遊びが学びに変わる瞬間—化学メーカー発の"半導体ボードゲーム"とは
2026年03月23日

自分にしかできない何かを見つけたい。誰かの力になりたい。
そんな思いを胸に、迷いながらも一歩ずつ前進する人がいる。大きな転機ではなく、日々の小さな気づきや、ふとした体験が自分なりの答えへとつながっていく——。
連載「未来を創るラボ」では、そんな模索の最中にある前向きな歩みに光を当てていきます。
今回話を聞いたのは、半導体ボードゲームを制作し、理系の世界の魅力発信に取り組む甲田直也さんです。
甲田さんのキャリアを教えてください!

カルチャー人事政策企画部 甲田 直也さん(趣味:ボードゲーム、リアル脱出ゲーム)
甲田さんは2019年、昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に研究開発職として入社。リチウムイオン電池の外装材に関連する開発に携わり、研究に向き合う日々を過ごしてきました。
研究の分野でキャリアを形成してきた甲田さんですが、昭和電工と旧日立化成の統合によりレゾナックが誕生するという節目に、人事部カルチャーコミュニケーショングループ(当時)への異動に挑戦しました。
大きなキャリアチェンジでしたが、「大企業同士が統合するタイミングで、企業文化の醸成に関われる機会は今しかない」という思いが、一歩を踏み出す後押しになったそうです。
現在は、パーパスやバリューの浸透および従業員エンゲージメントの向上をミッションとして、研究で培った統計やデータ分析、シミュレーションのスキルを活かして業務に携わっています。
このように研究開発職での経験を活かして人事組織で活躍している甲田さんですが、「理系の世界の魅力を多くの人に伝えたい」という思いを以前から持っていたといいます。
ボードゲーム制作の経緯
いったいどういうきっかけからスタートしたのでしょうか。
「『REBLUC(レブルック)(※)』に参加し、自分のパーパスについて改めて考えたことがきっかけでした」(甲田さん)
思索を重ねる中で、自らの思いを「理系の仕事を目指す人が増えてほしい」「化学の面白さ、社会へどのように貢献しているかを広く知ってもらいたい」という形に具体化させていったのです。実は、甲田さん自身も進路選択の際、研究開発職がどのような仕事をしているのかを具体的にイメージできていなかったといいます。
REBLUCで出会った同じ志を持つメンバーと、「難しい分野の話をわかりやすく伝えるためにゲームを使う」というアイデアを出発点として、それぞれの知見を持ち寄って制作に取り組むことになりました。
※ レゾナックの社内コミュニティ。パーパスを起点に未来像を描き、その実現に向けたプロジェクトを自ら動かす。有志の従業員が参加し、部署を越えた対話から生まれたアイデアを仲間と形にしていく場。
半導体ボードゲームとは

小学生でもプレイできる「デバイス-半導体ボードゲーム」
メンバーの理解度や体験の目的に合わせて難易度調整ができるよう、3種類のボードゲームを制作しました。
●初級(小学生向け):特定のデバイスを構成する部品を集めて完成を目指すゲーム
●中級(中学~高校生、新入社員向け):チップメーカーの工場長として、半導体製造の工程に則り、必要な部品を順番通りに集めるゲーム
●上級(就活生、新任開発部員向け):新製品の開発担当者としてアクシデントに対して適切なアクションを選択しながら、製品の完成を目指すゲーム
これらのボードゲームをプレイすることで、半導体や研究開発職の仕事について自然と学べるよう工夫がなされています。例えば、初級編は「お題」となるデバイス(ゲーミングスマホやIoTデバイスなど)を構成する部品を集めて、参加者全員で協力しながら役を完成させるタイプの協力ゲームです。ポーカーや花札に近い仕組みを取り入れたものとなっています。

「ボードゲーム=楽しむだけのもの」というイメージを覆す

制作を進める中で、周囲との認識のズレをすり合わせる場面が何度もあったといいます。 一般にボードゲームと聞くと、「楽しく遊ぶだけのもの」という先入観が強く、それを通して半導体製造や研究開発について学べるという意義について理解を得るのが難しかったようです。
こうした状況を乗り越えるため、甲田さんは「とっつきやすく短時間でプレイできる」「ボードゲームそのものが学びやコミュニケーションのきっかけになる」という点を丁寧に説明してきました。

甲田さんが最もこだわったのは、「プレイ後に何を持ち帰ってもらうか」です。試行錯誤をしながら、初級から上級それぞれのコンセプトを練り、各ゲームのルールを詰めていきました。
「例えば、トランプの神経衰弱のようなゲームは、絵柄を揃えるだけで遊べるので、絵柄の意味を知らなくても楽しめますよね。 でも、絵柄だけでなく“内容”までセットで理解できると、遊びながら自然と知識が定着していくように、楽しさの中に学びが生まれます。」(甲田さん)
本業と両立しながらの制作は決して容易ではありませんでしたが、メンバーそれぞれが自分の役割を果たし、互いに支え合いながら取り組んでくれたといいます。
ビジョンに共感した仲間が集まり、共創へ

改めて、ボードゲームをゼロから制作した感想を聞きました。
「コンセプトに沿ってルールを決めて、調整を繰り返す工程全般を楽しめました。ただ、それ以上にボードゲーム制作に賛同してくれて、アイデアを出してくれたりデザインをブラッシュアップしてくれたりする仲間がどんどん増えていったところが印象に残っています」(甲田さん)

デザインを改善し、より遊びやすくなった!
ビジョンに共感した仲間が集まり、それぞれの得意分野を活かしてより良いものにしていく共創の過程は想像するだけでワクワクします。 仲間とともに完成させたボードゲームは、社外イベントや出張授業の場で、小学生から高校生まで多くの子どもたちに体験してもらっているとのこと。また、レゾナックの新入社員向け導入教育などでも活用の場が広がっています。 新聞にも取り上げられたことで、社内外からの問い合わせも入るように。当時を振り返り、「予想以上の反響に驚きましたが、素直に嬉しかったです」と笑顔を見せてくれました。
「社内外のさまざまな人に体験してもらい、良いフィードバックを得られて手応えを感じています。今後は半導体以外の分野をテーマにしたゲームの制作も視野に入れています」(甲田さん)
ボードゲーム制作を通じて、「理系の世界の面白さを多くの人に伝えたい」という思いの一端を叶えた甲田さん。今後もこの取り組みに携わっていきたいとのことです。
なぜ学ぶのか。志を大切にキャリアを築いてほしい!

最後に、これからキャリアを作っていく学生や社会人の方に対するメッセージを語ってもらいました。
「まずは自分の志を大切にしてほしいと思います。特定の分野について、何のために学び、何のために知識を活用するのかを常に考えた先に、あなただけのキャリアが開けるはずです」(甲田さん)
連載「未来を創るラボ」では、今後も勇気を持って未来に踏み出す一歩に光を当てていきます。
※本記事は、当社公式note(RESONAC(レゾナック)|note)に掲載した内容を再編集したものです。記載内容には公開当時の情報が含まれるため、現状と異なる可能性がある点をご承知おきください。
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