマホの画面をスクロールしているこの瞬間も、周りではたくさんの “超” 優秀な半導体が働いています。もちろん、その指のすぐ下にも、一千億個の精密な世界が広がっているのです。

半導体には、文字通り「人類の限界」に挑む、“ヤバい” ほどのこだわりがたくさん詰まっています。

目に見えない小さな世界で、世界中のエンジニアたちが数ヶ月〜数年、数千工程の時間をかけて作り上げるひとつのチップ。その背景を知ると、デスクの上のデバイスが、少しだけ誇らしく見えてくるかもしれません。
 

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