レゾナックナウ

甘〜い焼き芋をプログラミングで作る?身近なテーマで化学の魅力を発信

2026年05月12日

 

生活の何気ない場面にも、化学の面白さが詰まっている。その魅力が誰かに届いたとき、「もっと知りたい」という気持ちが芽生え、やがて新たな学びへと育っていく──。 

連載「未来を創るラボ」では、そんな模索の途中にある前向きな一歩に光を当てます。今回話を聞いたのは、焼き芋という身近なテーマに化学とプログラミングを掛け合わせ、化学の魅力を発信する、粕谷(かすや)さんです。

粕谷さんのキャリアはとってもユニーク!

ビジネスシステム部 粕谷さん(趣味:電子工作、料理、ピアノ)

大学で生化学を専攻した後、産業機器メーカーやSIer、音声AIベンチャーなどを経てレゾナックに入社。他にも、とんかつチェーン店の創業者の自宅に住み込んでとんかつ修行をする期間があったり、起業の経験もあったりと異色の経歴の持ち主。 

「さまざまな業界で働いてきましたが、振り返ってみると『日本に貢献したい』『創業者の想いを伝えるお手伝いをしたい』という気持ちは常にありました」(粕谷さん) 

現在、レゾナックのビジネスシステム部に所属しており、事業に深く入り込み生産性を改善する業務に携わっています。ITやAIの活用、業務プロセス改革など、これまでの多様な経験を活かして活躍しています。

化学×プログラミング料理実験教室とは

電熱調理器やオーブンがPCと接続

「化学×プログラミング料理実験教室」は、料理を題材に化学の仕組みを体験的に学ぶ取り組みです。化学の知識をもとに調理工程をプログラムで制御し、料理を“実験”のように捉えながら理解を深めていきます。 

「化学だけでは難しい印象を持たれがちなため、キャッチーな切り口としてプログラミングの要素も取り入れました。料理という身近な題材を通して、化学やプログラミングが私たちの生活に関わる身近なものだと、学生を中心とした若い世代に伝えていきたいと考えています」(粕谷さん) 

テーマは「焼き芋」。最適な温度管理をプログラムで行い、蜜たっぷりの焼き芋を作りながら、温度と反応の関係など化学とプログラミングの基礎を学んでいきます。

焼き上がりは蜜たっぷりで、ねっとりとろける甘さ。

「焼き芋が甘いのは、熱によってアミラーゼという酵素が活発に働くようになり、でんぷんを麦芽糖に変化させるためです。しかし実は、アミラーゼが活性化する温度は60℃から80℃。蜜たっぷりの焼き芋を作るためには、この温度を維持しなければなりません。いきなり焼き始めると、すぐに80℃を超えてしまい、アミラーゼが十分に働かないのです。そこで、温度を管理しやすい湯煎工程で十分に糖化を促し、その上でオーブンで焼くことで密たっぷの焼き芋として仕上げます」(粕谷さん)

 

幼い頃から化学が大好きだった

料理実験教室を始めた背景には、幼い頃からの化学への強い関心がありました。原体験の1つは、小学生の頃、針金に電池のプラスとマイナスをつないで塩水に浸すと、針金が少しずつ溶けていく様子を見たこと。驚きとともに「なぜこうなるのだろう?」という強い疑問が湧き上がったといいます。 

中学生になる頃には、すっかり実験好きの少年になっていました。実験機器の問屋まで足を運び、自宅用にビーカーやフラスコを買いそろえるほどの熱の入れようだったといいます。 

大学では生化学を専攻。そうした興味の延長線上で、後に化学メーカーのレゾナックにも入社しました。 

一方で、化学の面白さや魅力が若い世代に十分に伝わっていないと感じる機会も多かったといいます。

 そこで思いついたのが、料理を入り口に化学の面白さを伝えるという方法でした。料理では、実はさまざまな化学変化が起こっています。題材にすれば、身近な体験を通して化学をぐっと近くに感じながら、その面白さを理解してもらえるはずだと考えたのです。

