レゾナックナウ

レゾナックが再び勝負に出た。日本は半導体の技術革新を牽引できるか

2025年09月16日

日本の製造業は、潮流をつくれない──。優れた技術を磨くことには長けているものの、ものづくりのプロセスを根本から変えるような技術革新では後れを取りがち。それが日本の製造業について、長く語られてきた定説だ。 だが、世界中が注目する半導体分野で、日本企業が新たな技術革新に向けて動き出している事例がある。それが、半導体後工程材料に強みをもつ機能性化学メーカーのレゾナックが主導する新たなコンソーシアム「JOINT3」だ。

JOINT3から、どのような新潮流をつくることができるのか。日本企業が牽引する意義とは。製造業に精通するYouTuberものづくり太郎氏と、JOINT3を主導するレゾナック・ホールディングス 執行役員 半導体材料研究開発統括の阿部秀則氏が語り合った。

いま巻き返さないと後がない

──ものづくり太郎さんは製造業系YouTuberとして、多くのメーカーの動向を見ていますね。日本の製造業について、どのような課題があると考えていますか。

ものづくり太郎僕が最も危機感を覚えていることの一つは、日本の製造業の多くが「先頭を切って挑戦できていない」ことです。
最近は海外企業を視察する機会も多いのですが、スピード感が桁違いなんですよ。わかりやすいところで言えば、ロボット産業は、日本が世界をリードしていると思っている人もいるでしょう。
ですが正直に言って、先を行っているのは欧米・中国企業です。

欧米の製造現場では、複雑な作業や汎用的なタスクをこなせる高度な人型ロボット(ヒューマノイド)や4足歩行ロボットの投入や実証実験が、すでに始まっています。
さらにそうしたロボットを教育するためのシミュレーション技術やティーチング技術等でも、差をつけられていると言わざるを得ません。
これは欧米・中国企業が「次に来る市場はここだ」と旗を立てて、リスクを取って投資した成果。ですが、いまの日本の製造業はそれができていない。
特に今回のトピックである半導体産業は、1980年代のピークを最後に日本勢の勢いが失われてしまったトラウマもあり、挑戦するマインドが弱まっているのかもしれません。
優れた技術はあるのに勝負に出られていない状況に、もどかしさを感じています。

阿部:私も日本の半導体産業は、かなり重要な局面を迎えていると思います。いま行動に移さなければ、永遠に巻き返しを図れない状況に陥ってしまうのでは、と。

日本の半導体産業は勢いが落ちたと言われて久しいですが、それでも半導体材料や装置などでは高いシェアを維持しており、明確な強みとなっている。
実際にレゾナックも、5つの半導体材料で世界シェア1位を維持しています(注)。
ですが現場にいると、海外勢の着実な追い上げを感じます。レゾナックを含む日本企業のプレゼンスが、5年後、10年後も盤石とは限らない。
日本企業に競争優位性が残っているうちに手を打たないと、取り返しがつかなくなりかねないのです。

ものづくり太郎: 本当に同感です。半導体材料や装置領域なら日本企業は安泰だと思っている人がいたら、大きな間違いです。
実際に海外の製造現場を見てみると、これまでは日本製がシェアを占めていた装置や機械が、中国製に切り替わっているのを多く目にします。

阿部:そうですよね。そうした背景で数年前から、レゾナックは国内外の半導体関連企業を巻き込んだ共創型コンソーシアムを複数結成しています。
これは、新しい技術革新を日本から起こす、私たちなりの「勝負」です。

 

ものづくり太郎:いやあ、こうした動きができる日本企業は、本当に貴重ですよ。ですがコンソーシアム運営って、ものすごい労力がかかりますよね。なぜそこまでしてやるのでしょう。