「やってみたい」が集まって教室が動き出した

実験に使うプログラムも自作

教室を開催するにあたり、粕谷さんは、「REBLUC(レブルック)(※1)」で、アイデアを発表しました。すると、「一緒にやってみたい」という人がすぐに現れたといいます。 

共感を集めた理由の1つは、焼き芋という身近な料理の中に化学反応が隠れているという面白さでした。もう1つは、子どもたちが化学の面白さに触れられる機会をつくるという取り組みの意義です。料理を通して化学の魅力を体験できる場を提供するこの取り組みに仲間が集まりました。 

教室をつくりあげていく工程に話を向けると、粕谷さんは表情をほころばせます。 「たしかに大変な部分もありましたが、楽しい時間でした。

私の自宅に仲間が集まって予備実験をしたときは楽しかったですね。『もっとこうした方が良いのではないか』などと盛り上がり、美味しい焼き芋ができたときは全員で喜びました」(粕谷さん)

予備実験の様子

その後、実験の安全性検証を含め社内で試験開催し、実績をつくりました。そして、そこで得たフィードバックをもとに、講座の組み立てをブラッシュアップ。合間にクイズを織り交ぜるなどして、最後まで興味を持って聞いてもらえる工夫を施しました。これらの取り組みを経て、ついに社外で開催できるはこびとなりました。

※1 レゾナックの社内コミュニティ。パーパスを起点に未来像を描き、その実現に向けたプロジェクトを自ら動かす。有志の従業員が参加し、部署を越えた対話から生まれたアイデアを仲間と形にしていく場。

 

講義資料からの抜粋

調理温度と糖化の関係性をレクチャーした後、実験をより自分ゴト化してもらうため、参加者自身に湯煎温度を決めてもらうそうです。そのときに1つ目の盛り上がりがあるのです。参加者が多いときは、複数のチームに分かれて温度を決めて、どっちが美味しく作れるか競うことも。

湯煎をしている間、さつまいもが甘くなる化学的メカニズムを講義する

そして、2つ目の盛り上がりはやはり実食のときです。湯煎せずに作った焼き芋と食べ比べたり、別チームの焼き芋と食べ比べたりして、どんな温度が最適だったかを参加者が自分の味覚で確認します。 

実際、適切な温度で湯煎をした焼き芋を食べた参加者からは「普通の焼き芋と全然違う」「こんなに美味しくなるなんてびっくり」という声があがるといいます。 

「参加者に喜んでもらえると、この企画をかたちにできて本当によかったと思いますね。1つのアイデアを実現しようとすると、色々なハードルがあり頓挫してしまうケースもありますが、私は絶対に1回は試そうと決めていました。メンバーと成功体験を共有できれば、次のチャレンジにつながりますから」(粕谷さん) 

料理実験教室は今後も開催していく予定。また、この実験パッケージは温泉卵やピザなど他の料理にも使えるとのことで、今後の広がりが楽しみです。

自分のアイデアを周囲に発信してほしい!

 

最後に、これからキャリアを作っていく学生や社会人の方に対するメッセージを語ってもらいました。

 「まずは、自分が本当にやりたいことを見つけてほしいと思います。子どもの頃に興味を持っていたことを紙に書き出してみると、思いがけないヒントが見つかるはずです。そうして見えてきたアイデアを、仕事や日々の活動の中で少しずつ形にし、アウトプットしていくことが大切だと思います」(粕谷さん)

 連載「未来を創るラボ」では、今後も勇気を持って未来に踏み出す一歩に光を当てていきます。

 

※本記事は、当社公式note(RESONAC(レゾナック)|note)に掲載した内容を再編集したものです。記載内容には公開当時の情報が含まれるため、現状と異なる可能性がある点をご承知おきください。

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