阿部:まず、コンソーシアムには情報が集まるという利点があります。
「最先端の半導体は、どの方向に進化しようとしているのか」といった鮮度の高い情報は、市場で求められる素材や製品をいち早くつくるために欠かせません。
半導体業界は緻密なすり合わせが求められるため、一度量産向けに材料や装置が採用されると長く使われ続けます。
つまり、いくら良い製品をつくれたとしても、タイミングが遅ければ負けてしまう。情報取得のスピードは死活問題です。
ではその情報を一社で独占して一人勝ちすればいいじゃないか、と思われるかもしれません。
ですが最先端の半導体では、パッケージ全体でパフォーマンスを出すのが重要となっているため、各関連メーカー単独での技術進化には限界があります。
だからこそ、各社が共同で研究・試作・評価に取り組めるコンソーシアムが必要なのです。

数百万円のAI半導体、大型化への対応が課題

──レゾナックは今年9月、新しいコンソーシアム「JOINT3」を発表しました。何を目指すのでしょうか。
阿部:端的に言えば、半導体の先端パッケージ領域において、技術革新を起こしたいと考えています。
その背景を少し説明させてください。昨今のAI需要に伴い、半導体には非常に高い計算処理能力が求められるようになりました。
その処理能力を少しでも高めるべく、半導体関連企業は各領域で試行錯誤している状態です。
そうした潮流のなか、先端パッケージ領域で最近注目されているのが、インターポーザーという中間基板。
異なるチップを一つのパッケージ内でつなぎ、電気信号を高速に伝達するのに必要な役割を果たします。

ものづくり太郎:インターポーザーを入れる利点は、複数の半導体チップを近くに並べられることですよね。
チップ同士の物理的な距離が縮まれば、電気信号が行き来する効率が上がる。結果、いまのAI時代に欠かせない高速計算を支える力になるんです。

阿部:ええ。そのインターポーザーが搭載されたAI向け半導体は、価格が数百万円レベルに高騰し、需要の急増により供給能力も足りていない状況です。
ですが現状の製造工程では、大型への対応が課題となっています。
というのも半導体をパッケージする際、現在はウェハーと呼ばれる円形の材料から、四角いインターポーザーを切り出していて、四角が切り出せない円周付近の余白部分は使えず無駄になります。
その無駄をなくすべく、現状でよく使われている300mmの円形ウェハーを角パネルに置き換えつつ、510×515mmの大判化を目指したい。
そうすればインターポーザーの形とパネルの形が一致します。たとえば最新の90mm角ほどにもなる大きなインターポーザーは、300mm円形ウェハーからは4枚しか切り出せませんが、510×515mm角パネルでは24枚へと劇的に増えます。
この技術革新こそが、このコンソーシアムで目指すものです。

ものづくり太郎:このインパクトにピンとこない人もいるかもしれないけれど、これ、半導体製造を丸ごと再構築するくらい、大きなチャレンジですよ。
だって材料領域だけでは全く完結しないし、装置の仕様や制御方法にも大いに関わってきますよね。
さらに半導体製造の上流の設計領域や、下流の量産工程をも巻き込み得る一大プロジェクトです。

阿部:ええ。「丸を四角にして大きくするだけじゃないのか」と思うかもしれませんが、円形ウェハーを角パネルに置き換えるには、高いハードルがいくつも存在します。
たとえば、インターポーザーの表面に材料を均一に塗布する装置があるのですが、基板の形が丸から四角になり大きさも変われば、当然うまくいきません。
またどのような材料も、温度の変化で膨張、収縮し、反りが発生しますが、大型になるほど反りが大きくなり、次の工程に進めなくなる。
こうした課題を一つずつ潰して全体最適を図るには、高いレベルの技術と企業同士の密な連携とすり合わせが不可欠なのです。

ものづくり太郎:半導体基板の仕様変更というこの領域、考えてみれば半導体業界に残された、数少ないブルーオーシャンと言えるかもしれませんね。

実現できたら大きなリターンがあることはわかっているけれど、実現ハードルが高くて誰も開拓できていなかった。
そこでレゾナックが先頭に立って主導しているのは興味深い。半導体製造の全体を俯瞰して調整し、変革する覚悟がないと、手を出せない取り組みですからね。

準備は整った。あとは成果を出すのみ

ものづくり太郎:そうはいっても、JOINT3始動に向けていろんな企業を口説いてまわるのは、かなり大変な道のりだったんじゃないですか。

阿部:正直、この1年はほぼJOINT3参画の呼びかけに費やしたと言っても過言ではないですね(笑)。

ものづくり太郎:やはりそうでしたか(笑)。

阿部:振り返れば、100社以上に声をかけました。
JOINT3は民間企業がビジネスを獲得していくためのプロジェクトであり、補助金に頼らない運営にしたため、260億円という投資を参画企業全体で負担する建付けになっています。
参画企業にも一定の投資が求められるため、意思決定のハードルは高い。WEB会議では、なかなか思いが伝わらないこともありました。
時には一企業につき、5回、6回と対面での面談を重ね、丁寧に信頼関係を築いてきました。
そうした対話の末、27社の参画が決定(2025年9月時点)。
後工程の材料、装置はもちろん、設計ツールや計測装置関連など、これまでのJOINTよりさらに多様な企業が揃っています。
新規拠点のスペースの制約はありますが、これから新たに参画いただく企業も大歓迎です。
新たな拠点としては茨城県結城市に建屋を構え、510×515mmの有機インターポーザー用パネルの試作ラインを用意します。この大きさかつ角パネルで高機能有機インターポーザー用のラインは、世界初。
来年にも共同開発をスタートできる環境が整います。

ものづくり太郎:僕としては、参画企業や検討中の企業に対して「頑張れ」と最大限のエールを送りたいですね。
やっぱり、多くの企業が自社だけの技術進化に限界を感じていると思うんです。その状況で、JOINT3がここまで共創環境を整えているんだから、出資した以上の成果を共に生み出し、持ち帰っていただきたい。
そして僕の期待は、レゾナックがこのコンソーシアムを通して将来的にちゃんと「儲ける」こと。
これは全く卑しい話ではなくて、リスクを取って投資したんだから、その利益を最大化しようとするのは当たり前ですよね。
僕から見ると日本の製造業企業は、とにかく失敗しないように経営する癖がついていると感じます。コストカットばかりを重視して、少しでも不確実な要素があれば手を出さない。
でもそれでは、未来をつくる側には絶対にまわれないと思うんですよ。
将来を見据えて投資して、新しい利益をつくる。レゾナックがコンソーシアム運営を経て、実際に数字で成果を示して、日本の製造業の空気を変えていってほしいと思います。

阿部:激励の言葉をありがとうございます。レゾナックにもコンソーシアム運営の知見がしっかり蓄積されてきたので、有効活用して社会に還元していきたい。
お金さえあれば他の企業も装置や施設は揃えられるかもしれませんが、共創におけるプロジェクトの推進の仕方といった知見や、後工程における技術やノウハウは、一朝一夕に身につけられるものではありませんから。
JOINT3としては、まずはここから生まれたプロセスが2030年ごろのスタンダードになることを目指しますが、それで終わりではありません。
半導体の前工程で微細化が極限まで進んでいるように、これからは後工程での進化も求められ続けるでしょう。
社会が求める技術革新を、日本企業がリードして起こしていけるよう、これからも万策を尽くしていきます。

注:※富士キメラ総研 「2024 エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧(調査時期 2024年8~10月)」にて、銅張積層板(ガラス基材銅張積層板(パッケージ向け)項目)グローバルでの出荷金額1位 2023年実績、感光性絶縁材料(バッファコート材料/再配線材料項目)グローバルでの出荷数量1位 2023年実績(この製品は株式会社レゾナックの関連会社HDマイクロシステムズ社が製造販売しています)、ドライフィルム(ドライフィルムレジスト項目)グローバルでの出荷金額1位 2023年実績
 ※富士経済 「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望(調査時期2024年5~8月)」にて、ダイボンディングフィルム(ダイアタッチフィルム項目)グローバルでの販売数量1位 2023年実績、CMPスラリー(STI用項目)グローバルでの販売金額1位 2023年実績

※このコンテンツは、レゾナックのスポンサー ドによってNewsPicks Brand Designが制作し、NewsPicks上で2025年9月4日に公開した記事を転載しています。本コンテンツの無断転載を禁じます。
執筆:森田悦子
撮影:小池大介
デザイン:本多ことこ
編集:金井明日香

関連記事